大樹生命保険株式会社様(以下、大樹生命様)が、本社移転の検討を始められたのは2022年。コロナ禍による働き方の変化に加え、本社機能が都内4箇所に分散していることでの不便さやリアルコミュニケーションの希薄さを改善するため、1箇所に統合し、時代に即した働き方およびサステナビリティ経営を推進するオフィスの実現を決定されました。本社オフィスを「チーム力を高める場」「部門を超えて交流・成長する場」「働きたくなる場」と位置付けてES向上につなげることにより、生産性向上を実現することを狙っての決断です。
新本社は、2駅8路線が徒歩1~3分で利用できる都内でもアクセス抜群な好立地にある大型オフィス・商業複合ビル。その5フロアに4拠点から約1,500名が集結するという大プロジェクトとなりました。内田洋行は、働き方の観点を踏まえたデザイン業務(コンサル・設計)・各種施工という役目を担い、2年超に渡ってしっかりサポートさせていただきました。
「移転計画がスタートした2022年度は、企画部門主体で各所の意見を集約しました」と、当時、企画部所属だった黒川亮祐様。本社全員対象のアンケート調査のほか、社内の若手社員による部署横断型プロジェクト「Miraiju」でも「どんなオフィスにしたいですか?」をテーマに取り上げて意見の聞き取りを実施。その中で出てきた、立地の改善、グループアドレスの採用、コミュニケーションの強化などを踏まえて基本計画を立案されました。その後2024年に発足したのが、黒川様と北原史隆様、田中茜様、浦田佳歩様の4人のメンバーによる本社移転推進グループです。
本プロジェクトのパートナーにお選びいただいた内田洋行がまず行ったのは、各部門から選出された約50人による集合セッション(ワークショップ)。大樹生命様の業務が多様なことから、「管理」「営業」「お客さまサービス」など6つのグループに分け、それぞれの現状の働き方、目指したい働き方をディスカッションしていただきました。「うちの会社ってこんなに部門によって働き方が違うということが可視化されて、それは私たちにとっても発見でした」と田中様。「それまでも意見の吸い上げを行っていましたが、このセッションで、働く場は一律ではなく業務に応じて変えていくべきだということがさらに明確になりました」と北原様も振り返られます。
移転前の大手町オフィス。固定席でペーパーレス化も進んでいなかった
集合セッションで出た目指すワークシーン、個別の施策をレイアウトに反映していった
集合セッションなどで出てきた意見を集約し、生まれたのが「オフィスに集う、大樹に集う。」というデザインコンセプトです。これには、「各部門が一つの場所に集まることにより新たな価値が生まれ、大樹の幹がさらに大きくなるように。オフィスに集められる、ではなくオフィスに集まるように」という思いが込められています。その思いは、各フロアの執務エリアの中央に設置したリフレッシュスペース(コーヒーサーバーや菓子棚等)や27階のリフレッシュエリアに造作した円形カウンターをはじめ、杉板の壁や木質の什器、全体にバランスよく配置された植栽などから、オフィスのどこにいても感じることができます。
また、オフィス空間における機能的なポイントとして、「Team-Base(チーム力を高める場)」「Co-place(部門を超えてシェアする場)」「Proud(働きたくなる場)」を設定。この3つを部門の業務や働き方に合わせて調整して組み合わせ、グループアドレスによるABWを実現しました。 「4拠点の合計より面積は約3割減りましたが、ペーパーレス化の推進や、ビルの特徴である曲線や大きな窓を生かした、壁で遮らないレイアウトの効果で広がりを感じます」(黒川様)。「どこでも仕事ができる環境なので、より余裕を感じます」(浦田様)


「当初、ABWに関して、部下がどこにいるのかわからないという不安を抱えていた管理者もいました。しかし、スタートすると見つけることはそう大変ではなく、逆に日や時間によって隣に違う人が座るのでコミュニケーションが増えるきっかけにもなったという声が届いています」と黒川様。「執務室フロアの中央にリフレッシュスペースを設けたのがミソだと思います。それぞれの目的でフロアの人々がここに集いますし、移動中に声を掛け合うなど、部門を超えたコミュニケーションが活性化しています」と田中様。さらに27階のリフレッシュエリアでは、5フロアをまたがるコミュニケーションが生まれています。
「会社に来たいから今まで週2だったリモートワークを週1に減らしたという同僚もいて、とても好評です」と浦田様。「オフィスに集うことで、コミュニケーションがより深まっている感じですね。お客さまにもアクセスの良さが好評ですし、オフィス選びは立地も重要だなと実感しています」(北原様)


