ABWは、近年注目を集める新しいワークスタイルです。日本でもABWを導入する企業が増えていますが、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。この記事では、ABWの導入に取り組む国内企業の調査結果をもとに、ABWがオフィスにもたらす効果を解説します。
ABWとは「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略称で、オランダのコンサルティング会社によって生み出された新しいワークスタイルです。
多様なワークスペースの設置やテレワークの導入などを通して、時間や場所にとらわれない自由な働き方を実現します。例えば、訪問先での会議前に近くのカフェで作業をすることができます。
2020年以降、新型コロナウイルスの影響により日本ではテレワークが急速に普及しました。東京都の調査によると、従業員30人以上の都内企業におけるテレワーク実施率は44.0%にのぼります。このように働く場所の多様化が進んだことに伴い、ABWの注目度も高まりつつあります。
ABWはフリーアドレスと混同されがちです。
フリーアドレスとは、従業員が「自分の席」を持たず、オフィス内で働く場所を自由に選べるワークスタイルのため、働ける場所はオフィス内に限られ、業務時間も定められています。
一方、ABWはフリーアドレスとは異なり、ABWは働く時間も場所も自由自在です。オフィスだけでなく自宅やカフェ、サテライトオフィスなど、幅広い選択肢のなかから自由に選択できます。
ABWを導入すると、以下のようなメリットを期待できるでしょう。
ABWを導入すると、多様なワークスペースのなかから、働く場所を自由に選択できます。
資料づくりは集中ブース、軽めのミーティングはコミュニケーションルームなど、業務内容に合わせて働く時間・場所を選べるため、生産性の向上につながるでしょう。
働き方の自由度が高まれば、従業員のモチベーションもアップします。気持ちよく働けるようになることで、組織に対する貢献意欲も自然と高まるでしょう。
働く場所や時間を自由に選べるようになると、ワークライフバランスを実現しやすくなります。テレワークを組み合わせれば通勤時間も減らせるため、プライベートの時間をより多く確保できるでしょう。
仕事をし続けるよりも、働く場所をフレキシブルに選べるほうが、気分転換がしやすくなります。また、普段と違う環境で働くことで思考が活性化され、独創的なアイデアも生まれやすくなるでしょう。
ワークライフバランスの実現や働きやすい環境づくりは、採用時の魅力づけにもなります。オフィスづくりに力を入れている企業は、従業員だけでなく求職者にとっても魅力的です。採用ページなどでABWを導入していることをアピールすれば、優秀な人材をより一層確保しやすくなるでしょう。
ABWにはさまざまなメリットがあることを解説しましたが、実際はどの程度の効果を得られるのでしょうか?
今回は三井デザインテック株式会社や一般社団法人 日本テレワーク協会、および公益社団法人 空気調和・衛生工学会の調査結果を参照し、ABWの導入が働く人にもたらす変化を紹介します。
三井デザインテック株式会社の調査により、ABWは固定席やフリーアドレスと比べて仕事のパフォーマンスやワーク・エンゲイジメントにプラスの影響を期待できることが実証されています。
*ワーク・エンゲージメント:従業員が組織や仕事に対して強い関与や熱意を持ち、積極的かつ意欲的に業務に取り組む状態を指します。
図1)ワーク・エンゲイジメント、図2)個人の パフォーマンスの調査項目において、ABW と固定席型 ABW は高い数値を示したことから、働く場所を柔軟に選択できるオフィス環境が仕事のパフォーマンス向上に有益であることが明らかになりました。
働く場所の選択を可能にすることで、従業員は自分の好みや作業の特性に合わせて最適な作業環境を選択でき、これが結果として生産性やワーク・エンゲージメントの向上につながっていると考えられます。
一般社団法人 日本テレワーク協会の調査によると、ワーカーは業務内容によって働きたい場所に個人差があることを示しています。
図A) コラボレーションアクティビティの好ましい実施場所」、「図B)業務の望ましい実施場所」より、業務によって個人が望む場所にはばらつきがあります。
そのため、場所に選択肢を設けることによって、個人にとって最適化された働き方を実施することができます。
公益社団法人 空気調和・衛生工学会の調査ではABW を単に導入しただけでは仕事の高効率化や生産性の向上に必ずしも寄与しないと示しています。
以下の図ではABWを導入し、約半年後に行われたアンケートから得られた不満項目を 改善するようなレイアウトの変更前と変更後において、ABWの働きやすさの変化を表しています。
レイアウト変更前とレイアウト変更後を比べると明らかに「非常に働きにくい」と答える人はなくなり、割合的に「働きやすい」「非常に働きやすい」と答える人が増えています。
調査結果より、ABWの導入だけではなく、業務の内容や種類に応じた計画を行うことが重要であることを示しています。
ABW導入の成功には、実際にオフィスで働く従業員の意見を取り入れることが大切です。アンケート調査などによってオフィスの課題や理想の働き方が見えてきたら、以下の手順でABWを導入しましょう。
自社の課題や理想の働き方に合わせて、オフィスのレイアウトを検討します。従業員の声を反映しつつ、専門家の知見も取り入れるとよいでしょう。
ABWを導入するためには、社内ルールを整備する必要があります。就業規則や人事評価制度などを見直し、ABWの制度を効果的に活用できるようなルールを定めましょう。
ABWを導入すると、業務用のパソコンや備品をオフィス外に持ち出す機会が増加します。紛失や情報漏洩などを防ぐためには、セキュリティ対策が欠かせません。また、従業員の不正を防ぐための仕組みづくりも必要です。
オフィスレイアウトの変更やルールの整備が完了したら、いよいよABWを導入します。従業員に対しても、ABWを導入することを周知しましょう。新たなツールを導入する場合は、操作方法のレクチャーも必要です。
従業員アンケートなど定期的に効果測定を実施し、導入による効果を定量的に測定しながらオフィスの改善に役立てましょう。
ABWは働く人にさまざまなメリットをもたらしますが、導入にあたってはいくつかの課題や注意点があります。
ABWを導入すると、働く場所が人それぞれ異なるようになります。その際、紙の書類を使ったやりとりが多いと、物理的に距離が離れていることによる不便を感じやすいでしょう。そのため、ABWを導入するためには、ペーパーレス化の推進が必須といえます。
従業員にABWの目的やメリットが伝わらないと、制度が形骸化してしまう場合が多いでしょう。導入目的を明確化するとともに、従業員に周知することが大切です。
実際のところ、従業員の自宅にオフィスと同じような環境を整えることは困難です。そのため、働く場所によって、ある程度できる業務が限られてしまう場合もあります。
ABWの注目度は高まっていますが、日本ではまだそれほど一般的ではありません。自社に知見やノウハウが蓄積されているケースは少なく、なにから始めるべきか迷ってしまう場合も多いでしょう。
ABW導入を成功させるためには、専門的な知識やノウハウが不可欠です。せっかくの取り組みを成功させるためにも、専門会社を積極的に活用することをおすすめします。
ABWに取り組む企業の調査により、ABWは従業員の生産性にプラスの影響をもたらしていることがわかります。満足度に関連する調査においても、ABWの継続を望む人が多いという結果になりました。「オフィス空間」や「働き方」に課題を感じているなら、ぜひABWの導入を検討しましょう。
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当社は、オフィス家具の選定や内装設計だけでなく、ICTを活用した空間構築を得意としております。社内研究機関による働き方変革のコンサルティングサービスも実施しており「オフィス」と「働き方」のお悩みをトータルでサポート可能です。
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[2024.03.05公開]