オフィス面積の効率化を図る、部門間のコミュニケーションを促進する、ABWに適したオフィスを構築する、など様々な目的に対してフリーアドレスの導入は有効な手立てです。一方、固定席のように「誰がどこに座るか」が決まっていないため、空席を探す、人を探す、オフィスの使われ方を確認するといった課題も生まれます。そこで検討されるのが座席管理の仕組みです。ただし、必要な機能は解決したい課題によって異なります。
本記事では、ニーズを「席を予約したい」「人を探したい」「利用状況を把握したい」の3つに整理し、座席管理と居場所管理の違い、代表的な手段、自社に合う方法を選ぶポイントを基礎から解説します。
座席管理を検討するときは、最初に「何を管理したいのか」を明確にすることが重要です。同じフリーアドレスでも、解決したい課題によって必要な仕組みは異なります。3つのニーズについて、背景、課題が起きる理由、起こりやすい企業を整理します。

出社前に働く席を確保したい、チームのメンバーと近くに座りたい、集中作業に適した席を使いたい。このような場面では、「席を予約したい」というニーズが生まれます。出社後に席を探す運用では、業務開始が遅れ、希望する設備を使えないこともあります。
この課題が起きる主な理由は、出社人数と利用できる席の状況が日によって変わるためです。ハイブリッドワークでは、出社する曜日や時間帯が重なり、オフィス全体では空席があっても、人気のエリアやモニター付きの席だけが埋まることがあります。プロジェクト単位で集まりたい場合も、個人がそれぞれ席を選ぶだけでは近くに座れるとは限りません。
2024年にフリーアドレス下で働く20~50代のオフィスワーカー448人を対象として行われた調査では、「あまり席を変えていない」が24.1%、「全く席を変えていない」が12.7%で、合計36.8%が席を変えていないと回答しました。フリーアドレスを導入していても、必ずしも利用者が毎回異なる席を選ぶとは限らず、席が固定化する場合があることが分かります。[参考文献 1]
フリーアドレスでは、相談したい相手の席が毎日変わります。オフィスにいることは分かっていても、どのフロアやエリアにいるのか分からず、探し回ったり、チャットで居場所を聞いたりすることがあります。会いたい相手へすぐにアクセスできないと、確認や相談に時間がかかります。
固定席では、所属部署や座席表から相手の居場所を予測できました。フリーアドレスでは、その手掛かりがなくなるため、人を探す課題が起こります。2024年に公表された、ハイブリッドワーク下のABWオフィスを対象とする研究では、在席データから、出社時には部門で集まる傾向が確認されました。研究では、ライン管理職が部門内コミュニケーションの低下を問題と捉え、部門で集まることを重視していたことなどが、その背景として考察されています。[参考文献 2]
相談や共同作業のために近くへ座りたい場合、人の所在を確認できることは席選びの助けになります。
ただし、人を探す目的で必要となる位置情報は、必ずしも座席単位とは限りません。目的によっては、フロアやエリア単位の把握で十分です。
フリーアドレスでは、座席を自由に選べる一方、実際にどの席やエリアが使われているかが見えにくくなります。座席数は足りているはずなのに特定の場所だけが混雑する、反対にほとんど利用されない席がある、予約済みでも実際には使われていない、といった状況も考えられます。
日々の目視や社員の声だけでは、オフィス全体の使われ方を継続的に捉えにくいためです。「席が足りない」という意見があっても、全体の不足なのか、特定の曜日・時間帯・エリアへの集中なのかで、必要な対応は変わります。予約情報だけでは、実際に利用されたか分からない場合もあります。
3つのニーズを整理したら、次に管理対象を確認します。座席管理は「席」を起点に空き状況や予約を扱い、居場所管理は「人」を起点に所在を把握します。似た仕組みに見えても、解決する課題と必要な情報の細かさが異なります。

座席管理と居場所管理は、どちらか一方だけを選ぶとは限りません。集中席やチーム席は予約制にし、人を探すための所在はエリア単位で把握するなど、場所と目的に応じて組み合わせる方法があります。全オフィスを同じ粒度で管理するのではなく、必要な場所に必要な仕組みを当てはめます。
管理手段は、必要な精度と利用者の負担を踏まえて選びます。代表的な方法を最低限押さえましょう。
座席表から席を予約し、利用時にチェックインする方法です。席を確実に確保したい場合に向きます。未使用予約を残さないために、チェックイン期限や自動開放の考え方を運用ルールに含めます。
端末やタグなどを使い、一定範囲の居場所を把握する方法です。手動操作を減らせる場合がありますが、機器の携行、電池や端末の管理、必要な検知精度を確認します。
ネットワーク環境を活用し、接続端末などから所在を把握する考え方です。利用者の追加操作を抑えられる可能性があります。取得できる情報の粒度や前提条件、本人とのひも付け、利用目的、情報の保持範囲を確認する必要があります。

