日経映像様が現在のビルに本社を移されたのは約20年前。年月を重ねるごとに「モノ」が増え、社員間の交流も「モノ」に遮られるといった状態が続いていたそうです。そうした中で「こんなオフィスではクリエイティブな発想は生まれない」「もっと社員間の対話が生まれるオフィスにしたい」といった声が高まり、ボトムアップの形で大規模な断捨離を含むリニューアルが決定されました。対象となったのは、編集ワークエリア&撮影技術チームエリアと会議室からなる5階と、実務ワークエリアとなる6階の2フロア。「エレベーターのドアが開いて『素敵なオフィスですね』とおっしゃってくださるのは初来社の方。以前からお付き合いのある方は『会社を間違えたかと思った』と言われます(笑)」と感想が漏れるほどの大リニューアルを、内田洋行がご支援させていただきました。
リニューアルが正式に決まった日経映像様は、総勢20人程度のオフィス改革委員会を組織されました。「その1つ実施設計チームは、もともとは有志の集まりだったもの。みんながバラバラに持っているオフィスのイメージをどう取りまとめて具現化するかを、デザイン的なところまで重視して検討しました」と北條 雅樹様。その検討を使いやすさ、働きやすさなど運用面からも考え、ルールを決めながら進行していったのが、板部 文様をはじめとする運用チーム。日向 正典様は、この2チームにまたがる調整役を担われ、プロジェクトの後半は委員長も務められました。
まず行ったのはさまざまな制作会社のオフィスの見学。どのようにしてオフィス改革をしたのか、どこに依頼したのかを調査したといいます。それと並行して「オフィス改革の目的(クリエイティブな発想が生まれる空間づくり・スペースの確保・若者にとって魅力的なオフィス)」と、「オフィスに求める機能とセンスの要素」などを検討され、RFPを作成されました。
「プロジェクトを通じて感じたのは、オフィスリニューアルは物理的だけでなく、マインドの断捨離もできるということです」と北條様。それによって会社の『軸』の部分が改めて明確になるとともに、慣習化してきたやり方が今の時代に合っているかどうかの検討もできたといいます。また「オフィス委員会に参加したことで業務上の接点がない人、特に社長をはじめ上層部の方々とじっくりお話しできたことも、とてもいい経験になりました」と板部様も振り返られました。
日経映像様のコンペに参加した内田洋行は、与件を読み解き「映像はシーンの連続」という発想のもと「FRAME -by- FRAME」というコンセプトを提案。撮影や編集など、業務を効率的に行える機能をしっかり担保したうえで、間仕切りなどを最低限にし、必要な場所はガラス張りにするなどして社員の方々の活発な交流を生み出すことを第一にしたプランを構築しました。
一般的に映像制作会社は、音を出したりモニターを見る作業が多いため、小部屋をつくったり、衝立を立てがちです。「しかし、我々は業界の慣習からあえて外れて、みんなの顔が見える見通しの良いオフィスを求めていましたから、内田洋行さんのプランはそれに合致していました。これは私たちの業務ややりたいことを理解してくださったからだと思います。また、実績やプラン、プレゼン時の様子から、我が強い映像業界の我々にもしっかり寄り添ってくださるだろうと(笑)」(日向様)
選出いただいた後、内田洋行は日経映像のみなさまを自社オフィスにお招きして「働き方変革実践の場 THE PLACE」を見学いただきました。「それがとても参考になり、いろいろな部分を真似させていただきました」と板部様。ハイテーブルやローソファなどでアイレベルを変えること、グリーンの使い方、和室などに加え、「オフィス内に音楽を流すことも採用。「静かすぎると落ち着かない、電話や会話がしにくいという声もあり、ほどよい音量のBGMが好評です」(板部様)。内田洋行のオフィスを運用面でも参考にしていただけました。
オフィスのプランを詰めながら、板部様たちが中心になって推進したのが断捨離。中でもたいへんな量になっていたのが、かつて主流の記録媒体だったビデオテープと紙の資料でした。それをデータ化することで約8割のモノの削減に成功。各人のデスク周りを覆っていた資料などもパーソナルロッカーに納まるだけの量に限定しました。強い抵抗感を示す人もいたそうですが、「この断捨離をしないことにはオフィスも働き方も変えられないと説得しました。最後は追い立てる感じで」と板部様。北條様は「オフィス委員会を経験したメンバーは、物事を進めるにはいい人ばかりではいられないと身をもって知ったので、交渉がうまくなりましたね(笑)」とメンバーの成長を感じられたそうです。
