[セミナーレポート] 第127回 オフィス移転セミナー

新川本社(ユビキタス協創広場CANVAS)

11月27日、弊社新川本社(ユビキタス協創広場CANVAS)において、第127回オフィス移転セミナーを開催いたしました。
今回、ご登壇いただいたのは、三鬼商事株式会社・鯉川様、Sansan株式会社・角川様、パワープレイス株式会社・古野様。セミナー終了後は、弊社の新川第2オフィスを見学する「働き方変革」実践体感ツアーも実施し、参加者の皆様にご好評をいただきました。

【Program1】知っておきたい賃貸オフィス市場の動向 ~ダイナミックに変化を遂げてきたオフィスの展望~

三鬼商事株式会社 常務取締役 鯉川英一 様
三鬼商事株式会社
常務取締役 鯉川英一 様

まずは、気になる賃貸オフィス市場の動向について、不動産仲介大手の三鬼商事株式会社 常務取締役の鯉川英一様よりご講演をいただきました。
通常、市場においてベストと言われる平均空室率は5%前後と言われていますが、現在、東京ビジネス地区(5区)をはじめとする主要都市では3%台。このままいくと2%台になりそうな流れになっており、賃料も徐々に右肩上がりになっています。2020年にかけて大型再開発による延床面積1万坪以上の物件の竣工も予定されていますが、すでに多くの契約が決まっており、残念ながらオフィスビル不足の解消にはなりそうもありません。
一方、相次ぐ新築ビルの建設により、働きやすさをサポートするハイスペックな物件も増えてきていますので、今後も賃貸オフィスビル市場の動向は注視が必要です。

【Program2】「それさぁ、早く言ってよ~」のワークスタイル変革

Sansan株式会社 CWO(Chief Workstyle Officer) 角川素久 様
Sansan株式会社 CWO(Chief Workstyle Officer) 角川素久 様

今回のスペシャルイベントには、「それさぁ、早く言ってよ〜」のテレビコマーシャルでおなじみの法人向けクラウド名刺管理サービスおよび個人向け名刺アプリの提供で急成長を遂げているSansan株式会社のCWO(Chief Workstyle Officer)角川素久様にご登壇いただき、同社で取り組まれているワークスタイル変革についてお話いただきました。

企業理念を主軸とした三位一体のワークスタイル変革

三位一体のワークスタイル変革

Sansan株式会社様の創業は2007年。わずか5人でのスタートでした。11期目を迎える現在、社員数は約300人。その成長過程において、社内コミュニケーションのフラット化と情報共有、エンジニアの生産性向上、商談件数の増加、インフラの可用性向上といった課題が生まれ、その都度、ワークスタイル変革を意識したさまざまな取り組みをはじめられました。
その主軸となっているのは、同社の企業理念「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」。ミッションに自ら掲げている「働き方革新」をきちんとやろうという思いからでした。それを形づけたのが、下図の「三位一体のスタイル変革」です。「なぜ働き方を変えるのか」という明確な経営の意識によって、組織の価値観や意識を変化させ、生産性を向上させる制度を整備し、その環境を実現するためのツールを導入するということ。そして、これらの3要素が相互に影響し合い、絶えず変化していくことが、ワークスタイル変革を進める上で重要と位置づけたと言います。それに添ったビジョンをすでに、企業理念として持っていたことが、変革がスムーズに進んだ一要因だったといえるでしょう。

