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成果の上がる、行きたくなるオフィス ~5つの『らしさ』で実現する理想の職場~

月刊総務 オフィスが果たす役割 総務が導く未来のオフィス戦略

働く場所をどう変えればイノベーションが生まれるのか?
内田洋行セミナーより、オフィスを戦略的資産として再定義し、5つの『らしさ』で理想の職場を実現する実践手法をご紹介します。

2025年7月9日に開催した「UCHIDA FAIR in 名古屋」にて、株式会社月刊総務 代表取締役社長 豊田 健一 氏にお話しいただきました「いま 求められる、『イノベーション』を引き起こすオフィス」について、セミナーレポート形式で紹介します。

講師



株式会社月刊総務 代表取締役社長
豊田 健一 氏

ハイブリッドワーク時代のオフィス戦略

市場や社会環境が激しく変化するVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代においては、オフィスの在り方も従来の延長では通用しなくなっています。働き方が多様化した今、オフィスは単なる「仕事の場」ではなく、企業文化を体現し、人と組織をつなぐ戦略的資産として再定義されつつあります。

1.コロナ以降、二極化するオフィス

コロナを経て出社率は戻りつつありますが、その戻り方は二極化しています。出社率7〜8割の「出社寄りハイブリッド」では「席や会議室が足りない」という課題が顕在化しています。一方で、出社率2〜3割の「在宅寄りハイブリッド」では「来ても人がいない→結局来なくなる」という循環が起き、出社文化が根付きにくい現実があります。さらに、リモートで育った世代が中堅になると「自分もリモートで後輩を育てる」という文化が継承される可能性もあり、オフィス戦略を考える上で重要な要素となります。

2.オフィスが果たす役割と「絶対軸」

オフィスは、来客には「うちはこういう会社です」、社員には「私たちはこう働く」というメッセージを空間そのもので伝えることができます。つまりオフィス=メディアであると捉えることができます。

コロナ禍以前にはGAFAや西海岸風のおしゃれなデザインを取り入れる流れもありましたが、オフィスに「正解の型」はありません。重要なのは流行の模倣ではなく、自社の「絶対軸」を定めることです。企業としての拠り所、環境が揺れてもぶれない軸を持つことがオフィス設計の出発点になります。

月刊総務オンラインの調査によれば、これからのオフィスの役割として
①社内コミュニケーションの場
②チームで作業する場
③社風・文化を醸成する場
という回答が多く挙がりました。

出典:月刊総務オンライン 「月刊総務調査 『オフィスの方がテレワークより生産性高く働ける』が上昇。2割の企業が『オフィス予算を増やす』

では、私たちは具体的にどのような視点や方法でオフィスを設計・改善していけばよいのでしょうか。その実践的なアプローチについて掘り下げていきます。

企業の独自性を表現する『5つのらしさ』

企業の競争戦略=差別化戦略です。自社独自の価値を表現するオフィスづくりに必要なのが5つの「らしさ」です。それぞれの「らしさ」を組み合わせることで、唯一無二のオフィス空間を創造できます。


1.人間らしさ ~自然とのつながり~

人類は数百万年を自然の中で過ごしてきました。視野の10〜15%を緑が占めるとストレスが軽減され、フローリングや木の天板などの木視率(視野に占める木の割合)を50%程度まで取り入れると気持ちが積極的になるとされています。

自然光を取り入れるなど、四季や時間による光の変化を感じられる工夫は最も効果が高く、ブラインドは「開けておく」のが正解です。日本の縁側のような伝統的な建築手法を現代オフィスに応用し、光や風を自然に取り込む工夫も増えています。水、揺らぎ、音といった自然要素も「場」の質を高めます。

2.日本人らしさ ~ほどよく囲う安心感~

日本人は世界的に見ても不安を感じやすい民族といわれます。完全にオープンな空間では集中しにくいという声も多く、障子や屏風の文化に基づいた可動式の間仕切りやグリーンで「ほどよく囲う」設計が有効です。これにより会議室不足も柔軟に補うことができます。

3.その人らしさ 〜“選べる”から生まれる快適さ〜

人は、自分の業務や気分に合わせて環境を「選べる」ことで、安心感や快適さを感じやすくなります。たとえば明るい場所で集中したい日もあれば、静かなコーナーで落ち着きたい日もあるでしょう。座席や設備だけでなく、デザイン・明暗・温度といった要素を自由に選択できると、自分にとっての"お気に入りの場所"が生まれ、オフィスに行きたくなる理由につながります。

この考え方を体系化した仕組みの一つがABW(Activity Based Working)です。業務内容や目的に応じて最適な場所を選択して働くという考え方で、"選べること"自体が働く人のモチベーションや満足度を高めます。

