本店・本部の老朽化に伴って、これまで3拠点に分散していた本店、Winセンター、本部機能を、立川駅北側の新街区に誕生した「GREEN SPRINGS」内に集約された多摩信用金庫様。その移転に際し、フリーアドレスやペーパーレス化など、効率的に業務を推進するためのオフィスワークの検討にも着手されました。
内田洋行は、そうした働き方改革をサポート。地域の方々にも価値を提供できる「ありたい姿」を明確にし、その目標に向かう働き方の提案、並びにそれを実践する働く場づくりのご支援をさせていただきました。
今回の大型プロジェクトに向け、多摩信用金庫様が社内で取り組みを始められたのは2017年の初頭。
経営陣の決定を受けて、まずは経営戦略室と総務部が下地を作り、概要が決まったところで、役員や部長クラスからなるランドマーク委員会を立ち上げ、新拠点におけるオフィスワークの検討会を進められていました。1~2週間に1回のペースで行われた会議はトータル97回におよんだといいます。
加えて、若手の意見も積極的に反映すべきという理事長の直言で、各部から入行10年未満の職員を選出してドリームプロジェクトを結成。その後の2019年の春に内田洋行がオフィスワークのサポートに入りました。
コンサルを開始するにあたって内田洋行はまず、トップインタビューを実施。会社の方針を明確に理解した上で、ドリームプロジェクトのメンバーに対し、将来像としての〝ありたい姿〟を創造し、それが達成されているシーンを想定するワークショップを行いました。
「計画の中盤に差し掛かり、これからどう具体化していくべきか、というところで、若手からの意見出しのきっかけを作ってくださった。自由な意見が出て、プロジェクトが活気付きました」と当時、経営戦略室にてプロジェクトを事務局としてまとめられていた野村勝之様。内田洋行はそのワークショップ並びに方針検討ミーティングで生まれたアイデア、施策を反映し、6階から8階の執務フロアのレイアウトをご提案し、具体的な新しい働き方を可視化しました。
「最初にプランを見たときは、今までと全く違う環境にあっけに取られた、というのが正直なところでした」と野村様。これが当たり前と思って長年働いてきた環境、例えば島型配置のデスク、部署ごとの壁やパーテーション、有線の電話やデスクトップパソコンというスタイルを完全に払拭したプランに、戸惑ったり、反発したりする職員が多いのではないかと危惧されたそうです。
移転に合わせて社員証も20年振りに更新。さらにセキュリティーゲートの設置、電話やLANの無線化、ノートパソコンの貸与などと、初導入だらけといっても過言ではありません。そこで、事務局として適宜、ツールなどで情報発信に努められました。
「ゴミの捨て方、カバンのしまい方、電話の取り方、会議の方法まであらゆることが変わるので、移転間際には経営戦略室管轄で新しいオフィスワークに関するガイドラインも編成しました。問い合わせがあるとの予測で先回りをし、混乱をできるだけ抑えたという形です」と総務部の澤田 仁様。そうした配慮が実を結び、今では紙でなくモニターを見ながらのミーティングや、「Free Field」での部署の垣根を超えたコミュニケーション風景が日常に。執務エリアでも、すべての席が角席になって動きが取りやすい4人用テーブルデスクを互い違いに配置することで、偶発的な出会いを誘発するという効果が発揮されています。
「仕切りのないシームレスな環境で、今までと同様な仕事ができるのかと危惧する声もありましたが、入居から約1年間にそうした問題はおきず、却って透明性の高さ、全体の様子が伺える環境のメリットを多く感じながら働いている職員をよく見かけるようになりました」(野村様)
移転に合わせて紙を減らすというところからスタートした文書管理についても、内田洋行が日本レコードマネジメント(株)との協働でサポートしました。「客観的な目線で、また法律や他企業の事例とも照らし合わせながら提案をしていただけたことがとてもありがたかったです」と澤田様。
移転の期日がある中で、全ての文書を自分たちで見直すことは難しいと考えていたそうですが、専門家が入ったことで保管文書の精査が完了。また、文書管理に関する規程の整理ができました。規程の整理に併せて文書の保存期間を見直したことにより、2021年3月末には倉庫保管されているダンボール約5,000箱の廃棄をしました。
