2020年7月8日、オンラインにて、第146回オフィス移転セミナーを開催いたしました。
プログラム2では特別講演として、『世界一わかりやすいテレワーク入門BOOK』などの著者で、株式会社クロスリバー代表の越川慎司様を特別講師に迎え、「会社と社員が成長する『正しい働き方改革』の進め方~529社の支援で見いだしたリモートワーク・テレワーク成功のルールとは~」をテーマにご講演いただきました。
越川様は、529社(2020年7月8日現在では、600社以上)のコンサルティングを行ってきた経験をもとに、正しい働き方改革の進め方を多くの企業へご提案されています。中でもコロナ禍では、毎日20社以上の新規顧客にテレワークのアドバイスを実施してこられました。その経験から導き出したリモートワークを成功させる7つのルールをご紹介します。
現在、企業にはさまざまな変化が起きており、多くの企業が「リモートワークを定着させるにはどうしたらいいのか」「リモートワークでもっと成果を出すためにはどうすべきか」といった課題に直面しています。
まずお伝えしたいのは、リモートワーク(テレワーク)は目的ではなく手段であるということです。当社の調査では「リモートワークがうまくいっていない」と答えた企業は78%にも及びました。その原因は、これらの企業では「リモートワークをすること」が目的となっていることにあります。私たちが目指すべきは、会社が利益を出し続けることと、社員が働きがいを持って働けることです。この点を忘れてはいけません。
リモートワークを成功させるためには、意識ではなく行動を変えることが重要です。ハード面のサポートも大切ですが、テレワークの成功の鍵はソフト面にあるのです。当面続くであろう、リモートとオフィスのハイブリッドな働き方で成果を出し続けるために、29社(16万3千人)が実践している7ルールをご紹介します。
現代は、各企業のクライアントが抱える問題が複雑化していて、社員一人の知恵だけでは解決が難しい時代です。「成果が出せる、人間関係がよい組織・チーム」を目指す必要があります。チームを団結させるものは、理念ではなく、社員が価値観や働きがいを認め合うことです。
では、社員の皆さんが働きがいを感じるのはどんなときでしょうか。当社の調査では、働きがいを感じる瞬間は「承認(評価されること)」「達成(目標を成し遂げること)」「自由(裁量が大きいこと)」の3つで構成されていることがわかりました。承認、達成、自由を最大化するためには、どうしたらいいのでしょうか?
個人の目標を設定し、それを達成することで承認が得られます。達成によって職責をまっとうし、それと引き換えに裁量が得られることが働き方のあるべき姿です。目標設定や達成に当たっては、上司が部下と横並びになり、バディ(相棒)として一緒に考えながら助言を行うことが大切です。2週間に1度でも構いませんので、上司と部下が気遣いなく、同じ目線で向き合う時間を持ちましょう。
上司と部下の間で定期的な対話があり、コミュニケーションがうまく取れている(心理的安全性が確保されている)チームでは、リモートワークも成功します。
ホウレンソウに加えて、ザッソウ(雑談、相談)の時間を1日に5分でもいいのでつくりましょう。午後の定例会議の冒頭で、ランチの話や天気の話をするのもおすすめです。リモートワーク成功のためには、腹を割って話せる関係性を構築することがとても重要になります。
「リモートワークではサボる社員がいるのではないだろうか」というお悩みはよく聞きます。当社の調査では、リモートワークでサボる社員は14%存在することがわかりました。ただし、リモートワークでサボる社員のうち94%が、オフィスでもサボるということも判明しました。少なからず存在する社員のサボり問題は、個々の職責を明確にし、しっかり評価をすること、業務の見せる化を浸透させることで対策を行いましょう。
上司と部下の1on1ミーティングにより、行動目標を一緒に考え、実行し、評価することで「今週何をするか」「今週何ができて、何ができなかったか」を明確化します。
現代は、いくつもの失敗の先にしか成功はありません。成果を出すためには、一人ひとりがセルフDCA(Do、Check、Action)を回すことが必要不可欠です。
また、社員それぞれがグループウェアのプレゼンス機能やチャット機能を使い、オンラインかオフラインか、今日はどんな作業をするのかを共有するといいでしょう。「今、誰がコンタクトを取れる状況にあるか」を可視化(見せる化)すれば、効率的にコミュニケーションが取れるからです。
リモートワークをしているときも、オフィスで働いているときと同じように情報を共有することを目指してください。次の4つのポイントを実践するといいでしょう。
・予定表をオンラインで共有する
・フィードフォワード(差し戻しをなくすため、進捗20%で成果物を共有する)
