1.画面越しのコミュニケーション
画面越しのコミュニケーションは、コロナ禍によって加速された最大の変化の1つです。世界11カ国での調査結果によると、会議における56%がリモート参加者を含む会議であることがわかりました。出社する際のオンライン会議については、50%の従業員が自分のデスクで行っており、「移動せずに個人スペースから接続できる方が簡単」という理由で、人とのつながりよりも利便性を重視する傾向が強くなっています。どのようにして働く人々のために最適な場所や体験を設計するかが重要なテーマとなっています。
2.AIの急速な拡大
現在ナレッジワーカーの75%がAIを業務に活用しているという調査結果があり、わずか半年で倍増しています。AIを効果的に活用するためには、使いたい人が、使いたい場所で、使いたい方法で直感的に利用できるような空間環境の整備が不可欠です。これは、スマートフォンが直感的なUIやUXによって広く普及したのと同様です。AIという新しい技術が自然に人々の働き方に溶け込むためには、行動様式に合った空間設計を行い、テクノロジーを備えた個人スペースや、AIとの相互作用を支えるデジタルとフィジカルが融合した環境づくりが重要になります。
3.サステナビリティ思考
サステナビリティは、どの企業にとっても最優先の目標となっています。日本では768社がSBT認定(*)を受けており、これは世界最多の数字です。新入社員や中途採用者においても、サステナビリティに関わる役職の割合が39%まで増加しており、サステナビリティを専門とする「グリーンカラーワーカー」という職種も生まれています。
オフィス家具素材の選定や資源の調達方法においても環境への配慮を強化し、製品が使用されなくなった後の「アフターライフサイクル」も考慮することが重要となっています。リサイクル素材の使用やカーボンニュートラルの認証取得など、持続可能な労働環境の整備が求められています。
* SBT認定:企業が設定する温室効果ガス排出削減目標が、パリ協定が求める水準と整合しているかを認証する制度
4.緊急を要するウェルビーイング
ウェルビーイングの観点では、世界平均で66%の従業員が現状のオフィス環境に満足していないという深刻な結果が出ています。特に日本では、7割以上の従業員が「仕事に意欲的でない」と回答しており、ワークライフバランスも年々低下していることがわかりました。日本は、世界平均に比べてコロナ禍以降の出社率が高く、オフィス空間への満足度の低さが働く意欲に関係している可能性を示唆しています。
従業員が最も期待しているのはプライバシーの確保です。ハイブリッド対応の会議スペースや十分な電源設備など、新しい働き方にふさわしい環境整備が求められています。
また、多様性とインクルージョンを尊重する環境作りも重要です。たとえば、車椅子の人が通れるスペースの確保や、働くママが子どものために搾乳する空間の提供など、どんな人でも働きやすいオフィス環境作りの工夫が求められます。