近年注目を浴びているハイブリッドワークは、ABWと相性が良い理想的な働き方の1つです。ハイブリッドワークを導入する際には、メリットとデメリットの双方を押さえておきましょう。この記事では、ハイブリッドワークの概要やメリット・デメリットの解説、ハイブリッドワークを導入した成功事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ハイブリッドワークは、テレワークとオフィスワークを組み合わせ、出社や在宅を柔軟に選べる働き方です。働く場所は、オフィスや自宅に加えシェアオフィスやサテライトオフィスも選べるため、柔軟な働き方が実現できます。ハイブリッドワークは新しい働き方として認知され、今後は主流になると予想されています。
コロナ禍をきっかけに、多くの企業でテレワークが急速に普及しました。テレワークには、通勤時間の削減や柔軟な働き方が可能になるメリットがある一方で、課題も明らかになりました。たとえば、対面でのコミュニケーションが必要な業務では、生産性が低下するケースもあります。このような課題を解決しつつ、テレワークの利点を生かすために生まれたのがハイブリッドワークです。
ハイブリッドワークに適したワークスタイルとしてABWが注目されています。
ABWとは、Activity Based Working:アクティビティ・ベースド・ワーキングの頭文字から生まれた用語です。仕事の内容に合わせてオフィス以外のサードプレイスや在宅勤務も含め自由に働く場所や時間を選択する働き方のことであり、柔軟なワークスタイルを実現します。
また、ABWの名を冠した「ABW型オフィス」とは、多様な執務環境をオフィス内に整備しているオフィスを指します。
ABWは、ハイブリッドワークの一方の働き方であるオフィスワークの生産性向上や、ワーカーのモチベーションアップをもたらす可能性があり、もう一方の側面であるテレワークにおけるコミュニケーション不足などのマイナス面を補う効果も期待でき、ハイブリッドワークに適したオフィスづくりにつながります。
ハイブリッドワークが選ばれる3つの理由は以下の通りです。
Webミーティングやテキストコミュニケーションなど、テレワーク時のコミュニケーション手段は多数ありますが、対面コミュニケーションと比べるとコミュニケーション不足を感じる人は多い傾向にあります。意思疎通が難しい場合もあり、生産性低下を招くおそれもあるでしょう。
コミュニケーション不足の解消のためには、例えば、対面でのチームミーティングをオフィスで定期的に行うことで、メンバー同士がお互いの進歩や課題についてよりオープンに話し合うことができます。
テレワークは徐々に一般化していますが、インターネット環境や作業環境など、業務に最適な環境を誰もが用意できるわけではありません。PCの持ち出しによる情報漏洩など、セキュリティに対する不安も大きいでしょう。
ハイブリッドワークであれば、例えば機密性の高い仕事はオフィスで行うなど、業務に合わせて働く場所を選択できるので、業務環境やセキュリティ上の問題を解決できます。そのため、柔軟性とセキュリティのバランスをとりながら業務を進めることができます。
健康状態を管理しやすくなる点もハイブリッドワークが選ばれる理由の1つです。
テレワークによって対面で顔を合わせなくなると、従業員の様子が画面越しでしか確認できなくなります。ストレスがたまってきている従業員や1人作業によって孤独感を感じている従業員が出てくる可能性は十分にあります。
ハイブリッドワークを導入するメリットは以下の5つです。
ハイブリットワークを導入することで、例えば一人で黙々と業務を行いたい日はテレワーク、コミュニケーションが必要な業務はオフィスワークなど最適な環境を選べるようになるでしょう。例えば、クリエイティブなタスクに取り組む際には静かなテレワーク環境を選択し、チームプロジェクトにおいてはオフィスに出社し、即座にコミュニケーションをとることができます。
さらに、通勤時間の削減も可能であるため従業員の負担が少なくなります。災害時など公共交通機関が動かないときにも、テレワークで対応できる体制も整います。
オフィスを利用する従業員数が減るため、スペースを有効活用できるようになるでしょう。例えば、オフィススペースの一部を共有スペースに転用することでコラボレーションを促進することができるでしょう。それだけではなく、オフィスのコンパクト化・最適化によって賃貸料や光熱費など固定費も削減できます。
従業員に就労場所の裁量があれば、従業員エンゲージメント向上が見込めるでしょう。例えば、柔軟な勤務時間やテレワークのオプションを提供することで、従業員は仕事とプライベートの両方に効果的に対処でき、ストレスの軽減が期待できます。従業員のライフワークバランスが向上することによって、自由に働ける環境を求めている優秀な人材を確保できる可能性も高まります。
ハイブリッドワークの導入は、働き手にとって魅力的な条件になり得ます。そのため、優秀な人材に加え、たとえば、子育て中の人やシニア世代、外国人など、通勤が難しい人材の採用も可能になります。
ハイブリッドワークを導入していれば、緊急時にも柔軟な対応が可能です。たとえば、台風や地震などの自然災害で通勤が難しくなっても、テレワークやサテライトオフィスを活用すれば、業務を継続できます。
ハイブリッドワークを導入するデメリットは以下の2つです。
従業員が様々な場所で業務を行うため、勤怠管理が複雑になり、担当者の負担は増してしまうでしょう。
対策として、勤怠管理システムやグループウェアを導入して管理体制を整える必要があります。例えば、グループウェアの導入することでチーム全体の進捗やプロジェクトのスケジュールをリアルタイムで把握し、担当者の負担を軽減すると同時に、コミュニケーションやタスクの調整が円滑に行えるでしょう。