・資料をクラウドに保存して共有する
・個別チャットではなくグループチャットで共有する
リモートワークでは孤立感、孤独感が増長されがちです。孤立を生まないためには、負の感情も含めて、感情を打ち明けられる環境づくりが重要になります。
具体的には、WEB会議やチャットにおいて、画像をつけて会話したり、「いいね」「ハートマーク」「88888(拍手の意味)」などを送り合ったりして、お互いを認め合う、共感する企業文化を醸成しましょう。
共感は、同情とは異なるという点には注意が必要です。同情は、相手を見下す姿勢につながり、マイナスの影響をもたらしてしまいます。
リモートワークで孤立させないためには、部下への声がけにも気配りが必要です。声がけによく使ってしまいがちな「何か困ったら連絡して」「最近どう?」はNGワード。こういった上司の言葉は、「この人は、私に興味がないんだな」と部下に受け取られてしまいます。声かけは具体的にわかりやすく、答えやすい内容にするべきです。「週末どうだった?」「お願いしていた資料作成はどこまで進んだ?」などと声をかけるといいでしょう。
信頼関係が築けているチームでは、「今ちょっといいですか?」という言葉が行き交っています。新規アイデアやイノベーションの創出は、「今ちょっといいですか?」という声かけで始まる雑談や相談から生まれることが多いのです。
リモートワークでも雑談が生まれる環境をつくる鍵は、上司や先輩側の表情とリアクションにあります。上司や先輩は、WEB会議で「口角を上げる」「前のめりになる」「アゴを引いてうなずく」ことを心がけてください。
人は、7割以上の情報を目から得ています。五感のうち、記憶に残る、思い出をよみがえらせる、感動を覚えることにおいても、視覚がメインです。リモートワークでは、目を楽しませる工夫(ファン要素)を取り入れて、コミュニケーションの円滑化を図りましょう。
具体的には、WEB会議の雑談タイムにペットを登場させたり、アバターや背景で遊んだりすることをおすすめします。また、メンバーで時間を決めて、一緒にオンラインフィットネスで楽しみながら体をほぐすのも効果的です。
テレワークにより労働時間が18%増加したというデータもあり、テレワーク残業、長時間労働が課題の一つとなっています。これを受けて、労働時間を削減する企業も増えていますが、労働時間を単に減らすことはおすすめできません。労働時間を削減した場合、社員のモチベーションが下がり、売上も下がってしまうからです。
労働時間を削減するのではなく、時間の「ぜい肉(無駄な時間)」を減らし、筋肉(価値の高い時間)」を増やす時間管理が求められます。そのためには、週に1回、15分を確保し、「今週何が達成できたか」「達成できなかった場合、原因は何か」を考える振り返りの時間をつくることが有効です。振り返りの時間をつくることで、労働時間の8%を削減できます。
時間の「ぜい肉」を落とすためのヒントをいくつかご紹介しましょう。例えば、派手なパワーポイント資料は無駄ですから、スライドごとの文字数や使用する色数を制限するなどして、効率的に作成するといいでしょう。また、多くの時間がとられるメール処理を効率化するために、CCのルールを決める、メールではなくチャットで用件を済ませる、といった工夫がおすすめです。
1週間の勤務時間のうち、実に42%が社内会議に費やされている、という当社の調査データがあります。それだけ、会議時間の効率化は大きな課題です。会議は「決定」「報告」「アイデア出し」の3つに分けられます。このうち、「筋肉」、つまり価値があるものは「決定」と「アイデア出し」であり、この2つを増やす必要があります。
そのために、アジェンダ・議題・目的が事前に共有されていない共有会議は廃止すべきです。また、決定会議においては、決定権限を持つ人を必ず参加させること、決定の方法を決めることを徹底します。また、利益につながるアイデア出しのためには、会議の冒頭5分を雑談にして、心理的安全性を高める仕組みをつくりましょう。このような工夫で、会議を量と質の両面から改革することが重要です。
今まではリモートワークはBCP、つまり、事業継続のためのものでした。しかし今後は、リモートワークを実施しながら売上を上げる、利益を出すことが求められます。リモートワークを成功・定着させるために求められることは次の3つです。
1.会話を増やす文化
2.行動目標を自ら見せていく姿勢
3.成果を評価する仕組み
今回ご紹介した7つのルールには、この重要ポイントが織り込まれています。大切なのは、まず行動を変えること。ご紹介した7つのルールのうち、1つでも構いません。ぜひ今週中に、御社でもトライしてみてください。
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