第26回:「英語警察」とどう付き合うか【澤円の連載コラム】

【澤円の連載コラム】働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~
英語コミュニケーション 自分の世界を広げる もう少し英語をがんばってみる

いま、働き方が再定義されようとしています。テレワークから出社回帰、働く場も多様化し人とのかかわり方も変わっていくなか、自分らしく、よりハッピーに働くにはどうしたら良いのでしょうか?連載コラム「働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~」では、株式会社圓窓 代表取締役 澤円(さわ まどか)さんと一緒に「はたらく」について考えていきます。

こんにちは、澤です。
前回に引き続き、今回も英語のお話です。

前の記事で、こんなことを書きました。
「ボクの英語力について指摘をした海外の同僚はいませんでしたが、いちいちケチをつける日本人はいました。」
結構強い表現ですよねw
いまだに記憶にしっかり残っているんだなとあらためて思いました。
だって腹立ったもん(笑)
まぁ、その人の英語は確かに達者でしたし、スムーズにコミュニケーションができている分、業務にボトルネックが少なかったことは間違いないですね。
ただし、間違いなく言えるのは「ボクのやる気を削いでも仕事はうまく回らない」ってことなのであります。
でもその人たちにとって大事なのは、ボクの英語をからかうことであって、仕事を進めることではない。
なぜなら、その人たちにとって大事なことは間違った英語を取り締まる「英語警察」であることなのですから。
ここで英語警察の定義を。
「頼まれてもいないのに、話している人の英語を評定しにくる人」のことを英語警察と呼ぶことにします。

もちろん、英語の不備を指摘することが大事な場面も多々あります。
その人たちの指摘によって、不要な誤解が生まれることを避けたり、間違った指示によるエラーを防いだりすることができるからです。
この場合、その人たちは仕事の当事者としてふるまってくれています。
やっていることは取り締まりではなく、仕事を前に進めるためのパートナーとしてふるまっているわけですから。
この記事における英語警察は、「その人を貶めること」「相対的に自分を高めること」を目的に、英語の取り締まりをしようとしてきます。
それも、悪徳警官さながらに、ねちねちとこちらを削ってきたりして。
実に嫌ですねぇ(笑)

さて、そんな英語警察のせいで、英語を話すことを恐れている人もいるかもしれません。
圧倒的な英語力を持つ人の前で、つたない英語で話すのはボクもとても抵抗を感じます。
前職のマイクロソフト時代にはそのような場面がちょくちょくあって、めちゃくちゃ悲しい気分になりました。
話せないのもしんどいのですが、聞き取れないのもしんどい。
いわゆる「ついていけない」という状態になってしまうのが、大変なストレスでした。
そういう時、英語警察をうまく取り込むのは、ビジネスパーソンとしては実に効果的な生存戦略かもしれません。
ここからは、あなた自身がその会議室にいる場面を想像しながら読んでみてください。
相手が何を言ってるかわからない状態の時に、通訳をお願いするのはちょっと気が引けるかもしれません。
ただ、そこであなたの方から「相手がこんなことを言っているんだとしたら、こうやって返してもらってもいい?わたしの責任にしていいから」ってバトンを渡すのは、ちょっとしたテクニックではないかなと思います。
英語警察の方々も、自分を頼りにされると喜んだりするものです。
なので、うまいこと利用するのも一つのアプローチかなと思います。

ちなみに、英語堪能な人たちも苦労をされていることがあるようです。
ボクの元同僚は、小学校中学年くらいまでアメリカで過ごし、バイリンガル完全体として日本に帰国しました。
小学校で英語教育が本格化したタイミングだったそうで、授業中に英語で発言する機会があったとか。
その時の英語発音が教員よりも圧倒的によかったため、教員が猛烈な劣等感を抱き、その人を徹底的に目の敵にしたそうです。
この話を聞いて、日本において一芸に秀でるのもなかなか大変だよなぁと思いました。
実際、帰国子女の人たちの中には、自分のアイデンティティをどこに置けばいいのかわからなくなっている人もいるようです。
結果的に英語警察になった人にも、それぞれの物語があるのかもしれません。

さて、ここでちょっと角度を変えた話を。
2023年のこども家庭庁の調査によると、日本の若者は他国に比べて「自分への満足度」が低いことが分かっています。
参考:こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」

その一方で、「自分は役に立たないと強く感じる」に肯定した人が日本は46.1%で、この値は米国65.4%、フランス55.3%、スウェーデン53.7%より低く、ドイツの53.3%も下回ります。
つまり、国際的比較において「自分には満足してないけれど、役に立たないとも思っていない」という傾向が読み取れます。
1つのレポートですべてを語るのは無理があるのは重々承知してはいるのですが、このデータは実に興味深いなと思うのです。
自分に満足していないのは、期待値が高いことの裏返しとも受け取れます。
そして、役立たずとまで自己批判はしていないということで、「自分は誰かのために何かができる」と思ってる人の割合が高いわけですよね。
きっと、英語についても「もっと話せたらいいのにな」とは思っていて、その奥には「話せたら誰かの役に立てるのにな」があるんじゃないでしょうか。
だとしたら、英語警察に取り締まられて口を閉じるのは、ずいぶんもったいない話です。
取り締まりからは、誰も何も得ません。取り締まられた側は黙り、取り締まった側の英語も1ミリも上達しないのですから。

さて、英語警察との付き合い方は、大きく二つあるとボクは思っています。
ひとつは、さっき書いたように、うまく取り込んでしまうこと。
もうひとつは、その数を減らすことです。
この記事を読んでいるあなたが、誰かのつたない英語に出くわす日がいずれ来ます。
その時、「今のはこういうこと?」と聞き返せる人がその場にいるかどうかで、話の続きが変わります。
第二十四回で、インシデントが起きた時の第一声を「なんで?」ではなく「何があった?」にしましょう、と書きました。
英語の場でも、たぶん同じですね。
第一声を「今のはこういうこと?」にするだけで、その場から英語警察がひとり減ります。
英語を学ぶのは、自分の世界を広げるためです。
そしてたぶん、誰かの世界を狭めないためでもあるんですよね。
ボクと一緒に、つたない英語で話し続けてみるのはいかがでしょう。

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[2026.10.13公開]

澤 円(さわ まどか) 氏
著者澤 円(さわ まどか)氏
株式会社圓窓 代表取締役
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 専任教員(教授)
元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長を2020年8月まで務めた。DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやコンサルティングなどを行っている。複数の会社の顧問や大学教員、Voicyパーソナリティなどの肩書を持ち、「複業」のロールモデルとしても情報発信している。また、ファッションや美容、自動車などのインフルエンサーたちとも積極的に共創活動を行っている。

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