第12回:「心理的安全性」と「成果主義」は両立するか? 【澤円の連載コラム】

【澤円の連載コラム】働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~
成果を最大化する土壌 今の時代のマネジメント

いま、働き方が再定義されようとしています。テレワークから出社回帰、働く場も多様化し人とのかかわり方も変わっていくなか、自分らしく、よりハッピーに働くにはどうしたら良いのでしょうか?連載コラム「働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~」では、株式会社圓窓 代表取締役 澤円(さわ まどか)さんと一緒に「はたらく」について考えていきます。

こんにちは、澤です。
前回に引き続き、「心理的安全性」をテーマにお届けします。
今回は、「成果主義」と絡めて考えていきましょう。

結論から言いましょう。両立できます。むしろ、両立しなきゃ本物の成果は出ません。
心理的安全性と成果主義。この2つって、ちょっと真逆の価値観に見えるんですよね。

「心理的安全性=何でも許される、ぬるい職場」
「成果主義=冷たくて、ギスギスした競争社会」

そんな風にラベル貼りされがちです。でも、どちらも本質を見誤ってます。
心理的安全性って、決して“甘やかし”の話じゃない。
そして、成果主義って“冷酷な処刑マシーン”でもないんです。

心理的安全性があるチームって、むしろ意見のぶつかり合いが活発だったりします。
「ちょっと違うと思うな」「このやり方って本当に最適?」みたいな、
いわゆる“ツッコミ”が自然に飛び交うんですよね。

なぜなら、「そう言っても大丈夫」と思えてるから。
反論しても嫌われない、自分が否定されるわけじゃない。そう信じられる土壌があるからこそ、率直なやりとりができる。
つまり、心理的安全性とは「衝突を避ける空気」ではなく、「衝突を建設的に扱える空気」なんです。

一方で、成果主義も誤解されがちです。
「結果だけ出せばいい」っていう言葉を聞くと、冷たい印象を受けるかもしれませんが、
本来の成果主義は、「誰がどんな価値を生み出したかを正当に認める」という話なんです。
問題なのは、「特定の人の頑張りは無視されがち」とか、「声が大きい人だけ評価される」とか、
「評価の納得感」がないまま走らされる組織です。
これは極めて不健全な状態です。

実際、Googleの「プロジェクト・アリストテレス」でも、
心理的安全性が高いチームほどパフォーマンスが高いと報告されています。

ここで注目したいのは、心理的安全性が「成果を邪魔する」のではなく、「成果を最大化する土壌になる」という点。
なぜなら、メンバーが安心して失敗できると、挑戦が生まれるからです。
「挑戦」と「成果」。この2つ、切っても切れない関係ですよね。
新しいアイディアを出したり、未知の領域に飛び込んだりするって、そもそもちょっと怖いことです。
失敗したらどうしよう、バカにされたらどうしよう…って不安は、誰にでもある。
ちなみに、失敗を恐れると人はどうするかというと、失敗しようがないラインで力を抑えるようになります。
チームメンバー全員が70-80%の力しか出さないようになってしまうと、大きな成功につながりようもありません。
でもそのとき、「やってみよう」「まず試してみよう」と言えるカルチャーがあれば、人は自然と力を出せるようになります。
失敗しても責められない、むしろ学びの材料として歓迎される空気感があってこそ、大胆なチャレンジが可能になる。
それこそが、成果を押し上げる「土壌」なんですよね。

成果主義って、結果だけを見がちですが、その「結果」が生まれるまでに何をしたか、どう動いたかもちゃんと見ないといけない。
そういう意味で、多くのグローバル企業で取り入れられている「OKR(Objectives and Key Results)」みたいな仕組みは良いですよね。
ちなみにOKRというのは、「目標(O)と、その達成度を測る具体的な成果指標(KR)をセットで設定し、チームや個人の成長と成果を可視化・促進するフレームワーク」です。
ゴールを目指す中で、どんな試行錯誤をしたか――そこに価値がある。
そして、評価される基準を明確にすることによって、「具体的ながんばり方」がイメージできるようにする。
具体的ながんばり方が思い浮かばないままに仕事をするのは、ゴールが明確ではないマラソンを走るようなものですからね。
全力を出そうという気が起きるわけもありません。

フィードバックって、実は「最高の贈り物」なんです。
でも、どんな贈り物も「受け取る側の気持ち」が整っていなければ届きません。
「安心して指摘し合える関係性」があるからこそ、フィードバックは価値を持つ。
心理的安全性は、その前提条件なんですよね。

心理的安全性は成果を下げるどころか、本来の成果主義を支える「インフラ」なんです。
ただの“ぬるま湯”にしちゃいけないけど、
“冷水シャワー地獄”でも誰もついてきません。

安心して働ける。
でも、目指すゴールには厳しくなる。

この両輪があって、はじめて「いいチーム」になる。
これは、ボクの経験上も間違いないです。

成果にこだわるからこそ、心理的安全性が必要。
これが、今の時代のマネジメントのリアルだと思っています。

「意見を言える空気」があるかどうか。
「失敗しても次につながる」と思えるかどうか。

その差が、1年後・3年後・5年後のチームの姿を大きく変える。
そしてそれは、あなた自身の働き方にも直結してくるんです。

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[2025.7.9公開]

澤 円(さわ まどか) 氏
著者澤 円(さわ まどか)氏
株式会社圓窓 代表取締役
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 専任教員(教授)
元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長を2020年8月まで務めた。DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやコンサルティングなどを行っている。複数の会社の顧問や大学教員、Voicyパーソナリティなどの肩書を持ち、「複業」のロールモデルとしても情報発信している。また、ファッションや美容、自動車などのインフルエンサーたちとも積極的に共創活動を行っている。

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