第17回:「プレゼン」が上手くなりたいと思うあなたへ 【澤円の連載コラム】

【澤円の連載コラム】働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~
プレゼンが苦手 事前準備のコツ

いま、働き方が再定義されようとしています。テレワークから出社回帰、働く場も多様化し人とのかかわり方も変わっていくなか、自分らしく、よりハッピーに働くにはどうしたら良いのでしょうか?連載コラム「働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~」では、株式会社圓窓 代表取締役 澤円(さわ まどか)さんと一緒に「はたらく」について考えていきます。

こんにちは、澤です。

ボクの今の仕事において、プレゼンテーション(=プレゼン)というのは、一つの大きな要素になっています。
おかげさまで、いろいろな場所での講演会の機会をいただき、年間で200~250回ほど
「皆さんがイメージする」プレゼンをしています。

ここであえて「皆さんがイメージする」と但し書きを入れたのには理由があります。
多くの方々は、プレゼンを「多くの人を前にして話すこと」だと思っておられるのではないでしょうか。
実際、プレゼンの講習をするときに「大勢の前で話すことがプレゼンだと思っている人は?」と問いかけると、大半の方が手を上げます。
もちろん、これが間違いだとは言いませんが、ボクの中におけるプレゼンの定義は「誰かに何かを伝えること」としています。
つまり、会議での発言も、マネージャーやメンバーとの1on1も、なんならコンビニの店員さんとのレジでのやり取りもプレゼンだと定義しています。
これは言葉の意味を定義したいわけではなくて、あくまでも心構えの話をしています。
この記事では、心構え=マインドセットの話をしたいと思います。

プレゼンが上手くなりたいという人は、本当にたくさんいらっしゃいます。
毎年、数多くのプレゼンの講義をさせてもらっています。
講義の冒頭に「プレゼンが好きな人は?」と問いかけた時、手が上がることはほとんどありません。
感覚値としては100人にひとりくらいの割合でしょうか。
そして、「苦手な人は?」と問いかけると、めちゃめちゃ多くの人が手を上げます。
この事実からして、プレゼンというのはそう簡単なことではなさそうですよね。

では、苦手だと思っている人に「なぜ苦手なんですか?」と問いかけると、意外と明確な答えを持っておらず「なんとなく苦手」と思っている人が多いようです。
あるいは、「緊張する」という言葉をあげる人もいます。
「苦手だから緊張する」と思うのでしょう。
これもなんとなく分かります。

ちなみに、世界中でプレゼンに関するアンケートが行われているようです。
特に、多くの人が「プレゼン」と認識している「大人数に向けて話す」タイプのプレゼンについて Gemini に訊いたところ、下記のようなレポートが紹介されました。

    1.【米国/世界】国立精神衛生研究所 (NIMH) の統計
    最も広く引用されるデータの一つです。
    データ: 全人口の約74%が「人前で話すことに対する不安(Glossophobia:広場恐怖症の一種)」を持っているとしています。
    内容: これは、死への恐怖やクモへの恐怖よりも上位に来ることが多く、社会的不安の中で最も一般的なものとされています。
    示唆: 「大半(約4人に3人)」が不安を感じているため、プレゼンが得意ではないと感じるのは生物学的にも「普通」の状態と言えます。

    2.【米国】チャップマン大学「アメリカ人の恐怖症調査」
    米国のチャップマン大学(Chapman University)が定期的に行っている有名な調査(Survey on American Fears)です。
    データ: 毎年の調査で「人前で話すこと(Public Speaking)」は常に上位にランクインします。
    詳細: 2010年代の調査では、約25%~30%のアメリカ人が「非常に恐れている」と回答しており、「多少の不安」を含めると過半数を超えます。
    ※アメリカ人はプレゼンが得意というイメージがありますが、実際には多くの人が「高所」や「虫」と同じレベルで恐怖を感じています。

    3.【日本】国内の意識調査
    日本国内に絞ると、さらに苦手意識を持つ割合が高くなる傾向があります。
    リクルートマネジメントソリューションズ等の調査: 新入社員や若手社員を対象とした意識調査では、「自分のコミュニケーション能力に自信がない」「プレゼンテーションが苦手」と答える割合が6割~8割に達することが多いです。
    一般的なアンケート: 民間の話し方教室やビジネス誌の調査でも、「人前で話すときに緊張する(あがり症)」と回答する人は概ね80%~95%にのぼります。

なんとなくアメリカ人なんて全国民プレゼン上手な印象ないですか?
そんなことはないと調査結果は雄弁に語ってくれていますね。
これらのレポートから察するに、人類は「人前で話すようにできていない」と言えるのではないでしょうか。
つまり、プレゼンというものは、人間の通常の営みではなく恐怖に直結する異常事態と言ってもいいわけです。

プレゼンが苦手ということに対して負い目や引け目を感じる必要は全くなくて、大多数の人にとって厄介なものであると思ったら、少しは気が楽になりませんか?
そして、「上手く話さなくてはならない」と思い詰めるのは、わざわざ自分に対して呪いをかけている状態。
ただでさえ、無謀なチャレンジをしようとしてるのに、わざわざ自分を追い込んでも百害あって一利なしですね。

まずは、「自分はプレゼンという名の“無謀な挑戦”をしている」と自覚を持ちましょう。
その上で、プレゼン準備をする。
冒頭にお伝えしたように、プレゼンは誰にとってもしんどいもの。
苦もなくできる人の方が圧倒的少数派です。
だからこそ、準備がものをいいます。
未開の土地に旅立つ冒険家の如く、とにかく準備をしましょう。

では、どんな準備をすればいいのか。
よくある罠が「情報過多」になってしまうことです。
「とにかく抜け漏れがないように徹底的に準備しなくちゃ」と思いすぎて、プレゼンの情報量が多くなりすぎてしまうパターンですね。
もちろん、プレゼン内容に関する情報を脳内もしくは手元のメモに残すことは大事です。
しかし、限られた時間で聴衆が持って帰れる情報量には限界があります。
それを念頭に「聴いた人たちが持ち帰って行動ができること」を念頭に準備をしましょう。

会社に戻ったら、直属のマネージャーにスムーズに報告できるか、とか。
帰り道に百貨店に立ち寄って、紹介した商品を手に取ってくれるか、とか。
会場を出た後の移動中に、スマホから案内した情報をSNSで拡散してくれるか、とか。

プレゼンは「終わった後のアクション」を起点に準備することが肝要です。
そして、情報は徹底的に磨きまくって絶対量を減らしつつ純度を高めること。
あれもこれもと欲張るのではなく、勇気を持って大胆に削ることが大事です。

ぜひ、次のプレゼンの際には、今回紹介したことを念頭において準備してください。
過去最高のプレゼンになることをお祈りしています。

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[2025.12.17公開]

澤 円(さわ まどか) 氏
著者澤 円(さわ まどか)氏
株式会社圓窓 代表取締役
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 専任教員(教授)
元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長を2020年8月まで務めた。DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやコンサルティングなどを行っている。複数の会社の顧問や大学教員、Voicyパーソナリティなどの肩書を持ち、「複業」のロールモデルとしても情報発信している。また、ファッションや美容、自動車などのインフルエンサーたちとも積極的に共創活動を行っている。

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