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オフィス防災の新常識|平時と有事を両立する空間づくりとは

安全配慮義務と関連法令 BCP(事業継続計画) 災害に配慮したオフィスづくり

オフィスの防災対策は、まず「何を備えるか」「どれだけ備えるか」を整理することから始まります。従業員が災害時に安全に待機できるようにするには、飲料水・食料・簡易トイレ・衛生用品・毛布・電源用用品などを、人数に応じて準備しておくことが欠かせません。
一方で、備蓄品は十分な量を用意したうえで、災害時にすぐ取り出せることも重要です。本記事では、オフィスで備えるべき防災備蓄品のリストと必要量の目安に加え、平時は通常業務に使いながら、災害時には待機・休憩・情報共有の場へ転用できるオフィスづくりの考え方を解説します。

目次
  1. なぜ今オフィスの防災対策が必要なのか?
    • 企業に求められる安全配慮義務と関連法令
    • 帰宅困難者対策と「72時間・3日分」の考え方
    • 防災対策とBCP(事業継続計画)の関係
  2. オフィスで想定すべき3つの災害リスク
    • 1.火災
    • 2.地震
    • 3.水害
  3. オフィスで備えるべき防災対策の全体像
    • 1.命を守る:什器固定・避難経路・初動対応
    • 2.留まる:水・食料・トイレ・衛生・電源の備蓄
    • 3.事業を続ける:安否確認と情報共有
    • 4.3つの段階をつなぐ防災マニュアル
  4. オフィス防災の備蓄品リストと必要量の目安
    • 従業員1人あたり・3日分の目安
    • 保管場所の考え方:分散保管と「使う場所の近く」
  5. 「備蓄するだけ」で終わらせないための運用
    • ローリングストックと管理の仕組み化
    • 平時に使えて有事に効く“兼用”の発想
  6. 防災を「オフィス設計」として進めるという選択肢
    • 空間・ICT・運用を一体で考えるメリット
    • 拠点間の情報共有をどう確保するか
    • ビル管理システムによる中央監視で、建物の状態を把握しやすくする
  7. まとめ

なぜ今オフィスの防災対策が必要なのか?

企業に求められる安全配慮義務と関連法令

企業には、従業員が安全に働ける環境を整える責任があります。労働契約法第5条では、使用者は労働者が生命や身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をするものとされています。災害時の防災備蓄そのものが、すべての企業に一律で罰則付きの義務として課されているわけではありませんが、従業員を安全に待機させる環境整備や、避難・初動対応の準備、備蓄品の確保は、安全配慮義務の観点からも重要です。
参考:厚生労働省「労働契約法について」

また、自治体によっては帰宅困難者対策を推進する条例やガイドラインが整備されています。東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」が制定されており、大規模災害時に多くの人が一斉に帰宅することで混乱や事故が発生することを防ぐため、一斉帰宅の抑制や一時滞在施設の確保などを推進しています。
参考:東京都防災ホームページ「東京都帰宅困難者対策条例」

オフィスの防災対策は、単なる福利厚生ではなく、従業員の生命・身体の安全確保、企業としての社会的責任、事業継続の土台となる取り組みです。

帰宅困難者対策と「72時間・3日分」の考え方

大規模災害が発生すると、鉄道やバスなどの公共交通機関が停止し、従業員が自宅へ帰れなくなる可能性があります。一斉帰宅を抑制し、施設の安全を確認したうえで従業員を一定期間オフィス内に待機させるためには、飲料水、食料、簡易トイレ、毛布、衛生用品などの備えが欠かせません。

備蓄量の目安としてよく用いられるのが「3日分」です。これは災害発生直後の混乱期を乗り切るための考え方であり、従業員1人あたり水9リットル、食料9食、毛布1枚程度を目安に、来訪者や出社率、夜間・休日の在館者も考慮して数量を設定します。

防災対策とBCP(事業継続計画)の関係

オフィス防災は、従業員の命を守るためだけでなく、事業を継続するためにも欠かせません。BCPは、自然災害や大火災、感染症、システム障害などの緊急事態において、損害を最小限に抑えながら中核事業を継続・早期復旧するための計画です。

災害時に従業員が安全に待機できなければ、復旧対応や顧客対応、拠点間連携を行うことは困難です。防災備蓄、避難経路、ICT環境、連絡体制、代替拠点の利用ルールは、BCPを実効性のあるものにする前提条件といえます。

