オフィス分野
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「働き方改革」の号令のもと、多様な働き方への対応や生産性向上を課題とする企業は少なくありません。その解決策の1つに、ABWがあります。本記事はABWの導入を検討中のオフィスに向けて、ABWの全体像や導入成功事例、メリット・デメリット、注意点を解説します。自社の課題を解決する手段としてABWを検討するヒントとして、ご活用ください。
はじめにABWの概要を解説します。似た概念であるフリーアドレスとの違いも、同時に押さえておきましょう。
ABWとは仕事内容に合わせて、従業員が自由に働く場所を選べる働き方です。「Activity Based Working」の頭文字を取った言葉で、オランダのコンサルティング企業であるVeldhoen + Companyが提唱しました。
オフィスにあるミーティングスペースや集中ブースのほか、リモートワークや在宅勤務など、さまざまな就労場所を包括します。仕事内容に合った場所で働くことで、生産性の向上や従業員同士のコミュニケーション活性化などが期待できます。
ABWと似た概念にフリーアドレスがあります。
フリーアドレスとは、オフィスに出社した上で、働く際の座席を自由に選べる仕組みです。限られたオフィススペースの効率的な利用に主眼を置いています。
一方で、ABWはオフィス出社を前提としません。従業員がより主体的でクリエイティブに働ける環境を創出することを目的に、出社するかどうの判断も従業員に委ねられます。
国内のABWは、コロナ禍で注目されるようになりました。
人との対面を避けることが推奨されたコロナ禍は、働き方や働く場所の変化を引き起こしました。同時に、働く場所を制限せず、自由に選べるABWのメリットも広く知られるようになります。
ABWを導入すると、従業員は仕事内容に合わせて最適な就労場所を選定できます。仕事の能率・効率が高まることに加え、必ずしも出社を義務付けない働き方は、従業員に対する働きやすさのアピールにもつながるといえるでしょう。
先行してABWを導入し、成功した企業の事例を6つ紹介します。
東日本旅客鉄道株式会社様では、多様で柔軟な働き方と新たな価値創造、イノベーションが生まれるオフィスづくりが課題でした。
新オフィスへの移転をきっかけに、ABW推進につながるオフィスを実現します。バリエーション豊富なスペースを設置し、フロア同士を回遊できる動線を新設します。食堂やレセプションエリアすらも、可変性の高い空間としました。
新しいオフィスは「仕事がしやすい」「生産性が上がる」と、従業員に好評です。ABW下でも出社を選ぶ従業員が多く、従業員同士の気軽なミーティングも活性化しています。
オリックス銀行株式会社様では、オフィスを全面的にリニューアルする過程で、企業の将来的な変化にも対応できる多様で可変的な空間を実現します。
リニューアル成功の秘訣は、オープンオフィスとABWの導入です。オフィスにあった部署間の壁を取り除き、広がりを感じさせる空間としました。従業員は業務に合わせて働く場所を選択しやすくなり、従業員同士のコミュニケーションも活発になります。
ABWを前提とした設計は、座席数を以前の7割にまで抑制。空いたスペースを多様なスペースとして利用し、ABWの推進に効果を発揮しました。
日本無線株式会社様は、本社事務所のリニューアルを機に、働き方改革と企業の成長を持続させる土壌づくりを推進しています。
ABWとフリーアドレスを導入し、バリエーション豊富なオフィススペースを実現しました。クイックミーティングコーナーや、オフィス中央にある開放的なラウンジはABWのシンボル的存在です。
オフィスに対して従業員が主体性を持ち、働き方をアップデートし続けるための集まり「JRCコレクション」を中心に、オフィスをさらによくしようという空気が満ちています。
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社様は、オフィスリニューアルのコンセプトを「ワイガヤ」としました。従業員がワイワイガヤガヤと、気軽に議論しながらイノベーションを生み出せるオフィスにしたい、との思いからです。
新しいオフィスにはABWを導入し、プロジェクトスペースやカフェスペースをはじめとする「ワイガヤ」を実現する仕掛けを設置します。
その結果、よりよいオフィス環境の維持に向けて従業員全体が協力的になり、次なる進化に向けてオフィスが動き続けています。
業務拡大により人員が急増し、オフィスの過密化と生産性低下が課題だったのが、アライドテレシス株式会社様です。広々と開放的なオフィスにしたことで、誰がどこにいるか一目瞭然になり、従業員同士のコミュニケーション活性化が実現します。
フリーアドレスと業務に合わせて座席を選べる仕組みも、オフィス全体の風通しのよさにつながっています。
新しく設置したミーティングルームは、オフィス外からも即時予約が可能なシステムを導入しました。限られた時間とスペースの有効活用に貢献しています。
ブラザー販売株式会社様はオフィスリニューアルにあたり、従業員の希望を丁寧に設計に反映しました。実際にオフィスで働く従業員の希望は、生産性向上に直結するヒントが多くあります。オフィスプランに取り入れたことで、部門やエリアを超えたコミュニケーションが活性化しました。
また、比較的オフィスの滞在時間が長い女性向けの配慮も盛り込みました。「本物の観葉植物が会話のきっかけになる」「アロマを配合した空調によってリラックス効果が期待できる」といった、付加価値も生まれています。
ABWの導入にあたって、メリット・デメリットを押さえておきましょう。
ABWは業務内容に合わせ、就業場所を従業員自らが選び、働きます。1人ひとりが主体性を持って業務にあたれれば生産性が高まるでしょう。働く場所を選ぶ裁量を与えられた従業員が高い満足感を得られ、企業への帰属意識が高まることも期待できます。
出社する従業員が減り、その分のオフィススペースとコストを節約できる点もメリットです。
