電話やネットワークは、オフィスの重要な通信インフラです。さまざまあるオフィス移転の工程のなかでも、とりわけ確実な移設が大切になります。この記事では、オフィスの移転 を控えた総務ご担当に向けて、電話の移転手順をわかりやすく解説します。煩雑な工程になりやすい電話の移転を、円滑に完了させるヒントとしてご活用ください。
オフィスの移転にあたり、まず確認しておきたい4つの項目を解説します。
オフィスの移転は現状の把握に始まり各方面の業者との調整、手続きなど多くのタスクが発生します。
移転予定日から逆算して7~8か月前、余裕を持つなら1年以上前からスケジュールを組みましょう。
電話の移転は、1か月~1か月半ほどを見積もります。
現在のオフィスで契約中の電話会社と回線種類を調べ、移転先でも引き続き使用するか検討します。オフィス移転は、契約を変更し通信費を節約するチャンスです。
契約中の電話会社および回線種類は、電話の利用明細を見ると分かります。
現在のオフィスで使用している電話機器の種類と台数を調べ、移転先で電話機の増設・処分が必要か検討します。
電話機の機種が古く維持コストがかかっている場合は、オフィス移転を機に、機器の入れ替え検討もおすすめです。
移転先となるオフィスのレイアウトとネットワーク環境を調べます。
有線でネットワーク環境を構築する場合、パソコンや主装置(PBX)の場所、配線ルートを検討します。無線環境を構築する場合は、電波の干渉や遮蔽物の有無に注意が必要です。
社内サーバーがあるオフィスでは、サーバーの移転計画も必要です。まず、現在のオフィスで使用中の回線種別と数を確認し、移転先での使用計画を立てます。
移転先のオフィスで回線工事が必要となる可能性も踏まえ、早めに手配を進めましょう。
オフィスの移転に伴って電話番号が変更になるかどうかは、NTTの窓口に問い合わせれば分かります。電話番号はオフィスの住所を管轄するNTT基地局により決まるため、同一市区町村内の移転でも番号が変わる場合があります。
電話番号が変わる場合、以下の準備も進めましょう。
オフィスの電話を移転させる手順を、8つのステップに分けて解説します。
電話の移転スケジュールは、事前に確認した計画を踏まえて決定します。電話がつながらない時間が最短になるよう検討しましょう。業者が混み合い希望日に工事ができない可能性を踏まえ、早めに移転を申し込みます。
移転が決まったら、現在のオフィスで契約中の電話会社に、電話移転の旨を申し出ます。遅くとも、工事予定日の1か月前までに申し出を済ませましょう。
その際、必要な手続きについて案内があります。不明点があれば、あわせて解決しておきます。
電話の移転工事は、専門業者に依頼します。業者は次の3点を比較し、決定しましょう。
電話以外のオフィス移転も一括して請け負う、オフィス移転専門業者への依頼もおすすめです。
ビジネスフォンに欠かせない、主装置(PBX)の設置場所を決定します。主装置の設置場所は電源を常時問題なく供給でき、直射日光や高温多湿を避けた場所にしましょう。
移転前に、工事業者と移転先オフィス内部を下見します。工事当日の段取りや施工イメージをすり合わせ、作業を円滑に進めることが目的です。
工事業者との日程調整は、下見日の決定までに2週間、さらに下見から工事までに2週間が目安です。
NTTは主装置(PBX)の設置および設定と、屋内の配線工事を担当します。移転先オフィス内に立ち入っての工事となるため、立ち合いが必要です。
NTTの工事が済むと、電話移設業者が工事を行います。主装置(PBX)とオフィス内の配線を接続し、それぞれの電話機で内線・外線を利用できるようにします。
電話はオフィスの大切な通信インフラです。工事がすべて完了した後に、通話テストをして通信状況を確認しておきましょう。
不具合が見つかった場合は、工事業者に修繕を依頼します。
サーバーをはじめとする社内ネットワークの移転では、次の3つの作業が必要です。
それぞれの移転方法を確認しておきます。
移転作業を担えるエンジニアが社内にいなければ、オフィス移転の専門業者に依頼したほうが確実かつ効率的です。
オフィスで使われている電話回線の種類を解説します。現在、4つの回線種別があります。
アナログ回線は、1回線で1つの着信を受ける回線です。主に家庭で使われています。
アナログ回線は、黒電話の時代からあるダイヤル回線と、プッシュホンに対応したプッシュ回線に分かれます。
インターネットの利用には、別途回線の敷設が必要です。
ISDN回線は、音声をデジタル信号に変換してアナログ回線で伝えます。1回線で2つの着信まで受けられます。