オフィスで想定すべき3つの災害リスク

オフィスの防災対策は、災害の種類によって必要な備えが変わります。特に企業が想定しておきたい火災、地震、水害の3つのリスクについて解説します。

1)火災

火災では、炎による焼損だけでなく煙にも注意が必要です。煙が充満すると視界が悪化し、一酸化炭素を吸い込むことで避難そのものが困難になります。

オフィスでの主な出火原因は、電気機器の過熱や配線の劣化、たこ足配線などです。消火器や火災報知設備の定期点検に加え、レイアウト変更のたびに避難経路と消防設備の周辺がふさがれていないかを確認しましょう。消火器や火災報知設備の定期点検に加え、レイアウト変更のたびに避難経路と消防設備の周辺がふさがれていないかを確認しましょう。

2)地震

地震では、キャビネットや書棚の転倒、モニターや上置き物の落下により、従業員の負傷や避難経路の遮断が起こります。大きな揺れでは建物や設備が損壊するおそれもあります。

さらに、公共交通機関の停止によって従業員が帰宅できなくなり、オフィス内での待機が長時間に及ぶ可能性があります。什器の固定と備蓄の両方が求められるのは、この2段階の影響があるためです。発生を予測できない災害であるため、日頃からの固定と避難経路の周知が欠かせません。

3)水害

台風や集中豪雨による水害では、浸水によって設備が故障し、重要書類やデータを失うおそれがあります。特に低層階や地下に電源設備、サーバー、書庫を置いている場合は被害が大きくなりやすい災害です。

一方で、地震と異なり事前にある程度の予測ができる災害でもあります。 ハザードマップで浸水想定区域と想定浸水深を確認し、サーバーや重要書類を想定より上の階へ移す、データをクラウドや遠隔地にバックアップする、建物の上階へ移動する垂直避難の手順を決めておくといった準備が有効です。

オフィスで備えるべき防災対策の全体像

1)命を守る:什器固定・避難経路・初動対応

災害発生直後に最優先すべきなのは、従業員の命を守ることです。まず確認したいのは、キャビネットや書棚、複合機、モニター、パーティションなどの転倒・落下防止対策です。大きな地震では、固定されていない什器が転倒し、避難経路をふさいだり、けがの原因になったりする可能性があります。

避難経路や非常口の前に荷物や備品を置かないことも重要です。消火器、火災報知設備、非常用照明の周辺は常に使える状態に保ち、地震発生直後に誰が安全確認を行うのか、負傷者が出た場合に誰が救護を担当するのかをあらかじめ決めておきましょう。

2)留まる:水・食料・トイレ・衛生・電源の備蓄

公共交通機関が止まり、従業員がオフィス内に待機する場合には、水、食料、トイレ、衛生用品、保温用品、電源などが必要になります。特に見落とされやすいのがトイレです。断水や停電により水洗トイレが使えなくなると、衛生環境の悪化や体調不良につながります。

飲料水や非常食だけでなく、簡易トイレ、トイレットペーパー、ウェットティッシュ、マスク、生理用品、救急用品、毛布・保温シート、モバイルバッテリー、懐中電灯、乾電池なども含めて備えましょう。

3)事業を続ける:安否確認と情報共有

災害発生直後から必要になるのが従業員の安否確認です。電話はつながりにくくなるため、安否確認システム、社内チャット、災害用伝言板など複数の手段を用意し、優先順位を決めておきましょう。ハイブリッドワークが定着した現在は、在宅勤務者や外出中の担当者まで含めた確認が必要です。 安否確認の他にも、建物・設備の被害状況、顧客対応の優先順位、物流やサプライチェーンの状況など、多くの情報を迅速に集約しなければなりません。特に本社・支社・営業所・工場など複数拠点を持つ企業では、拠点ごとの状況をリアルタイムに共有できるかどうかが、事業継続の成否を左右します。

そのため、会議室や災害対策本部として使うスペースには、平時からICT機器を整備しておくことが重要です。具体的な整備の考え方は後半で解説します。

4)3つの段階をつなぐ防災マニュアル

命を守る、留まる、事業を続けるという3段階が機能するためには、誰が何をするかが決まっている必要があります。防災マニュアルには、初動対応の手順、避難誘導と救護の役割、安否確認の報告経路、備蓄品を配布する判断基準、災害対策本部の設置場所を記載しましょう。

注意したいのは、担当者が不在の時間帯に災害が起きる場合です。夜間や休日でも、その場に居合わせた従業員だけで初動が取れるよう、担当者名ではなく役割で記述し、代行順位まで決めておきます。レイアウト変更や移転があれば避難経路や役割も変わるため、あわせて更新しましょう。

