「グループアドレス」をオフィスに導入するメリット・デメリットは?コミュニケーションはどう変わる?

グループアドレス オフィスレイアウト

個人の席が決まっている固定席とフリーアドレスの中間とも言える「グループアドレス」をご存じですか?
本記事では、筆者が経験したグループアドレスでの業務を経て感じたメリットや上手な設計のポイントなどを、さまざまな資料やデータを元にわかりやすく解説します。

社員の座席があらかじめ決まっているのではなく、それぞれが自由に席を選べる「フリーアドレス」は多くの企業から注目されていますが、コミュニケーションの取りにくさなどの課題を感じている企業も存在しています。

そこでもうひとつの在り方として「グループアドレス」を検討する企業もあります。

グループアドレスとはどのようなものか、また、そのメリットやデメリットなどについてご紹介していきます。

グループアドレスとフリーアドレスの違い

「フリーアドレス」が全社的に座席を自由にすることに対して、「グループアドレス」は全社ではなく「部署内での個人の座席を自由にする」という形式をさします。

全社的にフリーアドレスを導入してしまうと、誰がどこにいるのかわからない、コミュニケーションが取りづらい、といった問題が生じてしまいます。しかしグループアドレスの場合、部署の中に社員がとどまっている前提ですので、フリーアドレスとは違いメンバーの状況を確認しやすく、管理する側の安心感は高まることでしょう。
メンバーが近くにいるため話しかけやすい形でもあります。

個人の席が決まっている固定席とフリーアドレスの中間とも言えます。うまく導入すれば、両者のメリットをどちらも取り入れることができる形式でもあるでしょう。

筆者が経験したグループアドレスでの業務

筆者が報道記者だった会社員時代、「グループアドレス」で過ごした経験があります。
もちろん20年以上前ですから、現在のようなコロナ禍を意識したものではなく、入社した時から筆者の配属先はすでにそうなっていたという状態です。最初に配属されたのは社会部です。

報道の場合、日常的に外の記者クラブなどに出勤する記者のほうが多いくらいですから、本社に全員分の席は必要ありません。よってそれなりの人数分の席があればよく、中には荷物置きと化しているデスクもありました。
そして基本的に、それらの席も全員分が固定されているわけではありません。
夜勤シフトもありますから、常に全員がそこにいるわけではないからです。

ただ、時々業務のために外から本社に寄る記者も少なくありません。丸一日そこにいるわけではないのですが、本社のデスクや記者と集中的に作業をする場合は電話でもメールでもなく、「その場にいる」のが一番だと思っているからです。報道の現場は時に、分単位を争うスピード感が求められます。その場合、最も早くて正確なのは、やはり情報の持ち主が「その場にいる」状態です。

グループアドレスの機動性

大きな出来事の発生やスピードが必要な場合、グループアドレスにはこのようなメリットがありました。まず、指示を出す担当記者が座った場所を中心に、関係者が物理的に周囲に集まることができるのです。特に誰の席ということでもありませんので、物理的に最適な布陣を取れるというわけです。

また、他の部署のメンバーに応援を頼んだ時も、指示を出す人物は「その部内のどこかに」はいるわけですから、探し回る必要もありません。どのようなフリップを用意すれば良いか、映像の使い方は間違っていないか?そのようなことも、「ここに行けばわかる」という場所が誰から見ても明らかなのは非常に便利なことです。情報の指揮系統が乱れることもありません。

グループアドレスの利便性は「形状」によっても異なる

さて、筆者が経済部に異動した時は、事情は少し違いました。
経済部は比較的新しくできた部署で、その昔は「政治・経済部」として一つになっていたのですがその後政治と経済が分割された形です。部署の座席も「無理やり分割した」感じのあるところでした。

経緯はさておき、経済部の「島」は縦長状態でした。デスクとその他部員3~4人分のデスクがパーテーションに向かって横並びになっており、少し離れたところに部長席が垂直にこちらを見ているという状況です。