ISDN回線は、2024年1月にサービス終了となります。現在、ISDN回線を使っているオフィスは、移転を機に回線の切り替えをおすすめします。
IP電話回線は、インターネット網を使った通話回線です。音声を電気または光の信号に変換して伝えます。
インターネット網を使用するため、通話距離にかかわらず通話料が一定である点がメリットです。
インターネット通信に使われる光ファイバーを利用した電話回線です。インターネット網を使って通信するIP電話回線の1種と考えて支障ありません。オプションが充実しており、ニーズに合わせて便利なサービスを利用できます。
オフィスの電話移転でかかる費用の目安を解説します。NTTの工事と、電話移転の工事とに分けて見てみましょう。
NTTの電話回線工事にかかる費用は、以下のとおりです。
項目 | 費用(税込)※NTT東日本の場合 |
---|---|
基本工事費 | 4,950円~ |
交換機等工事費 | 1,100円 |
屋内配線工事費 | 既設配線を利用:2,640円 |
新規に配線敷設 | 5,280円 |
機器工事費 | 機器により異なる |
電話の移転工事にかかる費用は、業者によって異なります。一般的な目安は、以下のとおりです。
項目 | 費用 |
---|---|
作業員人件費 | 7,000~10,000円/人 |
主装置設置費 | 7,000円~15,000円/台 |
電話機設置費 | 35,000円~/5台 |
FAX接続費 | 7,000円~/台 |
屋内配線費 | 15,000円~/30m |
回線収容費 | 15,000円~/3回線 |
材料費 | 5,000円~ |
その他 | 実費 |
電話移転工事にかかる費用は、複数業者に見積もりをとり検討しましょう。
オフィスの電話移転に便利なサービスを3つ紹介します。
NTT「ボイスワープ」は、旧電話番号から新電話番号への電話転送サービスです。工事不要、オフィス向けは月額料金880円(NTT東日本)で利用できます。なお、利用期限はありません。発信者から転送元までの通話料金は発信者が、転送元から転送先までの通話料金は契約オフィスが負担します。
NTTの自動応答サービスは、旧電話番号への着信に新しい番号をアナウンスします。申し込みをすれば無料で利用できます。サービス期間は3か月間です。
事前に申し込んでおけば、電話の移転から7日間、新旧両方の番号が利用できるサービスもあります。旧オフィスから電話機を取り外した場合、7日以内でも旧電話番号は利用できなくなります。
作業工程が多く複雑なオフィスの電話移転は、クラウドPBXが負担を軽減します。クラウドPBXは、クラウドに電話回線の主装置(PBX)を設置する手法です。移転先で電話回線を敷設する必要がなく、スムーズに移転を完了できます。
外線・内線などのビジネスフォン機能、電話番号の引継ぎ、市外局番のある電話番号の使用も可能です。
クラウドPBXの4つのメリットについて、詳しく解説します。
クラウドPBXは、電話回線を使いません。インターネット回線で通話をつなぐため、電話回線の敷設工事が不要です。インターネットを介して登録された端末なら、国内外どこでも場所を問わず接続できます。
クラウドPBXなら、取得した電話番号を全国どの地域でも利用できます。インターネットを介しており、電話番号が地域の電話局に依存しないためです。移転先で同じ番号を使いたい場合、通信事業者に事前申告と工事を依頼します。
クラウドPBXで接続された電話機同士の通話は、内線扱いにできます。スマートフォンを内線端末化することも可能です。従業員同士の通話を内線にできるため、通話料の負担を軽減できます。
従業員のスマートフォンをクラウドPBXで接続すれば、従来のようにデスクに据え置く電話機が不要になります。電話機の配置を考慮せず、自由にオフィスのレイアウトを決められます。
オフィスの電話移転は、電話がつながらない期間を最短にする計画で進めます。工事業者の選定から移転手続き、同時にネットワーク環境の移転も考える必要があり、多岐にわたった綿密なスケジュール立案が欠かせません。
些細なミスで電話がつながらなくなる事態を防ぐためにも、オフィスの電話移転は専門業者への依頼がおすすめです。
内田洋行はオフィス移転のプロフェッショナルです。電話やネットワーク環境の移転はもちろん、従業員が働きやすく生産性を高めるオフィス空間の構築をご提案します。オフィス移転を機に、ICTを活用した働き方変革も進めてみませんか。
[2024.1.17公開]