「仮想空間」で働くということ ~「バーチャルオフィス」は新たな働く場として成立するのか?!~ セミナーレポート

第154回オフィス移転セミナーのタイトル

2022年3月15日、オンラインにて第159回オフィス移転セミナーを開催いたしました。プログラム2では、富士ソフト株式会社・プロダクト事業本部 副本部長の松浦直樹様をお迎えし、「『仮想空間』で働くということ~『バーチャルオフィス』は新たな働く場として成立するのか?!~」をテーマにご講演いただきました。富士ソフトのプロダクトスペシャリストとして、数多くのプロダクトの企画・開発から事業化までを手掛けた松浦様が語った、コロナ禍の在宅勤務で注目され始めた「バーチャルオフィス」の新たな可能性や生かし方についてレポートします。

コロナ禍で迫られた変化と、今後求められる新しい働き方

コロナ禍に見舞われ、私たちの働き方は大きな変化を強いられました。コロナ流行直後の2020年から2年ほどの間、リモートワーク等で職場でのコミュニケーションが失われる中、業務の効率を落とさない努力が緊急対策的に行われてきました。コロナ禍以前の職場で蓄積されていたコミュニケーション資産を使って、旧来の業務効率をなんとかキープしてきたと言えます。

しかし、長期化するコロナ禍において、コミュニケーション面などの新たな課題が浮かび上がってきました。それまで持っていたコミュニケーション資産が枯渇する上、新たにコミュニケーションを積み上げることが難しくなっています。離職率の上昇や、帰属意識の低下などを防ぎ、デジタル中心の働き方の中で業務効率を上げるためには、今まで以上の生産効率を発揮することが重要です。
また、ミレニアル世代が働き盛りを迎える頃には、バーチャルオフィスが中心となるメタバース時代の到来が予想されます。今後は常に、新しいオフィスのあり方やコミュニケーションについての検証を行い、時代の変化に順応していくことが必要になります。

効率の良い働き方のためには、コミュニケーションの革新が必要

富士ソフトでは、コロナ禍以前からリモートワークの推進に取り組んでまいりました。震災や台風被害の経験から、業務を止めないためのツールを早い段階で整備し、活用してきました。それでも、コロナ流行の第1波対応中には社員から在宅勤務中のコミュニケーションの課題が挙がり、困難に直面したのです。特に、下記の図で示したような「オフィスのデスク周りでのコミュニケーション」が大幅に減少したことによる影響は顕著でした。

また、管理職の労働時間に大幅な増加が見られました。職場で社員同士が接する機会がなくなり、管理職は部下の状況をつかみにくく、個別に進捗確認をしなければならないなどの負担が増したためです。私たちはこのことから、リモートワークのメリットを享受するには、コミュニケーションの革新が必須であるという気づきを得ました。

長期化したリモートワークでは、コミュニケーション不足を補う必要があります。特に、プロジェクトチームの創成時、問題発生時、新入社員が加わった時などのタイミングでは、リアルな職場での接点が必要です。一方で、リアルな職場では無駄なコミュニケーションが多くあったことも事実で、リモートワークの開始後は「残業が減った」「生産性が上がった」という声も挙がりました。そこで、リモートワークのメリットを生かしながら、課題を解決する方法はないだろうかと考えた結果、「仮想空間で働く」という解決策にたどり着きました。

「仮想空間で働く」という新たなチャレンジ

私たちは以前から、オフィスで働いている時でも、実務はパソコンの中などの仮想空間の中で行っていました。私たちはその点に着目し、リアルなオフィスから仮想空間へと、「いる場所をシフトする」というチャレンジを始めました。コロナ禍のリモートワークで失われたオフィスコミュニケーションを取り戻せる場所は、「仮想空間」であると考えたのです。

仮想空間「FAMoffice」が可能にすること

「仮想空間で働く」ことを実現するため、これまでのリモートワークで蓄えた知見を元に、ソフトの開発に着手しました。2020年7月に試作し、社内に試験導入を行いました。2021年3月には社外6社様のモニター評価も実施し、試作から10カ月後の2021年5月にFAMoffice製品版が完成しました。3D版の試作も行いましたが、一般的な社員の方のパソコンのスペックを考慮し、2D版で製品化を行いました。FAMofficeでは、次のような流れでバーチャルオフィスを利用できます。

