ABWとは?フリーアドレスとの違いやオフィスに導入するメリット、導入事例などを解説

オフィスのレイアウト ABW フリーアドレス 働き方改革

ABWとは、従業員自身が働く場所を自由に選べるワークスタイルです。近年、オフィスにABWを導入する企業が増えています。この記事では、ABWを導入しようと考えている企業に向けて、ABWが注目される背景や導入するメリット、導入手順を解説します。ABWをオフィスに導入した企業の事例も紹介するので、オフィス移転に伴い、ABWの導入を検討している企業の担当者様はぜひ参考にしてください。

この記事でわかること:

  • 今さら聞けないABWの基本と、フリーアドレスとの決定的な違いを解説します
  • ABW導入を成功させるために知っておくべき、メリットとデメリットの両側面を解説します
  • 導入で失敗しないための手順やルール作り、参考にすべき企業の成功事例を紹介します

無料で資料ダウンロード

経営層から現場まで納得するオフィス作りのコツとは?
オフィス移転の課題と解決方法が上手くかみ合わない3つのパターンを取り上げて、原因と解決策を解説する冊子を差し上げます。
経営層から現場まで納得するオフィス作りの始め方
無料ダウンロードする

ABWとは?

ABWとはどのようなものか、フリーアドレスとの違いも含めて解説します。

ABWの概要

ABWとは、Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の頭文字をとった略語です。従業員が自分の業務や活動内容に合わせて、働く場所を自由に変えることを意味します。

活動に合わせた働く場所の選択 … 打ち合わせがある日や同僚とアイデアを出し合う日はオフィスへ出勤し、資料作成など個人作業に集中したい日は自宅やカフェで作業しても構いません。

従業員の自律性と企業との信頼 … 従業員が働く時間や場所を自身で選ぶため、高い自己管理能力や自律性が求められます。一方で企業側は、その選択を信頼し成果で評価する姿勢が求められ、両者の信頼関係がABWを成立させる基盤となります。

広義のABWと狭義のABW

ABWには、広義のABWと狭義のABWがあります。広義のABWでは、働く場所がオフィス内に限定されず、カフェやコワーキングスペース、自宅なども含まれます。一方、狭義のABWでは、働く場所はあくまでもオフィス内に限定されます。ABWを導入する際は、どちらを指しているのかを明確にしましょう。なお、この記事では広義のABWについて述べることとします。

【関連動画】HYBRID×FLEXIBLE WORK~企画部門のAさんの一日

フリーアドレスとの違い

「ABW」は、時間と場所の自由度をより広く捉えた働き方そのものを指し、その働き方を実現するための方法の一つとして「フリーアドレス」の考え方が活用されます。フリーアドレスはABWという大きな概念の一部であり、ABWの方がより戦略的で柔軟な働き方と言えます。

フリーアドレス ABW
定義 オフィス内において、固定席を設けない座席運用ルール 業務活動に合わせて、最適な時間・場所を自律的に選択する働き方
目的 スペースの有効活用オフィス賃料の削減、出社率の変動への対応など 従業員の生産性向上、柔軟な働き方の実現、優秀な人材の確保など
場所 オフィス内のみ オフィスに加え、自宅、カフェ、コワーキングスペースなど社外の場所までを含む

ABWの基本となる10の活動

ABWは働く場所を自主的に使い分けられる働き方です。その活動は、以下の10の作業に分類されます。なお、分類は、ABW創始者であるヴェルデホーエンの考えに基づいています。

  • 高集中
  • コワーク
  • 電話、Web会議
  • 2人作業
  • 対話
  • アイデア出し
  • 情報整理
  • 知識共有
  • リチャージ
  • 専門作業

ABWが注目される背景

ABWを導入する企業が増えています。その背景には、働き方改革の影響があります。時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務など、働き方改革が進むにつれ、企業には従業員が働きやすい環境整備も求められるようになりました。

新型コロナウイルス感染症の拡大も、ABWの推進の一翼を担いました。新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが進んだことがきっかけで、出社とテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」を取り入れる企業が増えたためです。