全員が横並びに壁に向かって仕事をしている、という極端なフォルムではありますが、これはこれで、さまざまなメリットがあったものです。

まず、なんとなくの「クセ」ができていきます。基本フォーメーションは左から「デスク」→「サブデスク」→メンバー、という情報指揮系統の順になってしまいます。これが一直線というのは悪いことではありません。また、部内で同時に2つ以上のことが発生しても、部内はフリーアドレスですから、担当者が別のデスクを起点にそれぞれ指揮を取ることも可能です。

また、コミュニケーションという側面から見ると、時には若手をデスクの隣に座らせてコミュニケーションの場にすることもできます。また、デスクの左隣には「椅子だけ」をひとつ置いてありました。
他の部署から相談にきた人がいつでも座れるように、あるいは必要に応じて部員と部員でデスクを挟むことができるようになっていたのです。

「パーソナル・スペース」の認識

さて、「横並びで壁に向かっている」という奇妙に見えるこの形式ですが、筆者は自分の経験してきた中で実は一番集中できる環境だったと感じています。「真正面で人が動いている」状況がなんだか苦手だったからなのですが、どうやらこれは筆者に限ったことでもないようです。

自分の体を中心として、どのくらいの面積を自分のものだと感じ、他人に立ち入られると「侵略された」と感じるか、という、「パーソナル・スペース」の概念があります。

このパーソナル・スペースについては研究が行われています。

大学生を対象にしたこのような実験があります。

実験では、大学構内の広い場所で「広場の中ほどに立っている目標の人物(男・女)に向かって、真っすぐ接近して行き、それ以上近づきたくないと思った位置で立ち止まって下さい」というものです。これを前後左右4方向から実施しました。
すると、立ち止まった位置の目標人物からの距離は下のようになったといいます(図1)。

図1:接近実験でのパーソナル・スペースの平均値
(出所:渋谷昌三 「パーソナル・スペースの形態に関する一考察」山梨医大紀要第2巻,41-49(1985) p.44)

接近してくる相手が知っている人かそうでないか、あるいは男女の間でも差はありますが、「前方」のパーソナル・スペースがもっとも広くなっているということがわかります。

他の実験にはこのようなものがあります。
B5判大の白紙の中央に真上から見た人の頭部を描き、これを中心とした4方向の座標軸(距離の目盛がついている)を記入した質問紙を作成し、学生に渡しました。

そして「図に描いてある人物像をあなた自身と見なして、あなたが日頃持っていると感じている空間の大きさを各方向について描いて下さい」と指示しています。

すると、感覚的なパーソナル・スペースについて下のような結果が出ています(図2)。

図2:感覚的なパーソナル・スペースの大きさ
(出所:渋谷昌三 「パーソナル・スペースの形態に関する一考察」山梨医大紀要第2巻,41-49(1985) p.43)

人は全体的に「前方」に対し、後方よりも2倍以上広いパーソナル・スペースを感じているということがわかります。

つまり、他人と同じ距離であっても向かい合わせでの位置関係のほうが窮屈に感じてしまうというわけです。

前方に人に座られるくらいなら壁の方が良い、筆者はそのように感じていたのでしょう。

グループアドレスの上手な設計のために

グループアドレスには、まず上司から見れば全員の状況が把握しやすい、話しかけに行きやすいといった安心感があることでしょう。
それだけでなく、ここまでご紹介してきたように機動力を発揮するのにも役立つと筆者は考えています。
また、その日によって違うメンバーが隣に座ることで部署内でのコミュニケーション活性化にもつながることでしょう。また、リモートワークを導入している企業では、席数の調整によりオフィス規模を変えることもできます。

ただ、注意したい点もあります。

それは、「少しゆとりのある」設計が望ましいということです。

他部署のメンバーとの雑談や、個人的に集中したい時の場所取りなどには、この「ゆとり」は欠かせません。
いつもよりも人数が1人2人多いだけで窮屈になってしまう環境は、メンバーが居心地悪く感じてしまうという逆効果を与える可能性があります。

ぜひ、このようなことにも留意しつつ、グループアドレスとフリーアドレスの良さを活かしてみてはいかがでしょうか。


[2023.07.12公開]

著者清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。
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