2019年10月17日、弊社新川本社(ユビキタス協創広場CANVAS)において、第141回オフィス移転セミナーを開催いたしました。
プログラム2ではスペシャルイベントとして、『仕事の「ムダ」が必ずなくなる 超時短術』の著者で、株式会社クロスリバー代表の越川慎司様を特別講師に迎え、「会社と社員が成長する『正しい働き方』の進め方」をテーマにご講演いただきました。
これまでに16万3千人ものビジネスマンの働き方を変えてきた越川様は、開始早々、「働き方改革は、目指さないでください」と明言。働き方改革の実態や各種データなどを交えながら、新たな付加価値(イノベーション)を生むための「時間の再配置」の事例をご紹介いただきました。
富士山には毎年20万を超える人が登っています。ところが、登頂した人のなかに、散歩がてら山頂まで行った人は、歴史上、一人もいないそうです。富士登山には、「富士山の頂上に行く」という明確な目標があり、それに向けて準備し、仲間と励まし合いながら山頂を目指します。
結論を言うと、働き方改革は富士山の頂上ではありません。働き方改革は目的ではなく、手段です。働き方改革は、目指さないでください。
それでは、働き方改革によって成功した会社は、全国でどのくらいあるでしょうか?現在、上場企業の9割が働き方改革に着手しています。そのうち、成功した会社は12%です。その12%の会社には共通したふたつの特徴があります。
・働き方改革の目的と手段を履き違えていない
・実現すべき定量的な目標が明確になっている
一方、働き方改革を目的にしてしまう会社は山ほどありますが、成功した姿を見たことがありません。また、成功の定義が決まっていなければ、当然、成功が訪れることはありません。
働き方改革に失敗している8割の会社は、「19時完全退社。売上は落とすな。意識を変えろ」と命じます。これは働き方改革ではなく、上から押し付ける「働かせ方改革」です。モノ消費の時代なら、それでも会社は儲かりました。
ところが、コト消費への変化が加速し、顧客のニーズが複雑化する現代では、そのような組織は成長できません。顧客のニーズを最も把握しているのは、顧客の最も近くにいる現場の社員です。彼らが自発的に考えて行動できる組織が、お客様の複雑な課題をスピーディーに解決でき、会社に成長をもたらします。
また、このようなデータがあります。働きがいのある人は、そうでない人と比べて業務効率が25%、目標達成率は1.6倍高いというものです。働きがいのある人は、会社の成長に貢献することを裏付けています。
会社はビジョンを示し、仕組みを改善し、新たな文化を作る覚悟を持つべきです。そして、現場の社員に自由と責任を与えましょう。社員たちはそこから得た学びを、次の行動に生かします。成果が出れば意識も変わり、自発的に成長するようになります。すると、社員たちに「働きがい」が醸成されていきます。それによって、働きがいのある社員たちが会社の成長に貢献する――「会社の成長」と「社員の幸せ」の好循環を機能させているのが、働き方改革で成功している会社です。
社員たちが何に働きがいを感じるのかを認識していなければ、働き方をいくら変えても、成功に至ることはありません。
日本人の働きがいは「承認」「達成」「自由」に集約されます。承認は、お客様からの感謝や会社からの信頼などです。達成は、売上目標の達成やプロジェクトの完遂などが該当します。自由は裁量権です。これらを使って、社員の働きがいを刺激する方法を紹介します。
まずは目標を設定してください。目標は業績ではなく行動を評価対象にし、目標値は定量的なものにします。そして行動した社員をほめて、承認しましょう。変化の激しい今の時代は、動かないことがリスクです。
目標を達成したらさらに承認し、達成を繰り返した社員には責任と自由を与えてください。そうすることで、社員の働きがいは確実に醸成されていくでしょう。
働き方改革は、単なる時短の奨励ではありません。新たな付加価値を生み、イノベーションを引き起こすための「時間の再配置」を行う取り組みです。働き方改革で成功する会社は、時間の再配置を実践しています。
皆様に明日から取り組んでいただきたいことは、「①業務の棚卸→②圧縮→③新たな付加価値の創造」です。
