第3回:同質性から多様性へのパラダイムシフト② 多様な働き方とイノベーション - 白河桃子の働き方改革コラム -

人事管理 メンバーシップ型雇用 ジョブ型雇用

コロナ禍になってから、すでに1年超。コロナで私たちの生活は大きく影響を受け、特に働き方に関しては2020年「パラダイムシフト」が起きました。これから私たちの「働き方」はどのように変わっていくのでしょうか?白河桃子氏による連載コラム「働き方のパラダイムシフト(全6回)」では、ビジネスパーソンの方へ、未来志向でこのパラダイムシフトをチャンスとして生かすための Tips をご紹介いたします。

働き方が変わると、困るのは「人事管理の問題」です。働き方も多様になり、人材も多様になり、今までの人事管理制度ではうまくいかなくなります。

そこで最近よく耳にするのが「ジョブ型」雇用です。テレワークになったから、成果で評価したい。そのためには「ジョブ型」(職務が細かく決まっていて成果が測りやすいから)ということで、ジョブ型がバズワードのようになってきています。

成果での評価も、テレワークでの人事管理も、「ジョブ型」なら全て解決というような論調もありますが、ちょっとまってと言いたいですね。働き方の柔軟化=ジョブ型という単純な話ではないので、まずは「ジョブ型」の見直しから入りましょう。

まずはジョブ型という言葉の誤解について。

欧米の「ジョブ型」雇用に対して、日本は「メンバーシップ型雇用」と定義したのは濱口桂一郎氏です。様々な研究者がジョブ型とメンバーシップ型の違いについて言及していますが、私なりにはこのような解釈です。

メンバーシップ型:
職務(ポスト)のない雇用契約、無限定雇用、企業が採用し、人事権も賃金を決めるのも企業。辞令一つで全国に異動する。長期雇用(終身雇用)、年功賃金、企業別組合制度。新卒一括採用で、一律に「管理職人材」として競争する。

ジョブ型:
職務(ポスト)に対して、契約して雇われる。仕事の内容や賃金は職務によって決まる。職務給。ポストの数は決まっていて、そのポストに賃金がついている。賃金を上げたければより値段の高いポストに転職する。ポストがなくなると失職する。

日本には新卒一括採用があります。何の仕事ができるかわからない人材をとり、育成していく。これは若年失業者が増えない良い仕組みです。しかし15年後、どんなポストが必要になるか、その適切な数はいくつかも分かりません。

メンバーシップ雇用で同期入社した人たちが年次を重ねてくると、ある程度年収も高くなり、それなりのポストが必要です。ポストの数が足りない場合は「〇〇代理」など部下なしの役職を用意して処遇します。部下ありのポストは経営計画に基づくものなので急には増えません。

一方、ジョブ型の採用はポストごとです。そのポストにふさわしい人を、ふさわしい給与で採用します。海老原嗣生さんによればジョブ型は「ポスト型」とも言えます。ポストの数しか席はなく、その席に報酬が紐づいています。

一番の違いは会社との関係です。メンバーシップ型の場合、会社が人事権を持っており、転勤や異動を自由にアサインできます。しかしジョブ型の場合は「A国、またはA県において〇〇の仕事をする」という契約をするので、ある意味、会社との関係は対等です。会社は勝手にその人を異動させられません。

海老原嗣生さんは「ジョブ型とはポスト別採用であり、そこから動かせない(=人事権の弱体化)」と言っています。人事権を手放すつもりのない日本企業に本当のジョブ型は難しいということです。(「働かないおじさんが御社をダメにする」(白河桃子 PHP新書)より)

日本のジョブ型は「給与が高いがポストがないミドル人材」の給与を下げる目的で「なんちゃって運用」されているように思います。本当のジョブ型になれば、新卒採用や転勤解雇のあり方まで再構築しなければいけません。

しかし長期で見れば「終身雇用」「年功序列」「転勤させ放題」のような雇用は難しいとどこの企業も思っているでしょう。働き方や雇用の多様化が進むにつれ、いずれは「メンバーシップ型」から「ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッド」に進んでいくのではないかというのが、私の見解です。

海老原嗣生氏も、提言は「ハイブリッド型」でした。つまり両者のいいとこ取りです。若手は一括採用で育成し、ある程度の時期までは年功序列の「職能給」で毎年少しずつ給与も上がる。経験を積んでから、自らキャリアを選択しジョブ型の「職務給」に移行するというものです。そうなれば、「生産性<賃金」で、ポストがないのにやたら給与が高いミドルシニアはいなくなります。自分の専門性を磨けるので、この企業では自分を生かせないと思えば、早めに転職することもできます。その分岐点は35歳とも40歳とも言われています。一つの企業にずっと働いてきて、50代になってから研修をして、「外でも通用する自らのキャリアを構築せよ」と言われても遅すぎます。早めに備えができる制度にするほうが、会社にとっても個人にとっても良い結果になるのではないでしょうか?

一方企業は育った人材に逃げられないよう、魅力的な企業かどうかを問われることになります。「せっかく育てた人材が流出する」ことを恐れるのではなく、雇用流動性が高くなり、良い人材が自社に回ってくるというポジティブなメリットを享受できる企業になれば良いのです。

テレワークの先にある未来は、ジョブとメンバーシップのハイブリッドな人事管理制度になるのではと予測しています。今からできることは、評価、報酬体系の見直し、転勤制度の見直し、そして人材育成の見直しです。人事の世界の変化が遅いと、企業は遅れをとってしまいます。コロナをきっかけに、戦略的な人事が注目されています。

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