固定から柔軟へ。仕事をする「場」を段階的に変えることで、自然な移行に成功

現在、在宅ワークなどの働き方の多様化を推進しているSansan株式会社様ですが、創業当時はただ机が並んでいるだけのごく普通なオフィスだったそうです。その後、社員の増加に伴って移転する際、社内にフリースペースを作るなどして、仕事をする「場」を固定から柔軟にと段階的に変えてこられました。
その節目のひとつが、2010年10月に徳島県の山間の小さな町にある古民家を改装して開設したサテライトオフィス「Sansan神山ラボ」です。
「Sansan神山ラボ」のコンセプトは「ワークとライフ、都会と田舎、利便性と自然の融合」。当初は実験的な試みでもあったようですが、生産性向上、リモートワークのリテラシー向上、新しい働き方の実験と創造、人材採用・既存社員のリテンション、革新的な企業文化の熟成といった効果が出ているといいます。さらに、サテライトオフィスに滞在した社員が元気になって帰ってくるという思わぬ副産物も。通勤の負担から逃れ、静かで空気がおいしい環境で規則正しい生活を送ることで、心身ともに健康的になったということです。 現在、Sansan神山ラボは神山町や徳島市内に自宅を持つ社員の常勤、2週間から1か月程度滞在する長期滞在のほか、2泊3日程度の合宿、新入社員研修などに用いて活用されています。
その後、長岡、京都、札幌にもサテライトオフィスを設置。リモートワークで働くことを前提とした地元の人材の採用もうまくいっているそうです。

神山ラボで受けたインスピレーションも導入し、表参道本社に、知識創造空間を設置

Sansan株式会社様が本社を現在の青山に移されたのは2014年3月。社員が120人を超えたときでした。その際のオフィスデザインコンセプトは「We are Sansan」。そして、Sansanらしさを表すキーワードは「働き方を革新する」としました。
その象徴的な場所が、Gardenと名付けた多目的スペースです。当初のレイアウト設計では、別々に設けていたリフレッシュルーム、セミナールーム、社内会議室を兼用する形で1ヶ所にまとめて広い多目的スペースを確保。世界の変わった植物をそこかしこに配置したこのGardenでは、社員それぞれが多様な働き方を実践しており、自然に人が集まることから勉強会なども活発化したといいます。
そのほか、エントランスやウェイティングスペースなど、各所に「Sansanらしさ」を散りばめたオフィスは、2014年度第27回日経ニューオフィス賞を受賞されています。

多様な働き方を実現し、推進するためのツールの導入と社内制度整備

「神山ラボ」や表参道本社のようにリラックスしつつも創造力が沸くという「場」をつくっても、そこで成果を出すには、ツールの導入が不可欠です。
Sansan株式会社様では、商談件数が増加したことへの対応として、問い合わせから商談、受注までの全セールスプロセスを非対面で行えるオンライン営業を実施。また、場所に依存せずコミュニケーションが取れる仕組みとして、BYOD(個人所有のデバイスの業務利用)とCOPE(社有でバイスの個人使用)を併用して推進するほか、ビデオ会議や社内SNSの導入など、ITツールを積極的に導入しています。
さらに、そうしたツールの使い勝手を高めるため、PCやタブレットのデータをケーブルレスでプロジェクターやモニターに投影できる無線対応プレゼンテーション用機器「wivia」(ワイビア)も採用。配線が不要なため、レイアウトに縛られることなく、状況に応じた場所でプレゼンテーションや情報共有ができる環境を構築しています。

ツールも制度も段階的導入することが成功の秘訣まずはやってみて、ダメなら止める勇気も必要

最後に「ワークスタイル変革のために必要なこと」として、角川様がポイントにあげたのは、目的を明確にする、自社に合ったことをやる、ツールも制度も段階的に導入する、の3つです。
何のために働き方を変革するのかを突き詰めたうえで、他社の真似ではなく自社が大事にしていることの実現を目標に掲げること。その実現に向けては、一気に理想を追い求めるのではなく、まずは手近なところからやってみて、改善しながら進めていくことが大切だと言います。ことにITツールの場合、後進の製品のほうがスペックは高く操作性が良いということが多々あります。制度においても、実際に運用をはじめるとさまざまな想定外のことが起こります。「改善をしてもうまくいかないというときは、止める勇気も必要です」とまとめられました。

