第3回:AIで働き方は変わるの? 【澤円の連載コラム】

【澤円の連載コラム】働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~
生成AI 心強いパートナー

いま、働き方が再定義されようとしています。テレワークから出社回帰、働く場も多様化し人とのかかわり方も変わっていくなか、自分らしく、よりハッピーに働くにはどうしたら良いのでしょうか?連載コラム「働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~」では、株式会社圓窓 代表取締役 澤円(さわ まどか)さんと一緒に「はたらく」について考えていきます。

    本文の中で、「AI」と「生成AI」が混在していますが、こちらは意図的なものです。
    「AI」はコンピュータが知的タスクを行う技術全般を指し、「生成AI」はChatGPTなどに代表される文章や画像、音声や動画を「生成する」ものを指しています。

こんにちは、澤です。

メディアやビジネスの現場で、生成AIが話題にならない日はないですよね。
ボク自身、生成AI活用普及協会の理事を仰せつかっていて、どんどん生成AIを使っていきましょ~~という立場だったりします。
やっぱり便利なんですよ、生成AIは。
今までできなかったことがどんどんクオリティ高くできるようになってるし。

でも、これだけ急に出てきて一気に浸透するようになると、不安に思う人もいるでしょうね。

「自分の情報をどんどん抜き取られるんじゃないか」
「自分の仕事が奪われるんじゃないか」
「人類を滅ぼすロボットが現れるんじゃないか・・・」

最後の一文は、アーノルド・シュワルツェネッガーさんの責任が大半だと勝手に思っているのですが(笑)
でもまぁ、こういう不安を抱くのは無理からぬ話かなと思います。

AIに仕事を奪われそうと危機感を抱くワーカーのイメージ

特に「自分の仕事が奪われるのでは」という不安を持った人は、過去にもいました。
それは、1810年ごろのイギリスの労働者たちです。
第一次産業革命によって、多くの繊維産業は手作業から工場での機械による作業に置き換わりました。
その流れの中で、他の仕事へとうまくシフトできなかった労働者の人たちが「機械に仕事を奪われた」と感じ、「悪いのは機械だ!」という思想のもと、機械や工場を破壊するという行動に出るようになりました。
これがラッダイト運動です。
このように、新しいテクノロジーは仕事を奪う側面があることは、確かに事実ではあります。

では、第四次産業革命とも呼ばれるAIの発達は、人間の仕事を奪うのでしょうか?
AIの方が圧倒的に得意な分野で、かつ今は人力で行っているものがあれば、それは取って代わられるでしょう。
そして、その仕事以外はしたくない!と思っている人は、仕事を奪われるリスクは確かにあります。
でも、第一次産業革命当時と大きく違うことがあります。
それは、情報の多さとアクセスのしやすさです。
第一次産業革命の当時は、世の中で何が起きているのかを知ることは簡単なことではなかったと容易に想像がつきます。
世界で起きていることが自分の生活にどんな影響を与えるのか、知る由もないという状況だったのではないでしょうか。
そんな中で、急に「あなたの仕事はもうないよ」と言われれば、それは驚くしパニックになるし怒りを感じることでしょう。
しかし、2024年の今、我々はさまざまな情報にアクセスが可能です。
今、生成AIにどんな種類があり、それぞれどんな得意分野があり、どんなことができてどんなふうに自分を助けてくれるのか。 知ろうと思えばいくらでも調べられるのです。
それをやるかやらないかは、スキルでも経験でもなんでもなくて、意思の問題だと思います。
AIの発達に不安を感じるなら、まずは調べる。
COVID-19(=新型コロナウイルス感染症)は、初期段階では世界の誰もが答えを持っていませんでした。
なぜなら、ウイルスは目的を持って人為的に生み出された物ではないからです。
(陰謀論はここでは無視させていただきます)

しかし、AIは違います。
特に、昨今の生成AIの開発は、明らかな開発者の意図があり、相当な情報がオープンになっています。
また、アプリケーションを入れることによって、自分も簡単に参加者側に回ることができるのです。
調べ物をしてもらったり、要約してもらったり、アイディアを出してもらったりするには、生成AIはめちゃくちゃ心強いパートナーです。
それも、何回同じことを聞いても嫌な顔ひとつせず、「そろそろ自分でやってください」なんて冷たい態度をとることもなく、ずっと健気に働いてくれます。
こんな素敵なパートナー、すぐにでも仲良くなった方がいいに決まってます。

AIと仲良く働くワーカーのイメージ

新しいものを拒否する姿を見るのは、ボクが社会人になってから何度となくありました。
まずはパソコン。一人一台体制と言われる流れになったのは、日本では1990年台の初め頃です。
1992年、日本で「コンパック・ショック」と呼ばれる、パソコンの急激な低価格化が起きたことで、企業内でのパソコン導入率が高まりました。
その時には、「パソコンなんておもちゃだ」「こんなのはオタクの使うものだ」と平気で口にするビジネスパーソンがたくさんいました。
また、携帯電話が普及し始めた時にも「そんなもの持ち歩いたら、会社からすぐ呼ばれるじゃないか」と言って、持つことを断固拒否する人もいました。
その主義主張、今でも貫き通してるんだとしたらもはやあっぱれですよね。
どんな仕事ができるのか、想像もできませんが・・・

そんな風にブーブー言ってた人たちも、順応はしたんですよね。
パソコンでメールくらいは送れるし、資料を開くぐらいはできるし、ケータイで通話もできるし、テキストチャットもできるようになりました。
程度の差はあれど、デバイスを通じたコミュニケーションができるようになったからこそ、コロナ禍も乗り切れるようになったのです。

生成AIで働き方がどう変わるのかは、正直予測しても大した意味はないと思っています。
それよりも、なるべく早く触ってみて、あれこれ確かめてみるのが大事ではないかと。
その上で、「自分の仕事をこうやって助けてくれるんだ!」「この作業の時間をこんなに短くしてくれるんだ!」という感動を、とにかく早く味わうことです。
AIは悪意を持って襲ってくるものではありません。
ならば、すぐに仲良くなりましょう。そうすることで、素晴らしい時代を作ることができるのです。

余暇にプロサッカー応援を愉しむ人々のイメージ

こぼれ話ですが・・・
この8月に産業革命発祥の地であるマンチェスターに旅行で行ってきました。
マンチェスターといえば、「マンチェスター・シティ」と「マンチェスター・ユナイテッド」という二つのチームがあり、一つの街に二つもサッカーチームがあるのも驚きなのですが、両方とも世界トップ10チームに挙げられる強豪チームでもあるのが素晴らしいポイントです。
では、なぜそんなチームが生まれたのかといえば、これが産業革命が一つの要因であるらしいのです。
産業革命により、時間のかかっていた人力による作業が自動化されたことで余暇が生まれ、サッカーという娯楽に没頭することができたんだとか。
産業革命が人々に楽しい時間をプレゼントしてくれた、歴史的な証拠だと思いませんか?

第4回の記事はこちら >>

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[2024.9.30公開]

澤 円(さわ まどか) 氏
著者澤 円(さわ まどか)氏
株式会社圓窓 代表取締役
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 専任教員(教授)
元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長を2020年8月まで務めた。DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやコンサルティングなどを行っている。複数の会社の顧問や大学教員、Voicyパーソナリティなどの肩書を持ち、「複業」のロールモデルとしても情報発信している。また、ファッションや美容、自動車などのインフルエンサーたちとも積極的に共創活動を行っている。
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