ハイブリットワークを導入したことで、テレワーク派と出社派など、従業員が二分化するケースも考えられます。また、テレワークで働く人の業務進捗状況も見えにくくなるでしょう。
そのため、組織のエンゲージメント向上のために出社日を決めるなどハイブリッドワークの両立を工夫する必要があります。メンバーとコミュニケーションが取れる場所を整えるなどの工夫もよいでしょう。
例えば、チーム外メンバーと交流するために、オフィスの導線上に誰もが気軽に使えるカフェをつくるなどの取り組みが考えられます。そのほか、出社イベントや出社タイミングのレコメンド通知などを行えるシステムの導入もおすすめです。
具体的なハイブリットワークの導入方法は以下の2点です。
ハイブリッドワークを導入する方法の1つは、ABW型のオフィスデザインの導入です。
業務を行う通常ワークスペース以外のオフィスデザインがメインであり、少人数で利用できる「打ち合わせスペース」や「会議室」が設置されます。そのほかにも、オンラインミーティングや1人で集中業務ができる「個室ブース」「プライバシースペース」といった専用ブースが置かれる点も特徴です。
フリーアドレスとは、オフィスに固定席を設けず、好きな場所で仕事をするワークスタイルです。毎回席を選ぶことが面倒になり、実質的に固定席と同様になってしまうケースもあるため、ルールの整備も併せて行うと良いでしょう。ルールと設備を正しく導入できれば、積極的に周囲とコミュニケーションを深められる環境が整います。
書類の電子化などハイブリッドワークにも繋がるICT環境が整えば、生産性の向上も実現できます。
ハイブリッドワークを成功に導くためのポイントはICT環境、ルール作り、効果測定の3つです。それぞれ詳しく解説します。
オフィスにあるパソコンをテレワークのパソコンから遠隔操作で使えるシステムなど、ICT環境の整備を行い、ハイブリットワークを導入する狙いが実現する環境を整えましょう。具体的には、Webミーティングするためのツール、チャットツール、VPNやVDI等のシステム導入をおすすめします。
テレワークをしているメンバーとオフィスで勤務をしているメンバーで生産性の高いハイブリッド会議が可能な会議空間や、誰もが簡易に操作できるICT機器を準備する取り組みも重要です。
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ハイブリッドワークでは、始業・終業時間、休憩時間、通勤手当などの変更が必要になります。業務の進捗報告や緊急時の対応方法、勤怠管理、テレワーク時の通信費の負担についても検討が必要です。また、ハイブリッドワークを導入すると、別の場所で各々が業務に取り組むことになります。コミュニケーション不足によるミスをなくすためにも、報告・連絡・相談に関するルールを整備するとよいでしょう。例えば、緊急の相談の際には電話やチャット、通常の場合にはメールと分けるなどが考えられます。
テレワークでは自宅以外の場所で業務を行う場合があるため、セキュリティ面の対策も欠かせません。特にシェアオフィスやカフェでは情報漏洩のリスクが高くなるため、対策が必要です。
従業員にセキュリティ研修とマニュアルを提供し、従業員のセキュリティ意識を高めることも効果的です。意識向上を図るだけでなく、セキュリティシステムの見直しも重要です。
ハイブリッドワークによって狙い通りの効果が見られない場合、改善を図る必要があります。そうした改善のためにも、定期的に効果測定を実施しましょう。
効果を測る際には、数字的なデータ「定量的評価」と数字では表せない「定性的評価」の双方によるアプローチが必要です。「従業員が満足しているか」「業務が効率化しているか」など定性的データは社内アンケートや個別相談の場を設けて評価しましょう。
ここでは、「業務の生産性が高まる」「ワークライフバランスを実現できる」など、ABWのメリットを取り入れたハイブリッドワークの事例を3つ紹介します。
オリックス銀行株式会社様はハイブリッドワークとグループアドレスを実施し、業務に合わせて選択できるABWの発想を活かしたオフィスづくりに取り組んできました。さらに、カフェラウンジを設置することによって、オープンなコミュニケーションも可能となっています。
これにより従業員はさまざまな部署の人と会う機会が増え、よりコミュニケーションが活性化しています。
新型コロナウイルス感染症の拡大もあり、株式会社アグレックス様はオフィスの大幅リニューアルを行いました。具体的な取り組みとしては、ソロワークからグループワークなど働き方に柔軟に対応する多様なワーキングスペースを設置しています。
これにより、以前のオフィスと比べて会話が増え、コミュニケーションが取りやすくなる職場環境が実現しました。
株式会社ミロク情報サービス様は、従業員の増加によってオフィスが手狭になるとの課題を抱えていました。その背景もあり、将来的なABWの実現まで想定した執務環境の構築に着手しています。
具体的には、ウインドミル型のデスク配置による偶発的な出会いやクイックミーティングの機会を生む仕掛けづくりの提案を採用しました。これにより、業務に取り組む姿や誰がどのような仕事をしているかが見える環境が整っています。
ハイブリッドワークを導入する際には、得られるメリットとデメリットの双方を比較検討しましょう。自社に最適な働き方がどのようなものであるのかを考える取り組みも重要です。
内田洋行は、ハイブリッドワークによって社内のあり方を変えたいと考えているお客様を支援しています。実務的なサポートに加え、ハイブリッドワークを実践している自社オフィスの見学会やデザインワークショップの開催も行っています。オフィスづくりに関することは、ぜひ内田洋行にお任せください。
[2025.04.07更新/2024.03.05公開]