オフィス防災の備蓄品リストと必要量の目安

従業員1人あたり・3日分の目安

オフィスで備蓄すべき基本品目は、従業員数をもとに計算します。3日分を基準にする場合、目安は次の通りです。
分類 1人あたりの目安 備考
飲料水 1日3L × 3日 = 9L ペットボトルや長期保存水
食料 1日3食 × 3日 = 9食 調理不要、または水・お湯で食べられるもの
毛布・保温用品 1枚程度 毛布 アルミブランケットなど
簡易トイレ 1日数回分 × 3日 断水や停電を想定
衛生用品 必要数 マスク、ウェットティッシュ、生理用品など
救急用品 拠点単位で準備 消毒液、包帯、絆創膏、常備薬など
情報・電源用品 拠点単位で準備 ラジオ、懐中電灯、乾電池、モバイルバッテリーなど
実務上は、従業員数だけでなく、来訪者、外部協力会社、出社率、テレワーク比率、フロアごとの人数、夜間・休日の在館者なども考慮しましょう。会議やイベントの来訪者が多いオフィスでは、従業員数に一定の予備分を上乗せして備えることも検討が必要です。

保管場所の考え方:分散保管と「使う場所の近く」

備蓄品は「量」だけでなく「置き方」が重要です。

災害時の人事・総務部門は、安否確認や被害状況の把握、対策本部運営などの対応に追われます。備蓄品を「配る運用」を前提にするのではなく、従業員が必要なものを自ら取り出せる配置にしておくことが、初動対応の負荷軽減にもつながります。

例えば、簡易トイレや衛生用品はトイレ付近や各フロアの共用部に、救急用品は受付・総務エリア・会議室近くに、毛布や保温シートは休憩スペースや多目的スペースに配置すると、必要なときに取り出しやすくなります。備蓄を1か所に集中させすぎると、その場所が損傷した場合や、エレベーター停止時にアクセスできなくなるリスクがあるため、フロア別、部署別、エリア別に分散保管しましょう。

ここで有効なのが、防災備蓄を最初からレイアウトに組み込む考え方です。後から空いた場所に押し込むのではなく、執務エリア、会議室、リフレッシュスペース、収納、動線を設計する段階で「ここに何人分の備蓄を置くか」「誰が取り出すか」「避難経路をふさがないか」を検討します。

たとえば、
  • 会議室の収納・AVラック内に災害対策本部用セットを置く
  • リフレッシュスペースの収納棚に水・非常食を分散配置する
  • 収納付きのソファを執務室や共用部に用意し、救助や脱出に必要な備品を保管する
  • 個人用デスクの足元に備蓄用ボックスを配置する
などが考えられます。

関連リンク:防災家具 ひのき柾目シリーズ(カタログ)



関連リンク:防災備蓄ボックス そなえさん ®

「備蓄するだけ」で終わらせないための運用

ローリングストックと管理の仕組み化

防災備蓄は、購入した時点で終わりではありません。水や食料には賞味期限があり、乾電池やモバイルバッテリーにも劣化があります。救急用品や衛生用品も、時間が経つと不足や期限切れが起こりやすくなります。

備蓄品は管理台帳を作成し、品目、数量、保管場所、期限、担当者、点検日を管理しましょう。食品や飲料については、賞味期限が近づいたものを社内イベントや防災訓練で配布・消費し、その分を新しく補充するローリングストックの考え方も有効です。

平時に使えて有事に効く“兼用”の発想

防災対策は、専用の倉庫や専用室を作らなければできないわけではありません。限られたオフィス面積の中では、平時に使っている空間を有事に転用できるように設計することが現実的です。

例えば、会議室は平時には打ち合わせやオンライン会議に使い、災害時には災害対策本部、救護室、従業員の待機場所として活用できます。リフレッシュスペースは、帰宅困難者の休憩場所や食料配布場所として使えます。集中ブースやワークブースは、短時間の仮眠や体調不良者の一時休憩スペースとして活用できる場合があります。

関連リンク:ワークブース / Web会議、ソロワーク用個室ブース

オフィス家具の選定にも防災の視点を取り入れることができます。キャスター付きのテーブルやチェア、可動式の収納、移動しやすいパーティションを採用していれば、災害時にレイアウトを素早く変え、帰宅困難者が横になれるスペースや、救護・休憩スペースを確保しやすくなります。ただし、キャスター付き家具は地震時に動くリスクもあるため、通常時の固定方法やストッパーの運用もセットで考えることが大切です。

防災を「オフィス設計」として進めるという選択肢

空間・ICT・運用を一体で考えるメリット

オフィス防災で起こりがちな課題は、「備蓄品は総務」「通信は情シス」「レイアウトはファシリティ」「BCPは経営企画」と担当が分かれ、全体最適になりにくいことです。その結果、備蓄品はあるのに取り出しにくい、会議室はあるのに災害対策本部として使えない、Web会議設備はあるのに非常時の運用ルールがない、といった状態が生まれます。

