いま、働き方が再定義されようとしています。テレワークから出社回帰、働く場も多様化し人とのかかわり方も変わっていくなか、自分らしく、よりハッピーに働くにはどうしたら良いのでしょうか?連載コラム「働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~」では、株式会社圓窓 代表取締役 澤円(さわ まどか)さんと一緒に「はたらく」について考えていきます。
こんにちは、澤です。
前回は、プレゼンが人類にとっていかに「異常事態」か、という話をしました。
その異常事態を軽々と乗り越えるべく、今回は「準備」にフォーカスします。
プレゼンを成功させるためには、どんな準備をすればいいのでしょうか?
美しくまとまった資料?
洗練された話し方の習得?
最新のパソコン?
確かに、このような準備も一定の効果があります。
上記の三つの特徴は、話し手側だけで準備できるということです。
ただ、これらの準備というのは、成功確率を上げるための決定打にはならないというのが現実だと思っています。
では、何が決定打になるのか。
それを考えるヒントが、次に紹介する「デッサン思考」です。

突然ですが、デッサンってやったことありますか?
石膏製の白い胸像や果物などの静物を置いて、画用紙に鉛筆などで描くあれです。
美術の授業などでやったことあるよ、という人も多いのではないでしょうか。
ボクのかみさんは美術大学出身で、デッサンの名人でもあります。
かみさんが言う「デッサンで陥りがちな罠」というものがあります。
それは「手元を見すぎてしまう」ということなのです。
「そりゃ絵を描くんだから手元見るでしょ」っていう方もいらっしゃると思います。
全く見るな、という意味ではありません。
ただ、手元ばかり見ていると、目の前にあるものから目が離れた状態になり、結果的に「目の前のものとは全く異なるもの」を画用紙に描くことになりかねないというわけです。
また、世の中には輪郭というものはありません。
漫画などでは輪郭を線によって描きますが、実際の世界ではあらゆる物体の周囲には輪郭は存在せず、あるのは光と影だけなんですよね。
それをしっかりと観察して描くことがデッサンには大事である、とかみさんは言うわけです。
これをビジネスに落とし込んだのが「デッサン思考」です。
つまり、「自分の手元ばかりを見るのではなく、視点を上げて対象を観察すること」が大事なのです。
ちなみにデッサン思考で言う「手元」とは資料や話し方のこと。
そして「対象」とは、聴衆やプレゼンの目的を指しています。
と、説明が長くなりましたが、プレゼンの準備にこの「デッサン思考」を持ち込むとどうなるでしょうか?
まずしっかり準備するためには、以下の三つを順番に意識してみましょう
1.聴衆を定義する
2.テーマを定める
3.データで裏づける
上記のことを別の表現にすると、以下のようになります。
1.誰の課題かを見極める
2.何を持ち帰ってほしいかを決める
3.なぜそう言えるのかを示す
これらのことを準備段階で意識しないと、手元ばかり見て描いたデッサンの絵になってしまいます。
時々見かけるのが「2. テーマを定める」だけやって、聴衆の定義がなされてないパターンです。
誰に話すのかの意識を先にしないと、内容がよくても全く伝わらないという悲劇につながりかねません。
大谷翔平選手の素晴らしさを、野球の知識ゼロの人に熱く説いても響かないのは、容易に想像できます。
事前に「どんな人が聞くのか」「その人はテーマとどのような関係性があるのか」「その人がどのような状態になれば成功なのか」をイメージしておくことは、プレゼンの成功には欠かせません。
特に、ビジネスでのプレゼンは、何かを提案したり、何かを報告したりすることがほとんどではないでしょうか。
相手のことを考えることなく何かを提案しても「そんなものいらないよ」で終わってしまうことでしょう。
また、相手の都合を考えずに何かを報告しても「それ、私に言ってどうするの?」と困惑させてしまうかもしれません。
準備段階で必要なことは、まずはリサーチ。
どんな人が、どんな期待値で来るのか。
適切な人に、適切な情報を持って帰ってもらう。
この準備無くして、プレゼンの成功はあり得ません。
ここまでが、前述の「1. 聴衆を定義する」と「2. テーマを定める」に関するお話です。
そして、準備段階でプレゼンに対する自信を深めてくれるのは、「信頼できるデータ」の存在です。
これは、前述の「3. データで裏付ける=なぜそう言えるのかを示す」の条件を満たすためのアクションです。
もし自社のサービスの優位性を語るなら
「弊社における顧客満足度は、昨年と比べ5ポイントアップしています」
こんなデータは、持っていて当然のレベルですね。
なにしろ自社にデータがあるんだから、活用しない手はありませんね。

さらには
「このような調査機関が、このようなデータを提供しています」
こんな風に、出典元が明らかな外部データを使うのも効果的です。
そんな時に便利なサービスがPerplexity(https://www.perplexity.ai/)です。
このサービスは、引用元も併せて示してくれる、優れもののAI検索エンジンです。
サイバーセキュリティに関するデータをプレゼンに使うとします。
「サイバー犯罪のROIを教えてください」と、Perplexityに聞いてみました。
すると、下記のような回答が出ました。(一部抜粋しています)
Trustwaveの調査では、マルウェアを使った1か月の攻撃キャンペーンに約5,900ドル投資して約84,100ドルの収益が得られ、ROIは約1,425%と報告されています。
引用元として、こちらのリンクも教えてくれました。
https://www.cyberdefensemagazine.com/cybercrime-is-paying-with-1425-return-on-investment/
Trustwave というのは、アメリカ・シカゴに本社を置くサイバーセキュリティ企業で、マネージドセキュリティサービス(MSS)や脅威検知・対応サービス(MDR)を提供している企業であり、このようなデータをまとめることは本業です。
いい加減な算出が許されない企業からの出典ということで、十分に説得力のあるデータと言えるのではないでしょうか。
このように、準備段階で「出典元の明らかなデータ」をいくつか用意しておくと、プレゼンに説得力をプラスすることができます。
データとは別の手法として「偉人たちの名言」を引用するのもおすすめです。
DE&I(ダイバーシティ・イクイティ&インクルージョン)に関するプレゼンをするとしましょう。
その時、「人にはアンコンシャスバイアスがある」という話をしたいとします。
このままだと、ただの一般論で終わってしまいがちですが、
「アインシュタインによれば、『常識とは、18歳までに身につけた偏見の集まり(コレクション)のことである。』だそうです。」
こんな風に表現すると、ちょっとしたスパイスとして機能しますよね。
ちなみにこのフレーズの見つけ方は、ChatGPTに
「人間には偏見がある、ということを示す偉人の名言を教えてください」
と聞くだけです。
生成AIも使いこなしながら、より深みのあるプレゼンテーションの準備をしてくださいね。

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[2026.1.30公開]