いま、働き方が再定義されようとしています。テレワークから出社回帰、働く場も多様化し人とのかかわり方も変わっていくなか、自分らしく、よりハッピーに働くにはどうしたら良いのでしょうか?連載コラム「働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~」では、株式会社圓窓 代表取締役 澤円(さわ まどか)さんと一緒に「はたらく」について考えていきます。
こんにちは、澤です。
「心理的安全性」って言葉を聞いたことない方はいませんよね。
ビジネスの現場において、わりと最近よく見かけるようになった言葉ですが、「それってメンタルケアの話ですか?」とか「なんだか甘やかす話なんじゃ?」と思っている方もいるかもしれません。
これは実は、「めちゃくちゃ仕事の成果に直結する」話なのです。
心理的安全性とは、「このチームで発言しても、自分がバカにされたり責められたりしない」と思える状態のこと。
最初にこの言葉を提唱したのは、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソン教授です。
彼女の研究では、「優秀なチームほどミスをたくさん報告していた」という結果が出ました。ミスを言いやすい=心理的に安心、ということですね。
心理的安全性にまつわる書籍をたくさん出版されているので、手に取っても手はいかがでしょうか。
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・恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす
・チームが機能するとはどういうことか──「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
この心理的安全性が、実際のビジネス界隈で注目されるようになった大きなきっかけは、Google の「Project Aristotle(プロジェクト・アリストテレス)」。
何百というチームを調査した結果、パフォーマンスの高いチームには共通して「心理的安全性」があるとわかりました。
スキルや経験より、「安心して発言できること」が一番だったんです。ちょっと意外ですよね。
Google のような大成功しているビッグテック企業といえども、中身を動かしているのは人間です。
人間である社員が安心して働ける職場でなければ、いかに Google といえども、いい結果を生み出し続けることはなかなかできないでしょう。
ボクの古巣であった Microsoft では、いっときこの心理的安全性がかなり脅かされていた時期があり、その時の会社の状況は散々なものでした。
実体験として心理的安全性が必要であることが学べたのは、ラッキーでしたけどね。
「とはいえ、心理的なことって見えにくいし、どうやって測ればいいの?」という疑問もありますよね。
これ、けっこう現場でよく出る質問です。
ボクのおすすめは、「空気を点数化」するくらいのつもりで、簡単な問いをチームで共有してみることです。
たとえば、「最近、会議で自分の意見を遠慮なく言えたと感じますか?(5点満点)」みたいな問い。
数値化が目的ではなく、「会話のきっかけを作るための問い」として活用するのがポイントです。
この問いを出すだけでも、「あ、自分は遠慮してたかも」と気づいたり、空気が少し和らいだりするんですよね。
ボクがこの連載でもよく言ってる「ご機嫌に働く」という状態とも、この心理的安全性は相性がいいです。
上司がいつもピリピリしていたら、そりゃ会議で黙りたくもなります。
でも、笑いがあったり、ちょっとしたミスも許される空気があると、チームは自然と前向きになります。
心理的安全性があると、「とりあえずやってみようか」が許されます。
生成AIの使い方とも似てますよね。「完璧な聞き方」じゃなくて、「いろいろ試してみる」ことが前進を生む。
その「試す勇気」を支えているのも、やっぱり安心できる空気です。
Fail Fast という言葉は、スタートアップの鉄則としてよく挙げられます。
何をするにも、とにかく早めに(かつ小さく)失敗して、どんどん学びを蓄積していく。
そして、前進するスピードをどんどん上げていく。
今の日本にもっとも必要なマインドセットであり、アクションの前提ではないでしょうか。
「誰かの成功をちゃんと喜べる」
「意見が違っても関係が壊れない」
こういうことを実感できる日常の積み重ねが、ものすごく大事です。
心理的安全性の土壌を脅かす要素として、もうひとつ重要なのが「嫉妬」です。
大人の社会は嫉妬でできているといっても過言ではありません。
嫉妬がビジネスパーソンの行動に大きく影響していることは、研究もされていますし、皆さんの周囲を見回してみてもたくさんの事例が見られるでしょう。
* 参考論文:「Workplace Envy: An Investigation of its Effects on Job Performance and Creativity」Journal of Organizational Behavior, 2013
健全な嫉妬は、成長意欲を促す燃料にもなり得ますが、嫉妬に支配されてしまうと、相手の足を引っ張ろうという意識にもつながりかねません。
また、意見がぶつかってしまったときに相手を打ち負かそうという意識が強くなりすぎると、本来のビジネスの目的や、マーケットや顧客を置いてけぼりにしかねません。
仕事は、誰かに喜んでもらうためにするものだという原理原則を忘れないようにしたいものですね。
「安心して話せる」
「弱さを出せる」
「変なことを言っても大丈夫」
そんな空気があるかどうかは、チームにとって最強の武器になります。
ボクがマネージャー研修をするとき、「自分の失敗談はどんどん出してください」と必ずおススメしています。
そうすることで、「あ、この人も人間なんだ、失敗をすることあるんだ」という当たり前のことに気づいてもらえます。
そうすれば、「失敗は許容されるもの」という意識が醸成され、Fail Fast が定着していくことになるのです。
「そんなことしたらナメられるのでは・・・」って心配する方もいらっしゃいます。
でも、「ナメる」とか「ナメられる」とかが判断基準になるような、修羅の世界みたいな中で働いるのだとしたら、それこそ根本から見直さないといけなさそうですよね(笑)
心理的安全性は“与えるもの”ではなく、“一緒につくるもの”。
ぜひ、あなたのチームでも今日から少しだけ、空気に点数をつけてみてください。
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[2025.6.10公開]