防災をオフィス設計として捉えると、備蓄品をどこに置けば誰でもすぐ取り出せるか、会議室を災害対策本部として使えるICT環境があるか、帰宅困難者が休めるスペースをどう確保するか、停電時の電源確保や通信手段はどうするかまで、一体で検討できます。

拠点間の情報共有をどう確保するか

災害時に事業を継続するには、正確な情報を素早く集め、関係者と共有する必要があります。多拠点企業では、本社が被災した場合に支社が代替対応を行う、ある拠点の被害状況を別拠点が把握する、顧客対応を複数拠点で分担するなど、拠点間連携が欠かせません。

そのためには、平時から会議室やプロジェクトルームにICT機器を整備し、日常業務の中で使い慣れておくことが重要です。災害時だけ使う特別なシステムは、いざというときに操作できない可能性があります。平時のオンライン会議、ハイブリッド会議、拠点間ミーティング、情報共有に使っている環境を、有事にもそのまま活用できる状態にしておくことが理想です。

電子ボードや大型ディスプレイを使えば、被害状況、拠点別の安否確認、対応タスク、地図、写真、現地映像などを共有しながら意思決定できます。Web会議システムやマイク・カメラを整備しておけば、本社・支社・在宅勤務者・外部パートナーをつないで状況確認ができます。
関連リンク:オフィスのICT設計・デザイン

ビル管理システムによる中央監視で、建物の状態を把握しやすくする

防災をオフィス設計として考えるなら、執務エリアや会議室だけでなく、建物設備の状態をどう把握するかも重要です。災害時には、空調・照明・電力・水・ガス・入退室・監視カメラなどの状況を個別に確認していると、初動判断が遅れる可能性があります。ビル管理システムで建物設備を中央監視できる環境を整えておけば、どの設備が稼働しているか、異常警報が出ていないか、エネルギー使用や環境情報に変化がないかを把握しやすくなります。

災害時の観点では、中央監視は「建物に留まれるか」「どのエリアを待機場所にできるか」「復旧対応の優先順位をどうつけるか」を判断する材料になります。例えば、照明や空調の状態、電力・水・ガスなどのエネルギー利用状況、センサーによる温度・湿度・照度・CO2などの環境情報、監視カメラや入退室管理の情報を確認できれば、帰宅困難者の待機スペース運用や、設備トラブルの早期把握、管理者の遠隔対応に役立ちます。
中央監視で確認したい情報 防災・BCPでの活用例
空調・照明の稼働状況 待機スペースとして使えるエリアの選定、復旧対応の優先順位づけ
電力・水・ガスなどのエネルギー利用状況 ライフラインや設備異常の把握、必要な節電・節水運用の判断
温度・湿度・照度・CO2などの環境情報 長時間待機時の体調管理、換気や空調運用の判断
監視カメラ・入退室管理 建物内の安全確認、立入制限、遠隔地からの状況把握
会議室にICT機器を整えることが「人と情報をつなぐ備え」だとすれば、中央監視は「建物の状態を見える化する備え」です。防災備蓄をレイアウトに組み込むだけでなく、建物設備の監視・制御まで含めて検討することで、平時の快適性や省エネルギーと、有事の安心安全・事業継続を両立しやすくなります。
関連リンク:ビルや建物のスマート化・DX化なら【Smart Building Integration】

まとめ

オフィスの防災対策は、備蓄品を購入して終わりではありません。従業員の命を守り、帰宅困難者を安全に待機させ、災害時にも事業を継続するためには、備蓄、レイアウト、家具、会議室、ICT、運用ルールを一体で考えることが重要です。

まずは、1人あたり3日分の水・食料・トイレ・衛生用品などを目安に備蓄量を確認しましょう。そのうえで、備蓄品を「いつでも取り出せる場所」に配置し、フロアやエリアごとに分散保管することが大切です。

さらに、会議室を災害対策本部として使えるようにICT環境を整備したり、キャスター付き家具で休憩スペースをつくりやすくしたり、ワークブースを一時的な仮眠・休憩場所として活用したりすることで、平時にも有事にも役立つオフィスになります。防災は、特別な日のためだけの取り組みではありません。日々使うオフィスの中に、自然に備えを組み込むこと。これが、これからのオフィス防災に求められる考え方です。

災害に配慮したオフィスづくりについてご検討の際には、ぜひ内田洋行にご相談ください。
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[2026.9.1公開]

著者
著者オフィス分野 コラム編集チーム
内田洋行オフィス分野のコラム編集チームです。オフィス空間づくりやオフィスデザイン、働き方に関するお役立ち情報やトレンド情報をお客さまにご紹介します。
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