働き方改革を進める前に、まずはすべての業務の「棚卸」をして、排除する業務と簡素化する業務を決めましょう。そして、無駄な時間を徹底的にそぎ落とし、労働時間を「圧縮」してください。
ここで満足してはいけません。「圧縮」によって生じた時間を、今度は「新たな付加価値の創造」に割り当ててください。無駄を削って生み出した時間で、新しいビジネスモデルの開発や人材の育成・スキルアップを行い、未来に投資するのです。
これが働き方改革でやるべき時間の再配置です。ここからは、時間の再配置の成功事例を紹介します。
社員の労働時間を奪っている業務の1~3位は、「社内会議」「資料作成」「メール」です。どの会社においても、順位は違えど、この業務が上位を占めます。この3つの業務にメスを入れましょう。
最初にやるべきことは、社内の意思決定プロセスの変更です。よりコンパクトにしてください。ある企業では、営業課長の決済権限を1,000万円から1,500万円に引き上げただけで、会議と資料作成とメールの数は大幅に減りました。現場に裁量権を与えたことで承認者数が減らし、意思決定プロセスをコンパクトにできたからです。
また、メールはすぐにやめて、明日からチャットにしましょう。メール特有の挨拶文や季語などは、情報伝達のシーンでは不要です。もしメールを使うのであれば、Ccのルールを決めてください。誰でも手当たり次第にCcに入れてしまうと、メールのスレッドは増えるばかりです。どこかでダイエットしなければ、延々とメールの作業に追われることになりかねません。
資料作成の目的は、資料を作り上げることでも、情報を伝えることでもありません。相手と共鳴して、思い通りの行動を起こさせることです。
全国826人を対象に、意思決定に影響を及ぼした資料について調査しました。その結果をAIに分析させてみたところ、実に面白い答えが返ってきました。
分析によると、人を動かす資料作成の法則は、「1スライド105文字以内、カラーは3色以内、まずは手書きでストーリーを書いてからパワーポイントで作成すること」です。この法則を8社4,500人で実際に試したところ、資料作成の時間を20%削減でき、商談成約率は22%アップしました。資料の作成方法の見直しは、労働時間圧縮と売上拡大を一挙両得できる「儲け方改革」です。
会議には、アイデアを出す会議、意思決定をする会議、情報共有をする会議の3種類しかありません。
最も売上に直結するアイデアを出す会議では、「いいアイデアを出せ」ではなく「なんでもいいからアイデアを出せ」と言ってください。そして、誰かがアイデアを出したら必ず「いいですね」と笑顔で大きくうなずいてください。アイデアは質ではなく量が重要です。心理的な安全性が担保された状態であれば、アイデアはどんどん生まれます。
アイデアを出す会議と意思決定をする会議は混同させず、別々に開いてください。もし難しければ、前半はアイデアを出す会議、後半は意思決定をする会議と区切りましょう。それだけで会議の時間を18%削減できます。
また、意思決定の会議では、多数決や投資対効果、実現可能性などの採決方法を決めた上で、限られた人数で行ってください。そして、情報共有だけの会議は今すぐ廃止してIT化しましょう。
働き方改革を進めるときは、定量的なゴールを設定し、進捗を現場と経営陣で一緒に確認しましょう。これは、励まし合って山頂を目指す富士登山と同じイメージです。柔軟な働き方の実現やITによる業務の効率化などのマイルストーンを設け、順々に踏破した先にゴールである離職率や利益率の改善に到達する、という「山登り目標設定」をぜひ実践してみてください。
そして、皆様に求めたいのは、意識を変えることではなく、行動を変えることです。「今日、何かをやってみた」が成功の指標です。行動を変えたら「意外とよかった」という言葉が出たら、意識が変わっている状態です。意識が変われば無駄なものは確実に減り、生産性が高まります。生産性が高まれば、会社にとっても、社員にとっても、未来の選択肢が増えます。これが、みなさんが働き方を変える目的です。
内田洋行は今後も「働き方変革」による経営課題の解決をはじめ、皆様のお役に立つセミナーを開催いたします。ぜひご参加ください。