第9回:チームメンバーの心得 【澤円の連載コラム】

【澤円の連載コラム】働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~
仕事のクオリティ いいキャリアのつくり方

いま、働き方が再定義されようとしています。テレワークから出社回帰、働く場も多様化し人とのかかわり方も変わっていくなか、自分らしく、よりハッピーに働くにはどうしたら良いのでしょうか?連載コラム「働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~」では、株式会社圓窓 代表取締役 澤円(さわ まどか)さんと一緒に「はたらく」について考えていきます。

こんにちは、澤です。

前回までは、マネージャーの仕事についてお伝えしました。
今回は、メンバーとしての仕事に対する心構えについて考えてみましょう。

会社や自治体、学校や病院など、勤務先と呼ばれるものは様々ありますが、日本における就職活動を通じて組織に入る場合は、マネージャーではなくメンバーの立場から参加することがほとんどでしょう。
メンバーからスタートして、そこでコツコツ実績を上げていくと、一定時間の経過とともに「管理職」と呼ばれるマネジメント職に転換・・・というのが一般的な常識でした。
最近では、キャリアの多様性が浸透してきたのと、年功序列・終身雇用からの転換が徐々に進んでいることもあり、マネジメント職は「選ぶもの」と考える人も増えてきました。
そのため、メンバーとして長くキャリアを積むという選択肢が増えてきました。
今回は、「メンバーとして働く」という視点で考えていきましょう。

終身雇用・年功序列が完全に機能していた時代は、メンバーは「マネージャーから言われたことをやる」という発想で十分だったことでしょう。
年月の経過とともに、自動的に昇給・昇格するのであれば、最も大事なことは「ミスをしないこと」になりがちでした。
というのも、「ミスをする=昇給・昇格が遅れる」という事態に直結しかねないからです。

しかし、今は年功序列や終身雇用がどんどん揺らいできている時代。
そして、いわゆる「上が詰まっている」状態でもあるので、放っておいてもキャリアアップするということがない、という会社も多いのではないでしょうか。
そうなってくると、メンバーとして働くときのマインドセットもアップデートしていく必要があります。

ボクは、経営における視点の違いを「三層構造」で説明しています。

経営者=社会貢献
マネージャー=仕組化・運用
メンバー=タスク実行

このような形です。
経営者は、「会社という器を使っていかにして社会に貢献するか」という視点が不可欠であり、自社だけではなくマーケット全体を見渡す俯瞰的な視点が必要です。
マネージャーは、自分のチームが担当する領域を理解して適切なリソース配分を行い、他のチームとの協業体制を仕組化し、うまく回るように運用に気を配る視点が求められます。
メンバーは、最も解像度の高い視点を持ち、自分のタスクにしっかりとフォーカスする視点が不可欠です。
自分に求められている役割を理解して仕事を進めるというのは、いわゆる「ジョブ型雇用」においては必須の項目ですが、日本のような「メンバーシップ型雇用」においても、この視点を持つことは仕事のクオリティを上げていくためには必須条件と言えるでしょう。

では、自分の目の前の仕事「だけ」をやればいいのかというと、これはキャリアにおいては「必要条件」であって「十分条件」にはなりません。
自分の仕事が組織の中でどのような位置付けなのかについて興味を持つことは、結果的にいいキャリアを作っていく上で大きな意味があります。
目の前の仕事に集中することを第一条件にしながらも、「自分の仕事がどこにつながっているのか」を意識することで、仕事内容に一貫性を持たせることができます。
仕事のクオリティが低くなる一つの要因は、「何のためにやっているかわからない」という状態で仕事と向き合うことです。
何のためにやっているのかわからない状態で仕事をすると、何かしらの問題や障害にぶつかったときに「どうすれば改善されるのか」の手がかりを得ることができず、必ずマネージャーの指示を待ってしまう状態になります。
「それがメンバーの仕事では?」とお思いになるかもしれませんが、いいキャリアを作っていくためには、「もう一歩先」を見る視点を持つことが必要です。

まずお勧めなのは、自分の会社のビジョンやミッションを理解することです。
大抵の会社は、何らかのビジョンやミッションが掲げられているはずです。
「あんなのはただの綺麗事であって自分には関係ない」と思う人もいるかもしれませんね。
しかしながら、いわゆる企業価値の高い企業・・・マグニフィセントセブンに代表されるようなアメリカビッグテック企業などは、社員一人一人にミッションやビジョンをしっかり浸透させることを怠りません。
そうすることで、会社全体の方向性がずれないようにするためです。

そのようなマインドをメンバーが持つことは、自分の仕事のクオリティをアップさせるためにはめちゃくちゃ効果的です。
「何のために自分の会社は存在しているのか」を理解し、それに納得して仕事をすることは、やりがいを感じながら時間を過ごすためにも効果的です。
「そもそもミッション・ビジョンに同意できないんですけど・・・」という方もいるかもしれませんね。
そういう方には、四つ選択肢があります。

  • ライスワーク(=生活のためだけに働く)として割り切ってタスクに集中する
  • 自分からミッション・ビジョンを経営層に提案する
  • 納得できるミッション・ビジョンを掲げる企業に転職する
  • 自分でミッション・ビジョンを掲げて起業する

ちなみに、一番残念なのは「文句ばっかり言いながら同じ場所に居続ける」です。
人生の多くの時間を使う「働く」を充実させるためにも、前向きな気持ちになれる選択肢をとっていきましょう。

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[2025.4.14公開]

澤 円(さわ まどか) 氏
著者澤 円(さわ まどか)氏
株式会社圓窓 代表取締役
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 専任教員(教授)
元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長を2020年8月まで務めた。DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやコンサルティングなどを行っている。複数の会社の顧問や大学教員、Voicyパーソナリティなどの肩書を持ち、「複業」のロールモデルとしても情報発信している。また、ファッションや美容、自動車などのインフルエンサーたちとも積極的に共創活動を行っている。
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