4.部門らしさ 〜機能に応じた最適配置〜

生産性には「効率性」と「創造性」の2面があります。まんじゅう屋にたとえると、効率性は今作っているまんじゅうをもっと多く早く作ること、創造性は今までにない新しいまんじゅうを生み出すことです。

同じ環境で両方を満たすのは困難なため、部門ごとの機能に合わせた「部門最適」の場づくりが必要です。部門には他部門との交流を重視するタイプと、同一部門内の交流を重視するタイプの2つがあります。手際よく処理する部門は固まった方がよく、新しい発想を生む部門は散った方が効果的です。グループアドレスで部門を固め、中央にコラボゾーンを設け、3カ月ごとに隣接関係を入れ替える運用で"ぶつかり方"をデザインできます。

5.企業らしさ 〜価値観の見える化〜

壁面・展示・アートで自社の歴史や価値観をストーリーとして"見える化"する工夫が有効です。

ある企業では、壁面に大きく獅子舞の絵を描きました。よく見ると、中にいる人の足の形はそれぞれ違います。これは「多様な人材がいても、同じ目標に向かってスクラムを組む会社」という価値観を表現しているのです。社員は毎日その絵を目にすることで、自然とメッセージが刷り込まれていきます。

別の会社では、受付の壁に歴代社長の顔が描かれています。体の部分は握手をしていたり、ユニークなポーズを取っていたりと、来客には一見意味が分かりません。だからこそ「これはどういう意味ですか?」と尋ねられ、案内する社員が説明する機会が生まれます。そのプロセス自体が、会社の歴史や価値観を相手に伝え、さらに社員自身も再確認する仕組みになっているのです。

運営で差がつく『来たくなるオフィス』づくり

優れたオフィス空間を設計しても、それだけでは十分ではありません。社員が実際に「使いたくなる」「来たくなる」オフィスにするためには、継続的な運営とコミュニケーションが不可欠です。オフィスを活性化させる具体的な運営ノウハウをご紹介します。

1.使い方のガイダンスとナビゲーション

オフィスは作って終わりではありません。「こういう意図をもってこう作りました」とユーザー目線で意図を正確に伝え、使い方をナビゲートすることが重要です。プロである総務と、「素人」であるユーザーとの間には知識の差があります。使い方のガイダンス、オフィス・マニュアル、定期的なオフィス活用ブックで正しい使い方を伝えることが必要です。

また、社内報では単に社長のメッセージを流すのではなく、実際に「オフィスを使って成果を出した部門」の事例を紹介する方が、当事者意識を喚起しやすくなります。こうした「カスタマーサクセス的な語り口」が文化の定着を促します。

2.客観データと主観の声の両面把握

PDCAを回すためには、オフィス利用率をデータで把握することが重要です。誰が入館して誰が会議室を利用しているかを位置情報や予約データで客観的に測定します。一方で現場の主観的な"真実"も聞くことが重要です。

「席が足りない」という声に対し、データ上では空席があっても、3人掛けの両端だけが埋まって真ん中に座りづらい状況では、体感としては「席がない」となるのも真実です。会議室不足も「大人数部屋を少人数で使っている」「空予約」などデータで把握できる問題があります。客観と主観を行き来してチューニングすることが鍵となります。

3.コミュニケーション活性化の仕掛けづくり

社内コミュニケーションには、メディア、オフィス、イベントの三位一体の施策が必要です。メディア(社内報、デジタルサイネージ)で知り合うきっかけと会話のネタを提供し、オフィス(リフレッシュルーム、マグネットポイント)で日常的な交流を促進し、イベント(運動会、クラブ活動)で非日常的な交流を創出します。

フリーアドレスやABWで"ぶつかる"機会を増やすのは有効ですが、大企業では「隣の人が誰か分からない」問題が起きます。"社内メディア"と連携して人物・部門・業務を紹介し、人の情報を見える化して、ぶつかった後に会話が始まる土台を作ります。開発部の部長と営業部の新人のような普段交わらない人同士を意図的に交流させることも重要です。

総務が導く未来のオフィス戦略

DX化が進み、問い合わせ対応や申請処理、発注業務などはAIやRPAに置き換わりつつあります。総務に残るのは「心を動かす仕事」、すなわち0から1を生み出し、暗黙知を拾い上げ、文化を醸成する仕事です。

しばしば総務は「モノを手配する部署」と思われがちですが、実際にはモノは目的ではなく、働き方や文化を支える“コト”のためにあります。机や椅子を整えること自体が目的なのではなく、その先にある会議、交流、学びを実現するために舞台を設計するのが総務の役割です。

経営が方向性を示し、総務が舞台を準備し、社員が役者として輝くことができます。総務が変われば会社が変わるのです。 「らしさ」を意識してオフィス改善に取り組むことが、未来を切り開く第一歩となるでしょう。

[2025.9.22公開]

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