ABWをオフィスに導入するメリット

ABWを導入するか悩んでいる企業の担当者もいるでしょう。ここでは、オフィスに導入するメリットを解説します。

①生産性が向上する

ABWでは、従業員が自分の業務や活動内容に合わせ、臨機応変に環境を変えられます。業務によって集中できるスペースを確保したり、コミュニケーションをとりやすい環境を選んだりできます。働く場所を制限されないことから、生産性の向上が期待できるでしょう。

②コストが削減できる

ABWでは、従来のオフィスとは異なり、従業員1人ひとりのデスクを用意する必要がありません。働き方改革により、オフィスに出社せず、自宅やコワーキングスペースなどで働く従業員の増加も考えられます。これら2点により、今までのオフィスよりも狭いフロアの物件も選択肢に挙がるでしょう。その結果、オフィス機器やオフィスの賃貸料、電気代などのコスト削減につながります。

③優秀な人材の獲得につながる

ABWを導入している企業は従業員にとって働きやすく、満足度も向上しやすいです。「働きやすい企業だ」というイメージが強くなれば、入社を希望する優秀な人材も増える可能性があります。また、ABWをしっかり活用できる環境なら、入社後の定着率向上の効果も期待できます。

④従業員のストレス軽減と満足度が向上する

ABWでは従業員が自由に勤務場所を選択できます。作業にあわせて主体性をもって働く場所を選べるため、不要なストレスを感じることなく、どのような業務でも集中して計画的に取り組めます。働き方の選択肢が増えることは従業員の満足度向上に直結し、仕事に対する自主性や意欲も高まる可能性が高いと言えます。

⑤ワークライフバランスを両立できる

ABWでは、働く場所はオフィス内に限定されません。自宅や、自宅からアクセスのよいカフェなどを選べば、通勤時間の削減につながります。空いた時間を育児や家事、介護に充てられます。スキルアップのための勉強や研修時間、趣味を楽しむ時間に充てることも可能です。その結果、プライベートの充実につながり、仕事へのモチベーションやエンゲージメント向上が期待できます。

⑥BCP(事業継続計画)への貢献

ABWは、災害やパンデミックといった不測の事態に大きく貢献します。働く場所をオフィスに限定しないため、従業員の安全を守りつつ迅速に業務を継続できます。平時から活用する堅牢なIT基盤が緊急時にも機能し、日々の業務自体がBCP訓練となることで、企業全体の危機対応能力を抜本的に向上させます。

ABWをオフィスに導入するデメリット

ABWを導入することには、いくつかのリスクが伴います。ここでは4つのデメリットを解説します。

①勤怠管理が困難になる

コワーキングスペースや自宅など、オフィス以外で働く従業員の詳しい労働時間や仕事内容がわかりにくいという、デメリットがあります。そのため、従来の評価制度では、従業員を正しく評価できないリスクも考えられます。評価制度や勤怠管理のルールを整備し、成果を上げている従業員を評価する仕組みの確立が急務です。

②コミュニケーション不足になりかねない

オフィス以外のさまざまな場所で働く従業員の増加に反比例するように、コミュニケーションは希薄になりがちです。スペースによっては、1つの場所に特定の従業員が集まるため、従業員の顔ぶれが固定化されかねません。情報は適切に提供、共有し、チーム間の連携に悪影響を及ぼさないように注意しなければなりません。

③従業員の自主性に依存する

ABWを導入したからといって、従業員が自主的に業務内容に適した席を選ぶとは限りません。従業員の行動変容を促すためには、ABWのメリットを正しく伝え、導入の目的を明らかにすることが重要です。ABWの効果を最大限に活用するために、企業はサポート体制を整えましょう。

④オフィス需要に供給率が追い付いていない

新型コロナウイルスが5類感染症に変わったことにより、出社回帰がうたわれています。LINEヤフー株式会社様は、フルリモートが縮小し、事業部門は原則週1回、それ以外は月1回出社に改定すると発表しました。
コロナ禍で定着したテレワークとは異なり、出社回帰の流れにおいては通勤など従業員の満足度が低下する懸念もあるため、多くの企業が、インフラが整備されていて、交通利便性がよいエリアにある機能性の高い、広いオフィスを借りたいと考えています。しかし、東京・大阪の中心地でのオフィスビルの空室率は、需給均衡の目安とされる5%を下回っている現状があります。

