実証プロジェクトから見える成果 第2弾

「働き方」×「働く場」の概念を掘る

私たちはワークスタイル変革を、ありたき「働き方」の実現と、その舞台としての「働く場」の活用ととらえています。本プロジェクトでは、この「働き方」と「働く場」という両側面から、さまざまな実証を行ってきました。

顔を合わせて、知恵を集めて掘り下げる

2012年1月にワークスタイル変革の実証をスタートするにあたり、その半年前である2011年の夏から、現場の社員のワークショップや分科会活動を重ね、変革の目的・目標の共有や、その目標を達成するための344に及ぶ変革促進施策の抽出を行ってきました。
実際には、この施策にはワークスタイル変革だけではなく、制度の見直しや情報システムの更新など会社全体で考えなくてはならないものも含まれていましたので、それらを除いた245の施策がワークスタイル変革の対象となっています。その時点で対象外となった施策は経営提言事項として報告され、そのいくつかは並行して検討され既に形になっているものもあります。
ワークスタイル変革の対象となった245の施策は、2年後である2014年1月を最初のマイルストーンとして、5つの分科会と、その横連携を担当するPMO(Project Management Office)と呼ばれる事務局が中心となって推進活動を行ってきました。PMOは現場主導型の分科会と、事業方針との整合性や連動を担う役割ももっています。
分科会の活動は半年を一つのフェーズとして活動目標を設定し、半年ごとに進捗の評価を行い必要に応じ体制を見直す、という形で進めてきました。

戦略マップ 戦略マップ

「自分たちで決めた変革目標」を9割の社員が納得し、実践している

2年間の活動を経た今の最大の成果は、245の施策の9割を実現することができたということです。
また、施策の成果はKPI(Key Performance Indicators)を設定し、課題解決の評価を行ってきました。難しい課題は、進捗したり停滞したりといった苦労を重ねながら進めてきましたが、2年間を振り返ると着手時の予想以上の成果をあげていると感じます。特に、営業活動上の大きな課題であった「お客さまへの提案の増加」のKPIである「顧客面談時間比率」は、当初の%から%台まで拡大することができました。
そして何より大きな成果は、2年間の変革のプロセスを経て育まれた社員の意識や行動の変化です。
2年前、ワークスタイル変革のスタート時に、変革の当事者たちは自ら「2年後に実現したい4つの『ありたき姿』を描きました。そして、目標に近づいているかどうかを確認するために、社内意識調査「Change Workingアンケート」を6回にわたり継続的に行ってきましたが、そこに社員の意識や行動の変化をはっきりと見ることができます。
例えば、「新しいことへのチャレンジやスキル向上のために自発的に取り組んでいるか?」という設問に対しては、変革開始時には半数であった肯定意見が、2年間で7割以上に伸びています[図1]。
また、「所属部門の戦略や方針を納得し、腹落ち感を得て活動しているか?」という設問に対し、肯定意見が8割に伸びているのも、変革のプロセスを通じて課題認識のレベルが上がり、自社の戦略や方針における「Change Working」の重要性の認識が高まってきたものと推察しています[図2]。
このような成果の背景には、「ワークスタイル変革の目標である4つの『ありたき姿』を理解しているか?」という設問に対して9割が「自分たちのオフィスのコンセプトを理解している」と答えている[図3、図4]ことから、「ほとんど全員が肯定している」といった、変革目標や手段・施策への理解の深度が確認できます。
多少の手間や時間は要しましたが、PMOからの情報発信、分科会活動を通じたプロセスへの参画、そして、何よりも自分たちで課題を特定して変革目標や手段を決めたというスタートアッププロセスが功を奏したものと考えます。

営業ワークスタイル 変革プロジェクト体制 営業ワークスタイル 変革プロジェクト体制

今後の展開

2014年1月、ワークスタイル変革の自社実践プロジェクトは2年間の活動とその成果を踏まえ、実証のセカンドフェーズに入りました。
セカンドフェーズは、より「日常的な変革」、すなわち通常の事業運営や営業活動の中に、変革への取り組みや行動がビルトインされていくような状態を目指して活動したいと考えています。
また、この2年間の事業を取り巻く環境の変化を踏まえ、具体的な施策もバージョンアップします。その一つが、変革の舞台となる「働く場」の進化です。実証プロジェクト開始時に、「ActiveCommons(アクティブ・コモンズ)」というコンセプトでスタートしたワークプレイスも、「Active Commons 2.0」に進化します。より現場のアクティビティーを支え、創造性・効率性・躍動性を促進する舞台装置を設え、さらにダイナミックな「働き方」をつくっていきたいと考えています。

掘り下げた先に灯る強い心の火

内田洋行 知的生産性研究所では、自社実践をはじめとする多くの変革プロジェクトに携わった経験知をもとに、ワークスタイル変革のコンサルティングサービスをご提供しています。今まで数多くの変革プロジェクトの支援をしてきましたが、共通するのは「働き方を変えるんだ」という強い想いをもつ現場の社員の力です。いくら素晴らしい戦略を立てても、主役である社員の参画を得なくては、変革は実現しません。
内田洋行の自社実践プロジェクトにおいても、忙しい業務の中で準備期間を入れると2年半、この時間を費やして変革を推進してこられたのも、この「変えるんだ」という強い想いを共有できたからだと思います。
本誌でご紹介するこの取り組みが、ワークスタイル変革を検討されている企業やご担当者の参考になれば、うれしい限りです。

内田洋行の「ありたき4つの姿」

バリュー・プロデューサー
広く社会の動向を見据えてニーズをとらえ、あらゆる手段を尽くして新たな価値を創造する
カスタマーズ・パートナー
お客さまの最も身近な相談相手として、スピード感のある課題の発掘と対応により、お客さまと解決の喜びを共有する
チーム・ビルダー
組織内はもちろん、組織の壁を越えてタレントを結集し、助け合い、一丸となってお客さまにサービスを提供する
ワークプレイス・プロフェッショナル
内田洋行のオフィス営業としての自信と、実践に裏打ちされた説得力をもって、働き方と働く場を協創する

profile平山信彦内田洋行 執行役員 知的生産性研究所 所長

千葉大学工学部工業意匠学科卒。内田洋行スペースデザイン室、Interior Architects(米・ロサンゼルス)などを経て現職、2008年~ 2010年、千葉大学大学院でデザインインタラクティブ論を担当。「経営とデザイン」「ワークスタイルと場の関わり」などのテーマで執筆・講演など多数。

※組織名、役職は取材当時のものです。

序章
チームビルディング
変革成果を踏まえた製品開発
ペーパーストックレス
クラウド
ミーティング
アクティブコモンズ
スパイラルBURNing
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