フリーアドレス2.0 の導入方法 - フリーアドレス2.0 成功のポイント -

フリーアドレス2.0 の導入方法
フリーアドレス 2.0 となり注目されている「働き方変革の支援環境」の視点から、実際にフリーアドレスを導入する際にどのような検討のプロセスが必要か、どのような点に注意すべきかについて考えていきます。

働き方変革とフリーアドレス

「働き方変革」への取組の施策としてフリーアドレスを検討するケースが増えています。実際のプロジェクトの現場でも、働き方改革のための打ち手(変革促進施策)を検討する際にフリーアドレスが俎上に載ることがあります。それも、一般にフリーアドレスに向いていると言われている営業部門だけではなく、本社部門や開発部門でも施策として採用されることがあります

なぜ働き方変革、すなわち社員の意識や行動を変えて組織の生産性や躍動性を高める取り組みの中で、フリーアドレスがテーマになるのでしょうか。それは、フリーアドレスが単なるオフィスレイアウトの一手法に留まらず、社員の意識や行動を変革する促進装置になるのではないか、という期待が込められているからだと思います。

実際、フリーアドレスを働き方変革の舞台装置としてうまく活用して、成果を上げている事例も増えています。以下に、働き方変革におけるフリーアドレス導入のプロセスについてご紹介します。
フリーアドレス 2.0 の導入方法

フリーアドレス導入のプロセス

働き方変革におけるフリーアドレス導入の場合、いきなり「フリーアドレスをどうしようか」という議論になることはありません。最初に検討されるのは、なぜ働き方を変えなくてはいけないのかという働き方変革の背景と、何のために働き方を変えるのか、という変革の目的です。次にどこまで変えるのかという変革目標を定めて、その実現のための施策の一つとしてフリーアドレスが浮上してくるという順序になります。

さらにいうと、変革促進施策と呼ばれる打ち手も、最初に検討されるのは仕事のプロセス、コミュニケーションの在り方、情報や知識の取り扱い方、組織の風土といった人の意識や行動にかかわるものが中心です。その人の意識や行動を変えるためにどのような環境が必要かという議論の中で、フリーアドレスが話題になることが増えてきたということだと思います。

1.フレームワーク作り

最初に検討すべきは、どんな働き方を目指してどのような運用形態のフリーアドレスを導入するか、適用範囲をどうするかという導入の枠組みです。働き方改革の促進施策としてフリーアドレスを検討するケースでは、どのような働き方を目指すかという変革目標はこの時点で既に描かれていますが、この目標を概念(コンセプト)のレベルではなく日常行動(シーン)のレベルまで具体的に想定することにより、フリーアドレスに期待する役割や、その運営形態のイメージが明らかになっていきます。

全社を対象とするのか、特定の部門や事業所を対象とするのかといった適用範囲の検討のほか、フリーアドレスが順調に運用されているか、目標とした成果を上げているのかを検証をするための KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)の設定や、社員の満足度や受容度を測るための意識調査の方法など、評価構造の策定も重要な準備事項となります
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2.パイロット部門によるトライアル

大規模な導入の場合は、可能ならばパイロット部門を選定しトライアルした方がよいでしょう。どのような運用形態がよいのか、運用上どのような問題や課題が生じるのか、それをどのように解決するのか、といったことを実地検証するためのものですから、事前に仮説を立て、その仮説を確かめながら進めます。トライアルは全体導入をスムーズに進めるためのものであり、問題や課題が出てくることは当然ですが、あまりに問題・課題が噴出してトライアル自体が止まってしまうようでは困ります。その意味でも、試行とはいえ最終的には成功を収める綿密な計画が必要とされます。トライアルが成功することで社員が「これは大丈夫だ」と安心できるように、場合によっては、あまりハードルを上げずに成功が見込まれる対象を選定するという考え方もあり得るでしょう。

3.運用設計

トライアルのプロセスで明らかになった運用上の課題や問題への対応策を導入前に準備することで、全体への展開を行う際の障壁や心配ごとを少なくできます。たとえば「ほかの人が使って消しゴムのカスで汚れた机を使うのはいやだ」などのちょっとしたことでも、人によっては大きな心理的抵抗感となります。トライアルでそのことがわかると、机の上にウェットティッシュを置き使用後は必ずひと拭きしてから離籍することをルールにしよう、といった対応策を運用に盛り込むことができます。トライアルを行わない場合は、できるだけ他社の成功・失敗事例などの情報を集め、自社で導入する際に浮上しそうな課題や問題をイメージしておきましょう。

完全なフリーアドレスにするのか、フロア単位など一定のゾーンを区切ってその中でフリーにするのか、部門のゾーンを定めてグループアドレスにするのか、といった大きなフレーム作りから、ICTのインフラやサービスの利用方法、セキュリティ、紙文書や私物の扱い方や収納方法まで、検討すべき事項は多岐にわたります。重要なのは、これらの運用方法を検討してからオフィス空間の設計を行うことです。これが逆になると、施設と運用がかみ合わなくなるなど、さまざまな弊害が起きがちです。また、運用設計の成果は、マニュアル、ガイドライン、ユースモデルなど、できるだけ可視化しておきます。
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4.オフィス設計と構築

