第2回:快適なワークプレイスとは 【澤円の連載コラム】

【澤円の連載コラム】働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~
ハイブリッドワーク 生産性が最も高い働き方

いま、働き方が再定義されようとしています。テレワークから出社回帰、働く場も多様化し人とのかかわり方も変わっていくなか、自分らしく、よりハッピーに働くにはどうしたら良いのでしょうか?連載コラム「働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~」では、株式会社圓窓 代表取締役 澤円(さわ まどか)さんと一緒に「はたらく」について考えていきます。

こんにちは、澤です。

皆さんは、普段どんな環境で働いておられますか?
この連載をお読みの方々は、ボクの予想ではいわゆるオフィスワーカーの方が大半ではないかと思います。
オフィスワーカーが働く環境といえば、机があり椅子がありパソコンがあり・・・といったイメージが一般的でした。
最近は、「自席」という概念がない「フリーアドレス」を導入している会社も増えているようです。
「オフィス=ワークプレイス」という概念が、2020年を境に大きく変化しました。
それがコロナ禍です。
「外出禁止」「移動制限」「集合回避」といったアナウンスが全世界で発信され、通勤に対する考え方やオフィスの役割が一変しました。
そして、「オフィスに行くことが働くための必須条件ではない」という意識を持つ人が激増したのではないでしょうか。

かくいうボクは、割と昔からリモートワークを自分の働き方に取り入れていました。

2020年まで勤めていた日本マイクロソフトでは、2011年まではいわゆる一般的なオフィスの作りになっていて、一人ずつ固定席があり、引き出しや本棚には書類や書籍がぎっしり・・・という状態でした。
「自席に行く」と「仕事をする」が極めて強くつながっていました。
もちろん会議は会議室で行うものと思われていて、いつも会議室の予約がいっぱいで、会議室の空きがそのままビジネスのスピードに影響するという状態でした。
2011年のオフィス移転をきっかけに、「ハイブリッドワーク」と称して、生産性が最も高い働き方をするためにフリーアドレスを導入して、かなり話題になりました。
日経ニューオフィス賞やファシリティマネジメント大賞を受賞しています(ちなみに内田洋行社の製品も入っていました)

フリーアドレスで快適に働くワーカーのイメージ

そして、この大きな変革をさらに推進するきっかけになったのが東日本大震災でした。
その時に、当時の樋口社長から「在宅勤務を推奨する」という一通のメールが出されて、85%の社員が一週間リモートワークで勤務しました。
この時に、社員の意識が大きく変わり、それ以来ボクにとってもリモートワークは当たり前の存在になりました。

また、ボクはグローバル組織の一員でもあったため、深夜や早朝にリモート会議に自宅から出席することも多くありました。
オフィスと普段のワークプレイスは、ずいぶん前から切り離されていました。
もっとも、当時の日本マイクロソフトのオフィスはめちゃくちゃ素敵な場所で、行く楽しみはありました。
ただ、ボクの場合には何か集中して作業をしたいときは一人でこもった方が快適に感じるタイプなので、資料作成などをする時には自宅にいることが比較的多かった記憶があります。

そして、まだ日本マイクロソフト社員だった2019年に、自宅の近くに事務所を構えることにしました。
最初は安いアパートの一室でも借りようかな・・・と思っていたのですが、地元で長く経営している親しい不動産屋さんに相談をしたら、「せっかくなら事務所用の物件を借りた方がいい」というアドバイスをもらい、家から徒歩圏内の雑居ビルの一室を借りることになりました。

これが、ボクのキャリアを大きく変えることになりました。
物件の契約は、2019年5月1日から。令和元年初日というなかなかいい日からのスタートでした。
ボクは顧客とのミーティングがある日以外は、自分の事務所で仕事をするようになり、ミーティングも基本的にオンラインで出席する生活が始まりました。
そして、一年も経たずにコロナ禍が世界を襲います。
ボクは当時、マイクロソフトテクノロジーセンターという施設の責任者をしていました。
重要な顧客に来社しただき、セッション専用の部屋を使ってプレゼンテーションをしたりディスカッションをしたりするのがメインの業務でした。
それが、コロナ禍によって開店休業状態となりました。
センターの大幅リニューアルの話も進んでいたのですがそれも一旦ペンディングとなり、ずっと回り続けていたサイクルが全て一旦ストップした感覚がありました。

こういうとき、ボクは「動くこと」を優先します。
2020年の4月には退職の意思を伝え、2020年8月に独立をします。
転職も一瞬考えたのですが、「自分専用のワークプレイスもあることだし、当面一人でやってみるか」と思って独立を選びました。
ボクの会社である「圓窓」は2019年10月に法人登記を済ませてあったので、その会社一本で活動開始です。
とはいえ、コロナ禍真っ只中ですから、外出もままなりません。
そんな中、ガジェット好きが高じて買い集めていた様々なデジタル機器が大活躍します。
一眼レフカメラやスイッチャーを配置して、様々なスタイルでオンライン講演ができるようになり、年間200回以上もお客様に対して自分の知見(主にDXやマネジメントなど)を伝えることができました。
また、コロナ禍の最中に千葉県山武市に物件を購入し、多拠点生活もスタートしました。
そこにも同様のワークプレイスを設置して、高品質な映像と音質でオンライン講演やミーティングができるようにデザインしました。
「リモートワーク環境構築」や「多拠点生活でのワークプレイスデザイン」といった文脈で講演をしたり取材を受けたりすることもあります。

多拠点生活でのワークプレイスイメージ

そんなこんなで、もう独立してからはや丸4年が経とうとしています。
ボクの場合は、コロナ禍が大きな転換期になりました。
コロナ禍はビジネス的には当然ネガティブなインパクトの方が大きかったわけですが、ボクにとっては結果的に大きなチャンスになってくれました。
それも、自分専用のワークプレイスがあったからこその転換を実現することができたのです。

ボクは「一人でいる方が効率高く仕事ができる」という自分の特性を理解していたので、完全に自分だけの事務所を作ることを選びました。
ただ、人によっては「周囲に人がいる方が落ち着く」「時々誰かと会話した方が効率よく働ける」というタイプの人もいると思います。
まず大事なことは、「自分が生産性高く働ける状況を理解する」ことだと思います。
そこから、どの程度の自由度があるのか、どのような工夫ができるのかを逆算すれば、いい仕事ができる環境を作るきっかけを得ることができるでしょう。
「勤め人だからそう簡単にはできない」と思考停止してしまうのではなく、まずは自分が好きなワークスタイルを知り、そこから自分なりのデザインをしていく、という意識を持つことからスタートしてみてください。

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[2024.9.2公開]

澤 円(さわ まどか) 氏
著者澤 円(さわ まどか)氏
株式会社圓窓の代表取締役。元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長を2020年8月まで務めた。DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやコンサルティングなどを行っている。複数の会社の顧問や大学教員、Voicyパーソナリティなどの肩書を持ち、「複業」のロールモデルとしても情報発信している。
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