断捨離を含む運用についても、プランづくりにしても、最初はアンケートを取るなどして、できるだけ多くの人の意見を取り入れようと努めていたそうですが、それでは折衷案やかなり希釈されたものになって、リニューアルの目的があやふやになるという危機感を感じたそうです。「そこで、オフィス改革のメンバーが批判を受け止める覚悟で、やるべきことは押し切りました。でも、人間は環境因子ですから、最初は不平を言っていても2~3カ月もすればすっかり慣れるものです」(北條様)
「以前は業務で接点がない人と話す機会がほとんどありませんでした。それがリニューアル後は自然と会話が増え、部署を超えた交流も活発になったと感じています。会社が明るくなった。それをすごく実感しています」と板部様。北條様も「私も若手と話す機会が増えました。近くの席に座ったことをきっかけに、互いの仕事の話をして、これとこれを組み合わせたらおもしろそうだね…とか、以前はまったくなかったことです」と、変化を受け止められています。
またオフィスが生まれ変わったことで、お客様をお招きする機会が増え、さらに会議室などをセット代わりにインタビューなどちょっとした撮影をすることもあるそう。そんな様子を見ることが、さらなる会話の糸口にもなっているといいます。「これまで外でお店を借りてやっていた社内イベントをオフィスでやったりもしています。これからオフィスの活用がさらに広がっていくのではないでしょうか」と日向様。オープンで見通しのよいオフィスの構築によって、かつて部署間にあったという壁もすっかり取り除かれたよう。単なるリニューアルでない、オフィス改革が実現されています。
オフィスは単に働く場ではなく企業文化を生み出す場。ここをステージに日経映像の文化をいかにつくりあげていくかがこれからの課題です。これまでオフィス改革委員会、特に運用チームのメンバーが「お母さん」的役目を担ってきましたが、個々が自主的に美化や整理などに気づいて行動できる環境にしていきたいと考えています。
株式会社日経映像
執行役員 制作・人事担当補佐 兼 HR室長 日向 正典 様(左)
事業を継続しながらのリニューアルなので、工事の進行スケジュールなどについてかなり細かく内田洋行さんと調整をしました。おかげで撮影や編集といった業務に皺寄せなく、完了にこぎつけることができました。いろいろ「お互い様」のこともありましたが(笑)、長い期間一緒に歩んでくださったことを感謝しています。
株式会社日経映像
制作本部 情報メディア部 兼 HR室 ディレクター 板部 文 様 (中)
こだわりが強く、いろいろ意見を出しましたが、完成すると「さすがプロだな」と思いました。当社のオフィス改革はボトムアップでしたが、定例会に決裁権を持つ人物が常に参加してくれていたので、内々のプレゼンでひっくり返るといったことがなく、とてもスムーズでした。これもオフィス改革を順調に進めるコツの1つかもしれませんね。
株式会社日経映像
制作本部 情報メディア部 兼 マーケティング室 プロデューサー・主席ディレクター 北條 雅樹 様 (右)
オフィス改革のご支援を承ってから約2年間、大変お世話になりました。オフィスのお披露目会の際に日経映像様が流してくださった、定点カメラで撮影したオフィスの変化と社員の皆さんのインタビューを編集した映像は、一生忘れません。至らない点も多々ありましたが、これからも日経映像様の成長につながるオフィス改革を全力でサポートさせていただく所存です。今後ともよろしくお願いします。
株式会社内田洋行
オフィスエンタープライズ事業部 伊藤 歩夢
プロジェクトを進めるにあたってオフィスの大枠を検討した後「設計チーム」「運用チーム」に分かれて検討を重ねて参りました。 いずれか一方が我慢や妥協するではなく、互いの意見を主張、尊重しあい、良いほうに良いほうに進んでいくことを感じておりました。 結果として出来上がったオフィスは改革委員会の皆さまのお言葉はじめ、社員インタビュー動画の内容から非常にご満足いただけるものになったと思います。 働き方、働く場が皆さまのクリエイティビティ活性の一助になれば幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
パワープレイス株式会社
エンジニアリングセンター 伊藤 圭佑
1958年に日経映画社として創立し、1984年に日経映像に商号を変更。テレビ東京の日経スペシャル「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」「ワールドビジネスサテライト」「新美の巨人たち」、NHK「日曜美術館」「にっぽん百低山」など、経済、美術、情報、医療と幅広いジャンルの人気番組の制作に携わるとともに、企業向けのPRおよび研修用映像の制作、企業イベントなどの配信業務などでも高い評価を得られています。ミッションは「映像の力で社会に貢献、人々に夢と感動を届ける」。オフィス改革でその意気込みがさらに高まっています。
株式会社日経映像 企業サイト※記事内容や役職等は取材当時のものです。(2025年1月取材)