最後にオフィス(オフィス空間とICT)の設計と構築です。オフィス空間のデザインは、フリーアドレス 2.0やabwを取り入れた魅力的な事例が数多く発表されていますので、それらを参考にして、導入目的と運用から見て最適なスタイルを選択するとよいでしょう。ICTに関しても同様に、多くの事例があります。

オフィスの構築の際の重要なポイントは、運用との整合性とともに、多様な利用シーンに対する適応性を考慮することです。フリーアドレスの導入が順調に進むと、ユーザーである社員がどんどん進化して、当初考えられなかったような使い方をすることがあります。また、社員が成長すると要求水準も上がってくるでしょう。社員の進化に合わせて空間やICTのシステムも進化していくのが理想ですが、あまり頻繁に変更もできないでしょうから、初めからある程度先を見込んだ適応性を持たせておくことが現実的な解となります。ここは、オフィスデザイナーやエンジニアとよく話し合って検討すべき項目です。
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フリーアドレス導入の合意形成

フリーアドレスの導入プロセスに一貫して流れているテーマが「合意形成」です。フリーアドレスはそこを使う社員の理解と共感が得られないと、なかなか定着しません。導入のプロセスにおいて、フリーアドレスに対する抵抗感を和らげ、「自分たちで作り上げた」「自分たちでより良いものにしていくのだ」という「自分ごと」化ができると、良い形で運用がスタートできます。押しつけの情報発信では自分ごと化ははかれないため、フリーアドレスの必要性に対する気付きをどう与えるかが重要です。以下に各計画段階における合意形成の要点について挙げてみます。

働き方変革の検討プロセス

フリーアドレス導入の前提となる働き方変革の検討プロセスでは、できるだけ多くの社員が何らかの形で検討に加わることが、合意形成という面では望ましいでしょう。具体的には、変革の背景・目的・目標の検討プロセスや、変革促進施策の検討プロセスで、ワークショップ、グループインタビュー、ヒアリング、アンケートといった手法を使って現場視点での意見の収集や議論を行うことが考えられます。その中から、現場発のアイデアとしてフリーアドレスがでてくると、合意形成は一気に進みます

重要なことは、働き方変革は社員の参画と自分ごと化があって初めて成功するものであり、大きな変革の方向感を示す経営の視点と、その方向に向けて具体的なアクションプランを作り実行する現場の視点との両輪で変革を進めることです。変革促進施策の一つであるフリーアドレスも、当然その枠組みで進めることが成功の要件といえるでしょう。

フリーアドレスの検討プロセス

フリーアドレスの具体化を検討するプロセスでは、なぜフリーアドレスを採用するのかという導入目的と期待成果を社員と共有することが最も重要です。一方的な情報発信ではなく、双方向の議論の中で共有目標を作り上げていくことにより、当初は抵抗感が強かった人もだんだんと「やってみようか」という気持ちになっていく、というプロセスを作ります。簡単ではありませんが、丁寧なプロセスを経ることにより、着実に合意形成を進めていくべきです。

さらに、運用の仕組みや仕掛けを検討する際にはできるだけ多くの人に参加してもらい、いろいろな視点からアイデアを出し合うことで「フリーアドレスが楽しみだ」という期待感を醸成できると、良い形で運用が開始できるでしょう。
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トライアルのプロセス

トライアルでは、出てくる課題や問題に真摯に耳を傾けます。社員から問題を指摘されると、推進者としてはつい説得に走りがちですが、まずは傾聴し、その上で解決すべき課題か、社員に慣れてもらうべき事項かを評価していく、という姿勢が望まれます

修正できるものは手直しし、さらに使ってみて評価を得ることで運用方法が進化し、社員からも信頼感を得られます。また、トライアルのプロセスを情報公開して、仮説が進化していくプロセスを多くの社員に見てもらうようにすると、パイロット部門の社員はもちろん、それ以外の社員も興味を持ち、検討に参画したいと思う人が増えていくことが期待できます。

運用とスパイラルアップ

フリーアドレスは導入して終わりではありません。そこから運用フェーズがスタートし、社員の働き方の変革を支えながら、フリーアドレス自体も成長・進化していく必要があります。そのためには、運用をどのようにマネジメントするか、PDCA(計画・実行・評価・手直し)をどのように回していくか、という計画と実施が重要となります。前述の KPI や社員の意識調査といった評価プログラムを上手く使いながら、持続的に成長するフリーアドレスを実現することが望まれます

このようにフリーアドレスには、経営視点の目的と社員の共感を良い形でマッチングさせ変革を生み出すという、大胆さと繊細さを併せ持つ導入プロセスが必要とされます。そのプロセスでは、建前ではなく本音をぶつけ合う議論や、経験にとらわれず新たなアイデアを創出するディスカッションが重要です。これらを社内のメンバーだけで行うのではなく、ファシリテーションスキルや経験知が豊富な専門家を活用し、外部の意見を取り入れるのも、一つの方法です。より大きな成果を引き出すための策として、外部の力を使うことを検討してみてはいかがでしょうか。

フリーアドレス 2.0 の導入方法
監修:知的生産性研究所 所長 平山信彦

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