「席を予約したい」「人を探したい」「利用状況を把握したい」という3つのニーズのうち何を優先するかを決めます。複数を同時に求める場合も、最初に解決したい課題を明確にすると、必要な機能を絞りやすくなります。
座席管理・居場所管理システムを導入する場合、搭載機能や対応範囲は製品によって異なるため、優先するニーズに応じて、以下のような機能が備わっているかを確認しましょう。
席を予約したい場合に確認したい機能
人を探したい場合に確認したい機能
利用状況を把握したい場合に確認したい機能
居場所を把握するにあたって、座席単位、エリア単位、フロア単位のどこまで把握する必要があるかを考えます。精度は高ければよいとは限りません。目的以上の細かさは、コストや運用、プライバシーへの配慮を増やす可能性があります。
予約、チェックイン、端末の携行など、日々必要な行動を洗い出します。業務開始時に操作が必要になると、利用率に影響する可能性があります。求める管理精度と操作負担のバランスを考慮することが大切です。特に、利用状況を把握したいというニーズがある場合は、利用率が低いと必要なデータが集まらないので、注意が必要です。
一つのフロアから始めるのか、複数フロア・複数拠点を対象にするのかを整理します。対象が広がるほど、管理者の権限、拠点ごとのルール、表示方法なども確認が必要になります。
座席管理や居場所管理のシステムを選ぶ際は、現在必要な機能だけでなく、利用データを継続的に蓄積・出力できるかも確認しておきましょう。座席や人の所在に関するデータを収集できる環境を整えておけば、将来、会議室やブースなどの施設利用データと組み合わせ、レイアウトや運用の改善に活用できます。
日本ファシリティマネジメント協会の研究部会は、知識創造を支えるワークプレイスを、働き方、組織、ファシリティの3要素で複合的に評価するSOFモデルを構築し、複数社でデータを収集・分析しています。同資料では、データ分析をファシリティの改善計画やワークスタイル改革へ展開する考え方も示されています。[参考文献 3]
予約可能な期間、チェックインの期限、未使用予約の扱いなど、利用者が迷いやすい点を短く整理します。開始時から例外を増やしすぎず、問い合わせ先も明確にします。
まずは一つの部門やフロアで試すと、必要な精度、操作のしやすさ、利用状況の取り方を確認できます。管理者の負担や利用者からの問い合わせも把握し、本格展開前にルールを調整します。
前述の2024年の研究では、多くのエリアを利用し、自由に利用できているワーカーは、ワーク・エンゲージメントやパフォーマンス自己評価に関するスコアが高いことが確認されました。一方、オフィス内でABWを実施できていると回答したワーカーは半数程度にとどまりました。単一オフィスの事例ではありますが、選べる環境を整備するだけでなく、実際に選択肢が使われているかを確認する必要性を示しています。[参考文献 2]
座席管理の仕組みも、導入すること自体を目的にせず、予約が使われているか、人を探す負担が減ったか、必要な利用状況を確認できているかを振り返ります。最初に設定したニーズに応えられているかを基準に、ルールや対象範囲を見直すことが大切です。
フリーアドレスの座席管理では、まず「席を予約したい」「人を探したい」「利用状況を把握したい」のどれを解決するのかを整理します。席の確保には座席管理、人探しには居場所管理が適する場合があり、目的によっては複数の方法を組み合わせます。
選定時は、必要な精度、従業員の操作負担、対象範囲を確認し、将来の会議室などの施設管理やデータ活用への拡張性も見ておきます。さらに、仕組みだけでなく利用ルールや導入後の見直しまで含めて計画することが、使われ続ける座席管理につながります。
内田洋行では、座席管理システムや居場所管理システム、会議室予約システムなど施設管理に関するソリューションを多数扱っております。お気軽にご相談ください。
ワークプレイス・ソリューション
[1] パーソルファシリティマネジメント株式会社「フリーアドレス下ではたらく20代~50代オフィスワーカーの実態結果発表 約4割が“席を変えない派” 席の固定化を生む2つの要因とは?」 2024年7月10日
[2] 天保美咲・福岡直・吉田雅一「ハイブリッドワーク下のオフィスにおけるActivity-Based Working導入効果と利用状況調査(PDF)」 『大和ハウス技術研究報告』Vol.3 No.8、2024年
[3] 公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会 オフィス・ワークプレイスの知的生産性研究部会「ポストコロナの働き方と知識創造を支えるワークプレイス(PDF)」 2021年、特に第2章~第4章
[2026.10.29公開]
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