コロナ禍になってから、すでに1年超。コロナで私たちの生活は大きく影響を受け、特に働き方に関しては2020年「パラダイムシフト」が起きました。これから私たちの「働き方」はどのように変わっていくのでしょうか?白河桃子氏による連載コラム「働き方のパラダイムシフト(全6回)」では、ビジネスパーソンの方へ、未来志向でこのパラダイムシフトをチャンスとして生かすための Tips をご紹介いたします。
働き方改革は手段でしかありません。働き方を変えることで何が起きるのか?先にあるものの第一番目は「同質性」から「多様性」へのシフトです。
人口ボーナス期(人口構成が経済にプラスに働く時期)である高度成長期から1990年代半ばまでは、同質性が企業の武器でした。同じ時間に同じ場所でできるだけ長時間働いてくれる人が大量にものを生産する。大量に売れる。それが企業の勝ちパターンです。しかし人口オーナス期(人口構成が国の重荷になる。生産人口は少なく、従属人口(日本では高齢者)が多い)には、大量生産のものはすでに行き渡り、より付加価値のあるサービスや商品が売れます。そのような競争力のある商品や今までの価値を壊すようなビジネスが生まれるためにイノベーションが必要。そこには多様性が不可欠なのです。
例えば最近テレビを買うと、Netflix、Hulu、YouTubeなどのボタンがリモコンについています。これはテレビの機能がテレビ番組を見るものから変化していることへの対応ですよね。
人口ボーナス期はテレビを作る人は「より良い映像」が見られるテレビを考えればよかった。テレビの技術者である同質性の高い人だけでよかった。
しかし今はどうでしょう。より美しい映像のテレビが出たら売れるでしょうか?
例えば学生はテレビを持っていない人が多く、若い世代特に2005年以降のYouTubeが当たり前の世代にとっては、動画とはテレビよりYouTubeです。しかし彼らがテレビ番組を見ないわけではない。スマホで見逃し配信を見ています。また小さな子供がいるテレビ局の女性がため息をついて「テレビ番組って滅びますよね」と言っていました。自分の子供はYouTubeしか見ないからです。そういえば私もfire Stickをつけてから、テレビで見るのはテレビ番組ではなくNetflixやHuluの動画配信ばかりです。それならテレビをつけたらすぐにYouTubeが映るようにしたら良いのに・・・と思っていたら、やっとテレビのリモコンにYouTubeのボタンがつきました。
テレビをよく知っている人だけでなく、テレビ番組をスマホで見る世代や、子育て中の女性の「視点の多様性」が入ることで、テレビの「当たり前」を変えることができるのです。「当たり前」は経営学の言葉で「経路依存性」と言います。過去の成功体験が大きいほど、人はそこから抜け出せない。だからこそ、変化が遅れてしまいます。
そして次はテレビ局も変わる時期でしょう。テレビ局に勤務する友人に、「テレビのリモコンになぜ自社の番組配信アプリのボタンをつけないのか」と聞いたところ「もちろん話はあったのですが、その時は、地上波は絶対で、配信アプリはサブという上層部の意識が変わらなくて・・・今から考えると乗っておけばよかった」と言われました。
テレビを作るメーカーは変化しようとしているのに、今度はテレビ局の方が変わらない。日本のテレビ局のビジネスモデルは変化が遅いのです。
テレビ局の上層部の同質性の高さは、一般企業よりも顕著です。先日の民放労連の調査で「全国の民放テレビ局127社の女性割合を調査した結果を発表した。女性役員がいない民放テレビ局は127社中91社(全体の71・7%)、役員の女性割合は全体で2・2%だった」ことが分かりました。役員はプロパー出身者が多く、女性の割合は少なく、多様性という意味ではかなり遅れているのです。だからこそ、日本のテレビ局には良いコンテンツを作る力があるのに、Netflixのようなビジネスモデルが日本には生まれなかったのでしょう。
このように「同質性」から「多様性」のシフトを必要とする時期には、「多様な人材」が企業で力を発揮できるよう「柔軟で多様な働き方」を進めなければ「多様性は絵に描いた餅」です。コロナで大企業が「副業」を解禁したり、地方の人材が東京の企業とオンラインでコラボしたり、転勤そのものが無くなったり。転職を志向する人も増えました。働き方の多様性はコロナで加速しました。
子育てや介護中の人たちも活躍の幅が広がります。ある営業職女性は、「育休が終わって復帰したら、世界中がオンラインになっていて、今までアクセスできなかった遠方の顧客にも自宅からアクセスできる。オンラインなら育児中でも前よりも成果が出せるようになった」と新しい働き方を歓迎していました。
多様性とは「専門性x視点の多様性」です。同じように入社し、同じような働き方をして、同じように昇進してきた人たちでは、視点の多様性が足りません。働き方がドラスティックに変わることは「当たり前」を壊し、イノベーションを創出するための、ある種のショック療法でもあるのです。
[2021.06.22公開]
内田洋行では、働き方改革を目的としたオフィスデザインのコンサルティングを行っています。数多くの実績を通して蓄積してきた私たちのノウハウを、御社でもぜひご活用ください。
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