「単に文書を削減するという物質的な部分だけでなく、働き方や働く場の見直しの一環としてペーパーレス化に取り組んだことによる効果がとても大きい」と澤田様。
これまで部署ごとに用意していた複合機を1フロアにつき2~3台として、社員証で認証するシステムを採用したことで、無駄なコピーやプリントアウトを削減。ノートパソコンの貸与やミーティングスペースにモニターを設けたことでペーパーレスの打ち合わせの推進も叶いました。「新しい文書管理規程の策定にもご協力いただきました。今後も、ドキュメント・アーカイブ戦略委員会で、ペーパーレスを推進する方針です」(澤田様)
「これまでは、固定席に座って、すべて紙で回すという文化でした。あの体制のままでコロナ禍を迎えていたら、対応しきれなかったと思います。スマートフォンやノートパソコンの採用で、事業を継続でき、職員にも安心して働いてもらえました」と野村様。 想定以上にリモート会議が増えたことにより、会議室の運用の手直しなども検討中。移転して終わりでなく、時代に合わせてさらに成果をあげられるよう、内田洋行もサポートを続けます。
今回、プロジェクトを推進するにあたり、金融機関だけでなく、さまざまな企業のオフィスを見学し、各種セミナーにも参加させていただきました。そうして得た情報がとても役立ったと思っています。そうした中で、内田洋行さんに依頼した決め手は提案力です。変わることへの期待感と不安感が入り混じっているわれわれに対し、CGイメージの提示によるイメージづけとともに、ロジカルに一つ一つの課題を整理してくださった。とても素晴らしい提案でした。
多摩信用金庫
総務部 職場環境サポートグループ 主任調査役 野村 勝之 様
私の担当のメインは文書管理でしたが、仕事の仕方とオフィスのレイアウトを多角的、総合的に見て提案いただけたことが大きなメリットでした。もし、別々のところに依頼していたら、整合性が合わないことや、われわれの業務を増やすことが発生したのではないでしょうか。モノを売ったら終わりというのでなく、今後を見据えての付加価値の部分が手厚いことも、ありがたいと思いました。
多摩信用金庫
総務部 職場環境サポートグループ 調査役 澤田 仁 様
多摩信用金庫様とのお取引は初めてでしたが、大きなプロジェクトのお手伝いができ、私たちとしても貴重な経験となりました。プロジェクトのメンバー一人ひとりがこれまでの働き方を客観的に見つめて真摯に取り組まれているお姿に感銘を受けました。今後もお困りごとに寄り添わせていただきたいと考えています。
株式会社内田洋行
オフィスエンジニアリング事業部 小山 夏奈 / 松坂 侑香
メンバーの皆さんのご意見を反映して、オープンなワークスペースという、金融機関のオフィスとしては珍しく冒険的なプランを提案させて頂きました。なぜそういうデザインなのか、配置なのかという意味をしっかりご理解いただき、提案内容をそのままご採用頂けたことは設計者冥利に尽きました。今回の移転を機に、さらに新しい取り組みにチャレンジして頂ければと思います。
パワープレイス株式会社
東日本デザインセンター 清瀬 雄一郎
トップである理事長の『お客様への課題解決・価値提供による地域貢献』という方針が明確なことが印象的でした。ドリームプロジェクトメンバーの方とのワークショップが活性化したのも、トップの目指すものが職員の皆様に浸透している証しだと思います。入居から約1年。ここをステージにどんどん新しい価値を創造していただきたいと考えています。
パワープレイス株式会社
エンジニアリングセンター プロジェクトマネージャー 平野 大輔
「たましんの仕事は、お客さまの幸せづくり」という経営理念のもと、多摩地域の皆様の課題解決に取り組まれている多摩信用金庫様。今回の本部機能移転の基本コンセプトも、地域貢献の実現が大前提にあり、耐震性能、BCP、セキュリティを強化することで、災害時の帰宅困難者の受け入れなど、地域の災害対策への寄与も実現します。また、建物内には「たましん美術館」も併設。芸術、文化への貢献からも地域の活性化をサポートされています。
多摩信用金庫 公式サイト※記事内容や役職等は取材当時のものです。(2021年7月取材)