ただし、ABWは勤怠管理や従業員評価をしにくくなる可能性があります。制度の整備にかけたコストと手間に見合った効果があるかどうかが見通しにくい点も、注意が必要です。
詳しくは以下の記事も参考にしてください。
ABWとは？フリーアドレスとの違いやメリット・デメリットなどを解説
ABWに役立つオフィスレイアウトのアイデアを、4つ紹介します。
雑音と音漏れを防ぐ効果を持たせた半個室は、Webミーティングや集中作業で活用可能です。人事や財務など、オープンスペースでは執務しにくい秘匿性の高い仕事にも向いています。
Webミーティングや集中執務向けには、簡易的なオープン型や完全個室など、さまざまなバリエーションがあります。可変性の高い什器を用い、従業員の働き方に応じてフレキシブルに利用できる柔軟性を持たせる方法もおすすめです。
1対1で行うミーティング（1on1）は、多くの企業で取り入れられています。従業員の個人情報に関わる話題も扱う場面が多いため、1on1専用にプライベート感を重視したスペースを設置します。
ブースを壁で仕切り、会話が外に漏れない工夫を施します。防音性の高い素材の利用もおすすめです。
あるときは1on1に、またあるときはWebミーティングにと、多様な活用を想定したオフィスプランも利便性が高いでしょう。
ラウンジは、従業員のコミュニケーションやリラックスを目的として設置します。居合わせた従業員同士の雑談から、新しいアイデアやイノベーションが誕生することも期待できます。
気軽なコミュニケーションやリラックスには、執務スペースとは気分を変えやすい工夫が大切です。レイアウトや家具・什器の選定、色使いなどを工夫し、オフィス内のメリハリを意識しましょう。落ち着けるラウンジがあれば、ゲストを招いてのミーティングやキックオフなど、多彩な用途にも活用できます。
ABWでは、従業員が業務の合間にリラックスできるスペースの設置もおすすめです。リフレッシュできるスペースは、従業員がふらっと立ち寄ってアイデアを創出し、インスピレーションが湧く場所としての機能が期待できます。
「ほっと一息つけるカフェスペース」「最新の書籍や雑誌があるライブラリー」など、オフィスの個性を表現できる場所でもあります。
リフレッシュスペースには、思わず立ち寄りたくなる仕掛けが大切です。オフィスリニューアルにあたり、アイデアが光る場所でもあります。
ABWを導入し成功させるには、押さえたいポイントが3つあります。それぞれを詳しく解説します。
まず、ABWを導入する目的を明確に言語化します。
ABWは、現状のオフィスが抱える課題を解決する1つの手段に過ぎません。オフィスの課題を整理し、そのためになぜABWが必要なのかを明らかにしましょう。
ABWの導入を目的にしてしまうとABWの狙いや効果性が浸透せず、形ばかりのABWになってしまいます。
ABWを導入しても、従業員が誰も利用しなければ効果はあらわれません。ABWを導入する前に、オフィスの使いやすさや感じている課題など、働き方の現状と希望を従業員にヒアリングします。
「従業員の本音を聞きだすのが難しい」「調査に割くリソースがない」といった場合は、オフィスリニューアルの専門業者に調査を依頼すると効率的です。
ABWやフリーアドレスに対応したオフィスにするために、レイアウトの変更が必要になる場合があります。ABWによって設置したいスペースや対応したいニーズに合わせ、レイアウトを考案しましょう。
オフィスレイアウトに関するノウハウを持たない企業は、専門業者への依頼がおすすめです。多くの実例に基づくノウハウから、最適なレイアウトを提案してもらえ、失敗のリスクが軽減されます。
ABWの導入にあたって、注意したいポイントを3つ解説します。
ABWを導入すると、従業員がオフィス内外さまざまな場所で働くようになります。従業員と顔を合わせる頻度も減少し、マネジメントが難しくなる点は押さえておきましょう。
ABW導入後の上司には、従業員の勤怠管理や人事評価をこれまで以上に正しく公平に行う手腕が求められます。ABWの導入を機に、ABWに合わせた管理・評価制度の導入を検討してもよいでしょう。
ABWは、利用する従業員の主体性があって、はじめて成立します。
ABWの制度だけ導入しても、従業員がABWの目的やメリットを十分に理解していないとどうなるでしょうか。結局、従来通りの働き方を維持する従業員が登場し、ABWが形骸化するおそれがあります。
ABWの導入にあたっては、従業員の意識改革を含めた綿密な計画を立案し、実行しましょう。
ABWを成功させるためには、見かけ上の働き方の変化だけでは不足です。社内の各種制度も、ABWに合わせて変化させることが大切です。
以下は、ABWに合った社内制度の一例です。
ABWは、単に働く場所を自由に選べるといった表面的な変化だけを狙いとする制度ではありません。従業員の主体性と満足度を高め、生産性を向上させて企業の業績を高める、全体的な戦略であり施策です。
国内のABW導入は、まだ始まったばかりです。企業も従業員も経験値がなく、何から始めるべきか手がかりがないのが実情ではないでしょうか。
ABWの導入は、先んじて2012年からABWを自社で実践している内田洋行にご相談ください。働き方改革まで含め、総合的なオフィスリニューアルをご提案します。
ABWは、業務内容に合わせて従業員が主体的に働く場所を選定できる、新しい働き方の概念です。ABWの導入と成功には、オフィスの課題明確化と、最適な解決手段の構築が欠かせません。ラウンジやフリースペース、集中執務ブースなど、設備面の設計も入念に進める必要があります。
内田洋行は最適なオフィス空間の構築を通じ、企業に最適な働く環境をご提案します。オフィスのレイアウトから家具・内装、ICTの活用まで一気通貫でお任せください。オフィスリニューアルを通じた従業員の働き方改革のノウハウも、豊富に持ち合わせています。
[2024.01.30公開]
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