⑤セキュリティ対策への整備が必要になる

オフィスの外で業務に取り組む場合、従業員がパソコンを紛失したり、他人に画面を盗み見られたりするリスクも高くなります。こうしたリスクを防止するには、従業員にセキュリティ対策を意識させなければなりません。

また、インターネットで重要な情報をやり取りする回数も増えるため、インターネットを介した情報漏洩への対策も必要です。

ABWをオフィスに導入する手順

ABWをオフィスに導入する際に起こりうる先述のデメリットを抑えるためは、6つの手順を踏みましょう。これらの手順を踏まえてABWを推進することで、ABWのメリットである生産性向上や従業員満足度の向上が実現する可能性が高まります。それぞれについて、解説します。

①ABWを導入する目的を明確にする

ABWを導入する前に、導入の必要性やメリット、期待できる効果を明確にします。ABWの導入自体を目的としないように、注意しましょう。

②現状の課題を洗い出す

オフィスの現状を整理し、課題を洗い出します。働き方やオフィスの使い心地や不満点、課題、求められる環境について明確にしましょう。

③レイアウトを決める

ABWの働き方に対応するために、レイアウトを変更します。必要な機能やスペースを一覧にまとめ、図面に落とし込みます。配線や通信回線、動線なども合わせて記載しましょう。ABW型で働いたことがない従業員ばかりでは、建設的な話し合いが進まないことも考えられる他、同じ部門が同じ場所に固まるといったことを極力避け、コミュニケーションが固定化しないようなスペース設計の工夫も必要です。自社の働き方に合ったスペース設計、レイアウトにするためその際は、オフィスリニューアルの経験が豊富な専門家に依頼しましょう。

また、ファシリティーに関しては、自席のデスクをテーブルタイプに変えること、天板の形状や可動式(キャスター付き)かどうかなどで、働き方は大きく変わります。一度に全社に導入することが不安な場合には、モデル部門でのトライアルも良い方法です。
オフィス家具のトライアルセット(レンタル家具)はこちら

④就業規則や評価制度を見直す

ABWの導入により、従業員の働き方は大きく変化します。従業員の自発性を高められる評価制度の導入や、就業規則の再ルール化などが必要です。来客や電話対応のルールも、事前に決めておきましょう。

⑤セキュリティ対策を行い、ルールを明文化する

ABWの導入により、働く場所はオフィス内に限定されなくなります。そのため、不正利用や紛失・盗難、セキュリティへの対策は急務です。インターネットに接続する際のルールを明らかにしたうえで、従業員への教育を徹底しなければなりません。

⑥押印のための出社などを撤廃するためDX化を進める

ABWの推進には、ペーパーレス化やクラウドサーバーでのファイル共有など、DX化が不可欠です。テレワークのために書類を持ち帰る、資料に上司からの印鑑をもらうために出社するなどの行動は、減らすべきです。が頻発しては、従業員の裁量が制限され、ABWの良さが損なわれてしまいます。そのため、ABWの推進には、ペーパーレス化やクラウドサーバーでのファイル共有など、DX化が不可欠です。

ABWの導入が向いている職種や企業

ABWの導入は、すべての職種に適しているわけではありません。ここでは、導入に向いている職種や企業の特徴を解説します。

ABWの導入に向いている職種

ABWの導入に適している職種には、以下が挙げられます。

  • 営業:外出が多い場合、外出先でサテライトオフィスを活用可能である
  • IT、企画、マーケティング:自宅でも業務が可能である

ABWの導入に向いている企業の特徴

意識改革に対して柔軟な社風の企業は、ABWをスムーズに導入できると考えられます。柔軟性が高く、新しい働き方に挑戦する意識が高い従業員が多く、ABWが浸透しやすいためです。ABWの働き方は、近年、急速に日本で浸透してきました。しかし、多くの従業員にとって馴染みが薄い働き方です。

