テレワークやリモートワークを経験したワーカーへのさまざまなアンケート結果を踏まえて、企業の成長やハイブリッドワーク時代のオフィスに求められる役割について考えてみました。
コロナをきっかけに、自宅でできる仕事は在宅、そうでない場合はオフィスへ出社する、という「ハイブリッドワーク」の形を取り入れる企業が増えています。
これまでになかった新しい働き方であることに変わりはありませんが、ハイブリッドワーク時代では、オフィスに求められる役割も変化しているようです。
国土交通省によると、週1日以上のテレワークを実施している人の割合は、令和3年度で約8割にのぼっています。*1
その形式はさまざまで、在宅が最も多くなっているものの、サテライトオフィスの利用、場所を選ばないモバイル型のテレワーク、あるいはそれらを組み合わせた働き方が出現しています(図1)。
また、今後もテレワークを継続したいという人は9割にのぼっています(図2)。
ただ、上の図を見てみると、継続したい理由、継続意向のない理由はさまざまです。
テレワークによって通勤時間の負担が減ったり、通勤時間を有効活用できるという人は多いものの、仕事に支障が生じているとする人もいます。
また、在宅勤務とオフィス出社には、それぞれの魅力があるようです。
こちらはマイクロソフトが世界の従業員2500人を対象に実施したアンケート調査の結果です。
在宅勤務、オフィス勤務を選択した従業員がその理由について答えた結果は、下のようになっています(図3)。
在宅勤務を選ぶ理由、オフィス勤務を選ぶ理由が明確に分かれていることがわかります。
ワークライフバランス、仕事への集中、通勤時間の削減、といった部分では在宅が好まれるのに対し、同僚とのコラボレーション、社会的な交流、といった部分ではオフィス勤務が好まれるといった具合です。
在宅などテレワークとオフィス両方を利用するハイブリッドワーカーは、それぞれが持つメリットを使い分けながら仕事を進めているようです。
また、業務内容によって在宅とオフィスのどちらが好ましいかも分かれています。
その前提として、従業員の業務を4種類に分け、ワーカーはどのような業務にどのくらいの割合を割いているかを内田洋行が調査したところ、このような結果が得られています。
この調査では、
の4つに分けています。
すると、日々の業務ではソロワークが全体の7割を占めていることがわかりました。*2
そして上記の4種の中で最も発生するのは「2)効率的なソロワーク」で42.3%を占め、「1)探索的なソロワーク」の1.5倍程度発生しているようです。そして残りの3割はグループワークで、探索的業務・効率的業務の割合はほぼ同数でした。
そして注目したいのは、それぞれの業務は、どのような場所でやりやすいかというワーカーの意見です。以下のようになっています(図4)。
特にグループワークでは、「オフィスのほうがやりやすい」と答えている人の割合が多くなっています。
ハイブリッドワークの時代では、グループワークに適したオフィスづくりが求められているとも言えます。
最後に、フレキシブルオフィスを展開しているWeWork Japanの調査を見てみましょう。
まず、ハイブリッドワークにおいて、ワーカーは週に何日程度のオフィス出勤が好ましいと感じているかについては、以下のような結果になっています(図5)。
週に数日間はオフィスが良い、という層が多くなっています。
そして注目したいのが「企業の成長」という面から見たオフィス戦略です。
多くの経営層・人事・総務関係者が、「会社の成長にオフィス戦略が影響を与えると思う」と回答しているのです(図6)。
「従業員に心身共に健康に働いてもらうために重要」という回答が最も多くなっています。
それは、ここまで見てきたように、グループワークを快適にする環境づくりが求められるこということでもあるでしょう。
さて、ハイブリッドワークの継続にあたって、ひとつ注意したいことがあります。
チャットツールを提供しているslackが2022年1月に公表した調査結果では、ハイブリッドワークで注意すべきは「公平な従業員体験」だとしています。経営層の「近接性バイアス」、つまり実際のオフィスで一緒に働く従業員をひいきしてしまうリスクがあることを感じている経営幹部は多く、その割合は増えているのです(図7)。
毎日オフィスに出勤する人からすれば、リモートワーク組を羨ましいと思いがちです。通勤時間もなく、働く場所を選べるという利点が強調されて目に映ることでしょう。そして、こうした不平等感は、オフィス出社のワーカーのモチベーションを下げてしまう可能性が大いにあります。
そのためにslackは、リモートワークの従業員とオフィス勤務の従業員を公平に扱うには、リーダーが自社における効果的なハイブリッドワークの概要をまとめて原則と行動指針として示すことが必要だとしています。
テレワークはもともと「働き方改革」の一環として推進されてきました。今は感染症がその後押しをした形ですが、このような急激な変化のなか、オフィスのあり方について白紙から考え直すのも、今後の企業成長のために必要なことかもしれません。
[2023.01.13公開]
*1) 厚生労働省「令和3年度テレワーク人口実態調査-調査結果-」 p.23
*2) 内田洋行「SUMMARY REPORT 2022 ハイブリッドワーカーにとってのワークプレイス」 p.7