働き方が多様化し、リモートワークやフレキシブルな勤務形態が当たり前になった現代では、オフィスの存在意義を改めて見直す企業が増えてきました。多くの組織において、物理的な空間で行われる情報交換やチームビルディングは、オンラインコミュニケーションだけでは完全に補いきれないと感じられているためです。こうした背景から、組織の活力を保つうえでオフィスが果たす役割に注目が集まっています。
本記事では、オフィスコミュニケーションを改善するための具体的なレイアウト施策や導入事例を紹介しながら、自社でどのように応用できるかをイメージしやすい形で解説します。
オフィスコミュニケーションが見直される背景には、大きく分けて以下の2点が挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
現代のビジネス環境は、テレワークやハイブリッドワーク(オフィスと在宅勤務を併用する働き方)の普及によって大きく変化してきたと考えられます。かつては、日常的に顔を合わせることで自然に生まれていた会話や情報交換が、一部の企業ではオンライン化の進行に伴って減少し、従業員同士の連携が希薄になったとの事例も報告されています。特に総務や人事などの部門では、コミュニケーション不足が原因で生産性が下がったり、社内の雰囲気がぎこちなくなったりする状況が課題として浮上しているようです。
内田洋行が実施したアンケートでも、社内のコミュニケーションに課題を感じていらっしゃる方が多数いらっしゃいました。

こうした状況を受け、改めて注目されているのが、オフィスという「場所」が生み出す価値です。物理的な空間を介した対面コミュニケーションは、オンライン環境では得られにくい信頼関係の構築やアイデアの創発を促進する場合があります。そのため、多くの企業が社員同士の自然な交流を実現するレイアウトや仕組みづくりに力を入れ始めているのです。なお、オンライン会議やチャットツールを活用して効率的に情報交換を進めている企業もあるため、テレワークと出社のバランスをどのように設計するかが重要なポイントになるでしょう。
社内コミュニケーションが不足すると、必要な情報が部署間で分断され、意図しないミスコミュニケーションや手戻りが発生しやすくなると考えられます。これはプロジェクトの遅延やコスト増を招くだけでなく、社員同士の信頼関係を損なう原因にもなりかねません。また、コミュニケーション不足に起因するトラブルは必ずしも表面化しやすいとは限らず、経営層や管理部門が想定している以上に大きな影響を及ぼすケースもあると指摘されています。
このようなリスクを回避するためには、オフィス空間そのものを「人と人が自然につながるきっかけ」を生み出す場所として再定義し、コミュニケーションの質と量を意識的に高める取り組みが求められます。オンラインとオフィスの両方を適切に活用することで、組織全体の連携を強化できる可能性が高まるでしょう。
オフィスコミュニケーションを改善する主なメリットは、以下の2点に大別されます。
上記のメリットをそれぞれ解説します。
コミュニケーションを高める取り組みを行うと、情報交換が活発になり、新たなアイデアが生まれやすくなるだけでなく、部署間で助け合う風土が醸成されると期待できます。さらに、社員同士のモチベーションが向上することで、離職率の低下や優秀な人材の確保につながる可能性が高まると言われています。近年は働く環境を重視する従業員が増えており、風通しの良い職場や心理的安全性が確保されている職場を整備することが、企業競争力の重要な要素とみなされています。
オフィス環境が整備され、社員同士のコミュニケーションが活発に行われている企業は、採用活動においても有利になると考えられます。会社説明会やオフィス見学で活気ある職場の様子を見た就職活動中の学生や転職希望者は、「ここで働いてみたい」という前向きな印象を抱きやすいからです。こうした好印象は企業イメージの向上にもつながり、社員自身の帰属意識やモチベーションを高める効果も期待できるでしょう。
近年注目されている「フリーアドレス」や「アクティビティベースドワーキング(ABW)」は、新しい働き方として導入を検討する企業が増えています。ただし、すべての業種や職種に適した手法ではないため、製造業や一部の専門職などでは導入が難しい場合もある点に注意が必要です。運用目的が明確でないままレイアウトを変更すると逆効果になりかねないため、「どのようなコミュニケーションを促進したいか」「どのような業務効率を狙いたいか」を明確化したうえで空間設計を行うことが大切です。
社員が自然に立ち寄って雑談できるオープンスペースを設けることで、偶発的な情報共有やアイデア創発が促されやすいと考えられます。一方、常に人目がある環境では集中しづらいという課題もあるため、会議室や個室ブースなどクローズドスペースを適度に配置することがポイントです。目的に応じて使い分けできる空間を用意することで、コミュニケーション促進と生産性の確保をバランスよく実現する可能性が高まります。
フリーアドレス導入時の注意点
フリーアドレスは、座席を自由に選べる点が魅力ですが、「いつも好きな席が取れない」「荷物を置く場所が確保できない」といった不満が生じる場合もあります。対策として、個人用ロッカーの整備やオンラインで席を予約できるシステムの導入、運用ルールの明文化が欠かせません。また、フリーアドレスの目的を「組織内コミュニケーションの促進」と「社員の作業効率向上」の双方に設定すると、導入効果を一段と高められるでしょう。
関連記事:フリーアドレスで収納の課題を解決する方法とは?私物管理の対策と成功事例を解説
オフィス内にカフェのような休憩スペースやコミュニティエリアを設置すると、部署や役職を超えて気軽に対話が生まれやすくなると期待できます。例えば、ホワイトボードや書き込みができる壁を設ければ、その場で思いついたアイデアを即興的に整理できるため、新たなプロジェクトや商品企画につながる可能性も高まります。こうした空間を単なるリフレッシュコーナーではなく、組織の知的交流を促す場として位置づけることが、コミュニケーション活性化の鍵となるでしょう。