プロジェクトがスタートして、コンセプトやレイアウトなどを次々と決める中で、本社移転推進グループの皆様が並行して取り組んだのは、従業員の皆様への発信でした。
「どんなにいいオフィスや働き方でも、おしつけられた感を与えてしまうと従業員はついてこない。皆さんに本社移転の意義を浸透させて、自分のことだと感じてもらえよう工夫を講じました」(北原様)。その一つがイントラで発信した「本社移転通信」。単に進捗情報を伝えるだけでなく、移転先周辺のお店の情報やクイズ、イラストなども取り入れた、読みやすく興味を引く内容で、配信を心待ちにする熱烈なファンもいたそうです。「その際、本社だけずるいという声はできるだけ抑えたいとバランスには留意しました」と黒川様。「その甲斐あって、支社や営業部からも、本社がこんなに素敵になって誇らしいというポジティブな言葉をもらっています」(田中様)
またDX戦略部とともに、AIを使って構築したFAQのシステムもたいへん好評だったとか。ちょっとした疑問などをAIに気軽に相談できる環境が、従業員の皆様の不安を払拭し、納得感を高めながら進行できた大きな要因だと思います。
進捗状況を伝える「本社移転通信」(一部抜粋)
最後に、大規模な移転プロジェクトをやり遂げるうえでポイントにしたことをうかがいました。
「大事にしたのは、みんなが参画する雰囲気づくり。そのうえで、なぜこういう働き方に変えるのか、どうしてこういうスペースを設けるのかをしっかり腹落ちするまで説明しました。移転後にみんなが前向きに取り組んでくれたのは、このプロセスを重視したからだと思います」(黒川様)
「同じイメージ感を持つまでしっかり擦り合わせることが大事だと思いました。ここはこういう働き方をする場だといったことを言葉や文字だけでなく、パース図なども使って示すと、具体的にイメージできましたと納得してもらえました」(浦田様)
「急がば回れだなと正直に思いました。これで行けるだろうと見切り発車すると、それは違うんですと後から言われることが多くて。ヒアリングに時間をかけたほうが結局は早いと身に沁みました」(田中様)
「まずは最初に、目指すものは何か、何を重視するかといった方向性をしっかり議論して決め、それを経営層と共有してからレイアウトなど具体的なことに着手できたことが、本プロジェクトがうまく進んだ要因だと思います。そうした進め方、従業員の巻き込み方といった面でも、内田洋行さんのサポートが大きかったです」(北原様)
オフィス事情や働き方への知見の高さがパートナー選出の決め手でしたが、想定以上の細やかで適切なアドバイスをたくさんいただき、うまく進行することができました。保険業ならではの機密やさまざまな働き方が混在する状況下で、情報が小出しになってしまった際も、嫌な顔ひとつせずにご対応くださりありがたかったです。おかげさまで、どこを切り取っても、「大樹に集う」のコンセプトが感じられるオフィスが完成しました。お客様や就活者にも好評で、社長からも「いいオフィスだね」という言葉とともに、「一体感の高まりを感じる、これからもっと高めてほしい」というコメントをいただいています。
大樹生命保険株式会社 総務部 本社移転推進グループ
グループ長 北原 史隆様(後列左)
課長 黒川 亮祐様(後列右)
副長 田中 茜様(前列左)
職員 浦田 佳歩様(前列右)
本プロジェクトは、約1,500名が4拠点から一つのビルに集約する、大規模かつ長期にわたる取り組みでした。設計・デザイン業務から納品まで、本プロジェクトのパートナーとして当社をお選びいただき、たいへん光栄に思っております。
アンケートやワークショップなどでさまざまな部門の方の想いを丁寧に伺いながら、事務局メンバーの皆様と幾度も議論を重ね、我々営業・デザイナー・PM・知的生産性研究所のメンバーが一つのチームとなり、「オフィスに集う 大樹に集う」のコンセプトに沿ったオフィス空間の実現に取り組んでまいりました。移転後、「オフィスに出社する社員が増えた」といった声を伺うことができ、私たちにとっても大きな喜びです。
今後、この新しいオフィスを起点に、部門の枠を越えたコミュニケーションが育まれていくことを願うとともに、引き続き大樹生命様の成長を支えるオフィスづくりをサポートしてまいります。
株式会社内田洋行
オフィスエンタープライズ事業部 小松 麻友(前列右)
オフィスエンタープライズ事業部 星 秀一(前列左)
知的生産性研究所 渡辺 修司(後列左)
パワープレイス株式会社
東日本デザインセンター 坂本 晃彦(後列右)
東日本デザインセンター 高柳 博成(後列右2)
東日本デザインセンター 家城 知凡(後列中央)
エンジニアリングセンター 平野 大輔(後列左2)

2027年3月に創業100周年を迎えられる大樹生命様。「いつの時代も、お客さまのためにあれ」という創業精神を大切に受け継がれ、2016年には、日本生命保険相互会社様との経営統合による新体制を発足し、2019年に変更した社名には、「大地にしっかり根を張り、晴れの日も雨の日もお客さまを守り、よりそい、多くの人が集まってくる保険会社を目指そう」という思いが込められています。全国54支社393営業部・営業室の職員の方々がお客様と築き上げた信頼関係、つながり・絆を財産とし、今後も「BESTパートナー」であり続けるため、大樹生命様はさらなる成長を目指されています。本社移転および本社組織の集約もその施策のひとつです。
大樹生命保険株式会社 企業サイト※記事内容や役職等は取材当時のものです。(2026年2月取材)