すでに今までも述べた通り、遠隔授業を用いたグローバル化の推進や、異なる人材との交流・共同などDEIへの意識が高まる仕掛けが現在の学校には多くあります。もう一つ、「学びの多様化」という概念が近年挙げられています。
「学びの多様化」とは、学習スタイル・進度・方法・環境などを一人ひとりの特性に応じて柔軟に対応させていこうという考え方です。これまでの「一斉授業・画一的なカリキュラム」から脱却し、多様な価値観や個性を尊重する学びへとシフトしてきました。そこには「誰ひとり取り残さない」教育、すなわちインクルーシブ(包括的)な学びという理念が強く根づきつつあります。
その実践の一つが、文部科学省が推進する「学びの多様化学校」です。これは、不登校児童生徒など通常の学校に通うことが難しい生徒や、個別最適な学びを求める生徒に対して、多様な学びの選択肢を提供することを目的としています。ICTを活用したオンライン学習や、地域・社会と連携したプロジェクト型学習、あるいは少人数・柔軟な時間割での学びなど、形式や場所にとらわれない教育スタイルが取り入れられています。
従来の学校でも、現在は保健室や空き教室を教室外の第二の学びの場として配慮の必要な児童生徒のための学びの場を作る学校は増えています。
こうした教育環境で育つα世代は、障がいのある人や文化的背景が異なる人、学習に困難を抱える人などと共に学ぶ経験を重ね、より深い共感力や多様性への理解を育むようになります。
この流れは学校教育にとどまらず、企業社会においても重要なヒントを与えてくれます。多様な働き方や価値観に応えられるインクルーシブな職場環境こそが、α世代の力を最大限に引き出す鍵になるのではないでしょうか。
たとえば、下の写真は大学のラーニングコモンズですが、一人で集中したい時の個別ブース、グループでアイデアを出し合える協働スペース、あるいは多様な人材や学びを見える化するプレゼンテーションやイベント開催の場、さらにはメタバースやバーチャル空間を用いたリモートチームとの連携など、柔軟で選択肢のあるオフィス空間が求められます。まさに、α世代が慣れ親しんだ「学びの多様化」の発想が、これからのオフィス設計の核となってくるのです。

ラーニングコモンズには個人で集中するためのブースやグループでプレゼンテーションやイベントに活用できるステージなど、アクティビティに合わせて場所を選択できる。オフィスでいうところのABWが既にキャンパスに備えられている。
関連リンク:
文教大学東京あだちキャンパス 様(事例紹介)

新3号館は「学生・教員が自由に学びあう場」。自主学習やグループディスカッション、アクティブラーニングの場として、自由に活用できる。
関連リンク:
摂南大学 様(大学のオフィシャルWebサイト)