「共創エリア」
人の出入りが多い階段そばに「共創エリア」を構築。ランチや休憩、ソロワーク、打ち合わせなどで所属を超えた人々が自然に集い、コミュニケーションを育くみ、イノベーションを生み出すきっかけづくりとなるよう、多様な席を用意しました。さらに「共創エリアに行って、他部署の人と交流しよう」という意識に働きかけるために、別部門の人と一緒に社員証をかざすとドリンクが2人分無料(会社負担)になる自販機も導入。ライブラリーも会話のきっかけづくりに一役買っています。

「ユーティリティースペース」
複合機や共有備品などをまとめたユーティリティースペースは、杉材を利用した感じの良い空間。作業台とホワイトボードを設置し、作業中の偶発的なコミュニケーションや、何気ない会話が盛り上がりそのままミーティングなど、目的を選ばず自由に使える場所としました。どの所属でも予約なしで使用できる運用にし、フロアや部署を超えたつながりも推進しています。

オフィスコミュニケーションを改善するために有効な手段として、オフィスの移転・リニューアルが挙げられます。
オフィスの改装や移転には多大な費用と労力がかかるため、決断が難しい面があるのは事実です。それでも、コミュニケーション環境の再設計という視点を加えることで、組織を変革する大きなチャンスになると考えられます。生産性やエンゲージメントを高めるだけでなく、企業としてのブランド力を向上させ、社員が「ここで働きたい」と思える環境をつくることで、優秀な人材の確保にも有利になる可能性があるからです。
まずは、コミュニケーション不足や集中スペースの欠如など、自社が抱える具体的な課題を洗い出すステップが重要です。続いて、コンセプト設計とレイアウト提案の段階で社内の関係者から幅広く意見を取り入れ、合意形成を丁寧に進めることで、後戻りや予算オーバーを防ぎやすくなります。工事が始まってから大きな変更を加えようとすると、想定外の問題が発生しやすいため、可能な限り早い段階でビジョンを共有することが望ましいでしょう。
予算や工期の目安
オフィスリニューアルや移転費用は、企業の規模や工事範囲、オフィスの状態などによって大きく変動します。事例によっては数百万円程度の改修で済む場合もあれば、数千万円から億単位が必要となる大規模プロジェクトも存在します。工期についても、軽微な内装変更なら数週間で済む場合がある一方、レイアウトを大幅に変えたり設備工事を含んだりすると数カ月かかるケースも少なくありません。こうした幅を考慮し、余裕のあるスケジュールとコスト計画を立案することがスムーズな進行につながります。
新しいオフィスが完成しても、社員が十分に活用しなければ期待した効果を得られない恐れがあります。リニューアル後には、新レイアウトの利用方法や運用ルールを周知する研修や説明会を行うことが推奨されます。さらに、導入後にはアンケートやヒアリングを実施して実際の運用状況を確認し、不満点や課題を吸い上げる仕組みを整えると、コミュニケーション環境を継続的に最適化できる可能性が高まります。
オフィスコミュニケーションの活性化や移転・リニューアルを検討する中で、費用やスケジュール、デザイン設計から施工、導入後のフォローまで、さまざまな疑問や不安が生じるかもしれません。こうした課題に対処するには、専門家に相談し、自社のニーズや課題に合わせたプランをカスタマイズしてもらうことが有効です。もし、現在のオフィス環境に課題を抱えている、あるいは将来的に改善を図りたいとお考えの場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。適切な設計・施工と明確な運用ルールを確立することで、組織のコミュニケーションと生産性をより高いレベルへと引き上げる一助となるでしょう。
[2026.02.26公開]
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