「アクティブ・コモンズ (ABW)」は、”求める人材・組織”が”求める活動”にイキイキと取り組める環境です。以下に、その具体的な考え方として8つのイメージをご紹介します。
図:アクティブ・コモンズ (ABW); 8つのイメージ
1. 多様なワークシーンに対応する多様な空間による構成従来の自席中心の働き方を見直し、ワークシーンを明確にした「場」を検討します。中心となるデスク席のスタンダードは業務の特性を踏まえて設定します。
基本コンセプトによっても異なりますが、
フリーアドレスオフィスでのデスク席はなるべく自由度が高くどこにでも座れる、また必要に応じて移動して簡単なレイアウト変更ができるなど、個人からグループにも対応できるという点で、テーブルタイプのデスクが有効です。
デスク席以外でも、たとえば個人で集中思考業務、グループでの発散思考業務といった働き方に適した家具や機器ツールを選定していきます。前者であれば窓面に向かって集中できるカウンターテーブル、後者であれば数人がホワイトボードの前に自由に座って集まれる場など、アイデア次第で多様な場作りが可能です。
2. 空間のシングルユースからマルチユースへ「場」を計画する際には、一つの用途で一つの場を作るのではなく、一つの場をさまざまな用途に使えるよう計画します。スペースの有効活用という面もありますが、機能面に加えフォーマルからインフォーマルな場面まで多様な目的で集まるコミュニケーションの仕掛けとして捉えます。家具やデザインも場の方向性により多様な選択肢が生まれます。
3. 他人や他のグループの仕事の様子がみえる、聞こえる閉ざされていた会議室やミーティングスペースなどをオープン化したり、意図的に違う部門を隣接させるなど、
場の作り方やゾーニングを工夫した、風通しの良いオフィス作りがポイントです。半面、社内であっても声の漏れ等に配慮しないといけない場面もあり、オープンとクローズのバランスを取ることも忘れてはいけません。
4. 偶然な出会いや会話が生まれる、人の接触を増幅させるレイアウト日頃のかかわり方や人間関係によって、コミュニケーションできる対象の幅や深さも変わってきます。レイアウトの視点から支援できることとしては、
デスク配置を同一方向でなく、あえて視線や動線が交差するような配置にしたり、複数の機能を集約した場作りをすることで偶発的な出会いを促すことなどが挙げられます。より日常的な「かかわり」を意識した計画に配慮することにより、オフィス全体でのコミュニケーション活性化を目指します。
5. すぐに集まれるスムーズなコミュニケーションを促すためには、会議室予約や場所を探さなくてもすぐに集まれる工夫が重要です。デスク席のテーブルタイプ化は、席の周りに集まりやすくこの点でも有効といえます。また人数に応じた使い方ができるオープンなミーティングスペースや、立ったまま素早く手軽に打ち合わせできるカウンタースペース、少し腰を沈めて気分を変えながら会話ができるソファスペースなど、さまざまなタイプが考えられます。
限られたフロア面積の中では、個室会議室の見直しやマルチユースなオープン・ミーティングスペースの検討などにより、新しいスタイルの場を捻出しなければなりません。フリーアドレス・オフィスの場合は、1人当たりの席サイズや人数に対する席数割合の設定などに配慮し、全体のスペース配分を検討します。
6. ICTツールを使いこなすこうしたコミュニケーションスペースには、すぐにアイデアを書き留められるホワイトボードや、ノートパソコンの画面を共有できる拡張ディスプレイなど情報をスムーズに共有できるICTツールが有効です。
ワークプレイスにおけるICTツールはコラボレーション支援、ナレッジ共有支援、モバイル支援、ペーパレス運用支援、会議室運用支援といった捉え方の中で導入を検討します。またフリーアドレス・オフィスの場合、固定電話や個人収納の在り方が働く場所を限定し、フリーアドレスの運用を妨げる要因になります。こうした状況をうまくサポートできるモバイル化やペーパレス運用化等のICTツール導入が重要です。
7. 秩序、効率性優先から揺らぎ感のある空間へ前述のように、これらの考えを形にしたオフィスは多様な形を持った場の集合体となり、導線や視線も交差する揺らぎ感のある空間がイメージできます。インテリアの視点でも
今までのオフィス色に偏らない親しみを持てる心地良い生活空間としての場作りが求められます。
8. 「かかわり」の作法があるワークプレイス「アクティブ・コモンズ (ABW)」では、そのときどきの働き方に合った場所を選択できたり、場を可変できたり、一つの場所をさまざまな用途に使えるなど、働き方や場のデザインも多様化していきます。
しかし、場を作るだけでは「かかわり」は促進されません。いろいろなルール作りや日常的な作法など、場を活かすためのマネジメントが必要です。
たとえばオフィス計画段階からプロジェクトに社員を参加させたり、オフィスを維持管理、進化させるチームを結成したり、なるべく実際にオフィスを使う社員を参加させて運用を行うことも有効です。また、コミュニケーションの場面で意見が出やすい雰囲気作り、会議ファシリテーターの育成、日頃のちょっとしたあいさつや声掛け、また懇親会などのイベント演出も含め、
日常的な「かかわり」をマネジメントの面からも考えることが大切だといえるでしょう。