働き方の「ハイブリッド」 メタバースやシェアオフィスの影響は?

バーチャルオフィス フレキシブルオフィス ハイブリッドワーク

新型コロナウイルスをきっかけに、「働き方」が急激に変化しました。 メタバースなどを利用した「バーチャルオフィス」に注目が集まっているほか、シェアオフィスやレンタルオフィスを始めとする「フレキシブルオフィス」の需要も高まっています。 それぞれ、どのような特徴があるのでしょうか。

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IT大手で相次ぐ「メタバース」活用

新型コロナの影響でテレワークやオンライン会議を利用する企業が増えている中、アメリカのIT大手では「メタバース」の技術の実用化が進んでいます。

マイクロソフトが、テレワークについてこのような実験を行っています。

全社員6万1000人をリモートワークに切り替え、その前後で社員のコミュニケーションがどう変化するかを分析したというものです。

すると、
「従業員同士のネットワークが従来メンバーを中心に固定化し、新たな社員と新規の仕事に費やす時間が減少した」
「社内のグループ間における相互関係が希薄になった」
という問題点が明らかになりました。

また、在宅勤務によって、従業員がグループ間の接続に費やしたコラボレーション時間の割合は、パンデミック前と比較して約25%減少したということです。*1

一般的なオンライン会議はパソコンの画面という2次元の世界であり、かつ相手と同じ場所にいるという実感が持てません。そのことがコミュニケーションに支障をきたしている可能性もあります。
その点を解消しようと、米大手IT企業であるマイクロソフトやメタなどが実用化を進めているのが、メタバースを利用したバーチャルオフィスです。

図1 メタバース空間での会議の様子
(出所:マイクロソフト「Mesh for Microsoft Teams が目指す、『メタバース』空間でのより楽しく、よりパーソナルなコラボレーション」)

一般的なオンライン会議と異なり、同じ場所(仮想空間)にメンバーが集まり、3次元空間でのコミュニケーションが取れるしくみです。

上の図は2次元に近く見えますが、専用のヘッドセットを装着することでより3次元空間を感じることができます。そして、「同じ空間に仲間がいる」と感じられることで、チームの一体感を生むのが狙いです。

フレキシブルオフィスの市場規模は右肩上がり

一方で、本社の密を避けるために広く使われるようになったのが「フレキシブルオフィス」です。
以下のような種類があります。

1.レンタルオフィス:月単位などの一定期間、特定拠点の特定個室など決められた場所を占有する形でオフィススペースを貸し出している
2.シェアオフィス:オフィススペースを複数社・複数人で共有して利用する
3.コワーキングスペース:複数社・複数人で共有して利用できるオフィススペースを提供するだけでなく、利用者同士が業種を超えて交流できる場やイベントを積極的に設けている施設

日本能率協会総合研究所(JMAR)の予測によると、これらフレキシブルオフィスの市場は拡大が続く見込みです(図2)。

図2 フレキシブルオフィスの市場規模・予測
(出所:日本能率協会総合研究所「フレキシブルオフィス市場2026年に2,300億円規模に」)

テレワークが継続されても自宅では環境が整わない、家族がいるために仕事をしづらいといった状況はそう簡単に改善できるものではなく、今後ますますフレキシブルオフィスの利用が増えていくと考えられています。

なかでも最近注目されているのが「コワーキングオフィス」です。

フレキシブルオフィスの特徴は他の業種や職種の人と同じ空間で仕事をすることです。
コワーキングオフィスはそれに加え「利用者同士の交流に役立つイベント」を実施しており、異業種交流で利用者に新たな出会いを促す目的があり、新しいビジネスを生み出すきっかけが生まれやすいという点が注目されています。

中にはキッズスペースを備えたコワーキングオフィスもあり、子どもを連れて行けるだけでなく、同じオフィスの利用者同士で子育ての悩みを相談しあえる場所にもなります。求人情報を提供し、マッチングの場にしているというところもあります。 様々な機能を詰め込んでいるのもまた、コワーキングオフィスの特徴です。

ペット同伴もOK?

フレキシブルオフィスの中には、ペットを同伴できるところも誕生しています。
東京都内のあるシェアオフィスでは、予防接種状況などを登録した上で、専用スペースでペットと一緒に仕事ができる場所を備えています。*2

また、別のシェアオフィスでは保護犬がいるフロアを作り、動物と触れ合う場所を設けています。*3 利用者の癒しとなるだけでなく、収益で保護活動を充実させる狙いもあります。

コミュニケーションの場を積極的に提供しよう

いずれも、バーチャルでもリアルでも人と空間を同じにすることで、孤独感を低減できるという点です 。

パーソル総合研究所の調査によると、テレワーカーはこのような孤独感を抱えています(図3)。

図3 テレワーカーの孤独感
(出所:パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」)

そして、テレワークの頻度が高いほど、孤独感が強まる傾向にあります(図4)。

図4 テレワークの頻度と孤独感
(出所:パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」)

また、テレワーカーの中には、「評価」に対する不安が転職意向を高める要素になっています(図5)。

図5 テレワーカーの不安と転職意向
(出所:パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」)

ともすれば、人材を失いかねない状況です。

人は本来、集団生活を営む、コミュニケーションを必要とする生き物であることを考えれば、ひとりで働くテレワークの環境では孤独や不安が膨らむことは想像に難くありません。 ひと頃には「オンライン飲み会」という言葉も出たくらいです。

まだまだ課題もありますが、新型コロナをきっかけに「働き方改革」は一気に進みました。
それぞれにメリットやデメリットはありますが、社内であれ社外であれ、「コミュニケーション」を軸にした職場環境を作っていくことが重要です。


[2022.10.11公開]

*1) 日経ビジネス「在宅勤務とメタバースのいい関係」
*2) *3) NHK「ペットと働く!新ワークスタイル」

著者清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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