業務開始時間に、FAMofficeに出社してログイン、自分のアバターを席に座らせます。社員同士は出勤状況が一目でわかります。業務中はステータスやつぶやきを表示、細かな業務状況も共有できます。困ったことがあれば、同僚や上司の席にアバターを動かして、気軽に質問できます。話しかけたい時はアバター同士を重ねると、ビデオ通話が始まります。つぶやきや、やり取りを見た上司が、部下に声をかけることも可能です。上司は、部下の様子はもちろん、チーム内のコミュニケーション状況も把握できます。4名以上の打ち合わせに適した会議テーブル機能もあります。空いている会議室にメンバーが入るだけで会議が開始でき、資料の共有も簡単にできます。

私たちは実際にFAMofficeを使って業務を始めた後、アンケートによる評価を行いました。その結果、75%の社員がコミュニケーションがしやすくなったと回答し、仮想空間上のコミュニケーション時間は一人当たり一日平均54分、管理職の残業時間は20%減少した、という結果になりました。しかし一方で、「仕事以外の交流や、偶発的な接点がない」という意見もありました。

偶発的なコミュニケーション実現への新たなチャレンジ

FAMofficeを運用し、「仮想空間で働く」ことにチャレンジした結果、課題が見えてきました。「気軽に話しかけるような環境や、一緒に働いているような感覚は実現できるけれど、偶発的なコミュニケーションは期待できない」という点です。この課題を解決するために、仮想空間上にサークル活動など、業務外のコミュニケーションを形成する仕掛けを導入しました。従来の職場で、業務以外の接点を通して培われていた社員同士の信頼関係、仲間意識・帰属意識の醸成にチャレンジしています。

実際に仮想空間上で運営されているコミュニティーには、「ランチ女子会」「水曜定例・立ち飲み横丁」「食通の会」などがあります。仮想空間上に社員食堂や町を再現し、そこに集まって在宅勤務中も同じ時間を共有し交流を深めています。社員が役職や組織を超えてつながれるようなしくみです。コミュニティー参加者へのアンケートでは、60%が「業務会のコミュニケーションがやりやすくなった」と回答しています。しかし、逆に「やりづらくなった」という声も20%ありました。コミュニケーションが可視化されたことによる弊害だと考えられ、今後の改善が必要です。

仮想空間で働くことで得られるメリットと、今後の課題

私たちは、在宅勤務により失われたリアルなコミュニケーションをどのようにバーチャルオフィスの中で再現していくかが重要だと考え、仮想空間の開発と運用を行ってきました。FAMofficeの効果を検証した結果、バーチャルオフィス内でもコミュニケーションはしっかり行えるということがわかり、仮想空間で働くことに手ごたえを感じています。しかしながら、「新しいメンバーとの人間関係の構築」「仲間意識・チームワークの造成」には継続したチャレンジが必要だと考えています。「対人コミュニケーション能力」や、「間接的な学び・気づき」を得るためには、まだまだバーチャルだけではカバーしきれず、リアルなコミュニケーションが果たす役割の大きさについては、今後も検討していきたいところです。

まとめ

FAMofficeでは、仮想空間での働き方のデータを蓄積、見える化し、分析ができます。デジタル化されたオフィスコミュニケーションを見ることで、問題点や改善点を知り、ニューノーマルな働き方の実現を目指せます。

また、仮想空間では、勤務地を超えた組織編成、アバターの複数の場所への配置など、リアルなオフィスでは実現不可能だった環境づくりができます。配置、移動も簡単にできるため、一緒に働くことが難しかった社員同士が仮想空間上で同席するなど、組織の活性化にもつながります。

結論として、「バーチャルオフィスは新たな働く場として成立する」と言えます。しかし、仮想空間単独で業務を行うことは困難であり、リアルなオフィスで行われるコミュニケーションは不可欠です。オフィスの移転や再構築の際には、リアルなオフィスとバーチャルオフィスのハイブリッド型を選択肢の一つとし、新しい働き方をご検討されてはいかがでしょうか。

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