【Program3】変革を促す「オフィスづくり」の進め方 ~「変革」という言葉だけが独り歩きしていませんか?~

パワープレイス株式会社 エンジニアリングセンター プロジェクトマネージャー 古野嘉一郎
パワープレイス株式会社
エンジニアリングセンター プロジェクトマネージャー 古野嘉一郎

プログラム3では、内田洋行グループでデザイン・設計を行っているパワープレイス株式会社 エンジニアリングセンターのプロジェクトマネージャー・古野嘉一郎が、オフィスづくりの動向および社員様参加型の「変革を促すオフィスづくり」のプロセスを、実例を通じてご紹介しました。

働き方変革は経営課題解決への取り組み。よってめざす方向から考えることが重要

10年間前の一般的なオフィスは、ユニバーサルレイアウト方式と言われる机を同じように並べるスタイル、つまり施設を維持すること、コストを削減することに主眼をおき、場所を作ってそこに人をはめていくものが主流でした。
現在は、働き方変革をキーワードにオフィスづくりに取り組んでいる企業様が増え、それにともなって、オフィスづくりの目的も、多様な人材の維持・獲得やコミュニケーションの活性化、イノベーションの創出などを挙げる企業様が増えてきたことを実感しています。
つまり働く人、その時々の働き方に応じて、ベストなパフォーマンスを発揮できるオフィスづくり求められているのです。現在の働き方・働く場から議論をするのではなく、今後の将来にどういった働き方をするか、そのためにどういった場が必要かの観点で議論をしていくことが必要となります。
将来像を明確に描くには、経営トップの考え方、トップの考えるあるべき姿をしっかり抑えることが必要です。それを理解したうえで、社員がどういった働き方をしなければならないのかをオフィス計画の中で議論をすることが大切なプロセスとなっています。

プログラミングの段階で、様々な角度からより多くの正確な情報をインプットすることを重要視

働き方変革は経営課題を解決する取り組みのひとつであり、そのためのオフィスづくりは企業様がめざす方向性から考えることが必要です。しかし、実際に要望として出るのは、現状の改善策ばかりということも少なくありません。
そこで、パワープレイス株式会社がオフィスプロジェクトに関わる中で最重要視しているのは、プログラミング(調査/分析、基本計画)の部分。ここでどれだけ多様な正確な情報をインプットできるか否かが成功の鍵になります。トップインタビュー、ワークショップ、ヒアリングなどによる調査を通じて、そこで働く人の思いを導き出し、分析し、議論することで、なぜ働き方を変わらなければならないのか、どう変えていくかを浮き彫りにすることをサポートする。それが、オフィスづくりをする立場として、お客様によりフィットした働き方、働く場の提案をするにあたって欠かせないことと考えています。

働く人の働き方に応じたオフィスはとことん議論し、追求することで生まれる

ワークショップなどの議論を通して、ありたい姿、働いているシーン、それを具体化する施策を抽出したうえで、分類あるいは優先付けをして設計に展開できるように要件化することまでをプログラミングとして、企業様のプロジェクトメンバーを中心とした社員の皆様に寄り添って行うのが、パワープレイス株式会社のスタイル。単にフリースペースをつくりたい、ではなく「何のために?」「どんな?」を追求することで、その企業様ならではの機能を備えたフリースペースが提案できるというわけです。 またアンケート調査も併せて行い、議論だけでは詰まってしまう部分の判断材料として活用しています。さらにアンケート調査を竣工後も定期的に行うことにより、社員満足度を測り、不具合箇所の改善にも活用しています。

実際にオフィスづくりをサポートさせていただいたお客様のプロジェクトを事例にしての説明はリアルで、多くの参加者様の興味を引く講演となりました。

「働き方変革」実践体感ツアー

セミナー講演のあとは、内田洋行が2012年から自社実践している「CHANGE WORKING」の現場をツアー形式でご案内しました。

内田洋行は今後も「働き方変革」など経営課題の解決を伴うオフィス移転をテーマとして、皆様のお役に立つセミナーを開催いたします。ぜひご参加ください。

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