ABWをオフィスに導入した企業の事例

ABWをオフィスに導入した企業の例を2つ紹介します。

味の素ファインテクノ株式会社 様

味の素ファインテクノ株式会社様が、オフィスにABWを導入した事例を紹介します。味の素ファインテクノ株式会社様では、事業拡大による増員で、執務室のスペースが不足していました。そのため、業務内容や目的によって、適した席を選べるABWを導入することを決め、さまざまな席を用意しました。
結果、執務室のスペース不足が解消されただけでなく、将来の変化にも柔軟に対応できるレイアウトが実現しました。

事例の詳細はこちら

パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 様

パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社様が、オフィスにABWを導入した事例を紹介します。パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社様では、時間や場所に縛られないフレキシブルな働き方を推進したいとの考えから、オフィス改革に取り組んでいました。その1つが、個人の意思や業務スタイルに合わせて働く場所を選択できるオフィスです。
そこで、会議室の大きさや部屋数を最適化し、多様な働く場所の提供を推し進めました。さまざまなバリエーションのクイックミーティングスペースを多く配置し、会話や議論が進む環境を構築しました。

事例の詳細はこちら

まとめ

ABWをオフィスに導入することで、生産性の向上やコスト削減につながります。働きやすい環境とアピールできるため、求職者や定着率の増加も期待できるでしょう。ABWを導入する際は、目的を明確にし、レイアウトを決める必要があります。導入に伴い、評価制度や就業規則も見直しましょう。

ABWをオフィスづくりに生かすなら、UCHIDAの商品、サービスをご利用ください。オフィス家具や内装だけではなく、ICTを活用した空間構築に知見があり、商社を生かした調達力が強みです。社内研究機関である知的生産性研究所が、働き方変革のコンサルティングサービスを提供しています。

オフィス移転・リニューアルに関する情報をお探しの方へ
オフィス移転・リニューアルのご案内

ハイブリッドワーク時代の最適解 ABWを導入したオフィスづくり
ABW / フリーアドレスを導入するには?

[2025.02.20更新/2021.05.26公開]

オフィス移転・リニューアルの情報をお探しの方へ

無料で資料ダウンロード

経営層から現場まで納得するオフィス作りのコツとは?
オフィス移転の課題と解決方法が上手くかみ合わない3つのパターンを取り上げて、原因と解決策を解説する冊子を差し上げます。
経営層から現場まで納得するオフィス作りの始め方
無料ダウンロードする

FAQ

Q:ABWとはどういう意味ですか?
A:ABW(Activity Based Working)とは、仕事内容に合わせて、時間や場所を自由に選ぶ働き方のことです。固定席を設けず、集中、ウェブ会議、協業など、活動に最適な環境をオフィス内外で自律的に選択します。

Q:フリーアドレスとABWの違いは何ですか?
A:フリーアドレスが単に空いている席を自由に使う制度であるのに対し、ABWは仕事内容に応じて最適な場所を選ぶという考え方に基づいています。そのため、ABWでは多様な業務に対応できる様々な機能を持つスペースが用意されている点が大きな違いです。

Q:ABWを導入するとどんな効果があるのでしょうか?
A:ABWを導入すると、従業員の自律性が高まり、生産性の向上が期待できます。また、仕事内容に最適な環境で働くことで、従業員満足度が向上し、創造性の発揮にも繋がります。

Q:ABWの問題点は何ですか?
A:業務に合わせた多様な環境整備やルールづくりが不十分だと、かえって混乱や生産性低下を招く恐れがあります。また、従業員には高い自己管理能力と自律性が求められるため、個人差によって効果にばらつきが出やすい点も課題です。

Q:ABWのメリットは何ですか?
A:ABWは業務内容に応じて最適な環境を選べるため、集中力や生産性が高まりやすいというメリットがあります。さらに、部門を越えた交流や柔軟な働き方を促進し、従業員満足度や組織の創造性向上にもつながります。

関連記事​

こちらの記事もご覧ください

TOP