第13回:ワークライフバランスに物申す 【澤円の連載コラム】

【澤円の連載コラム】働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~
幸せに働けているか ワークライフハーモニー

いま、働き方が再定義されようとしています。テレワークから出社回帰、働く場も多様化し人とのかかわり方も変わっていくなか、自分らしく、よりハッピーに働くにはどうしたら良いのでしょうか?連載コラム「働き方の再定義 ~なりたい自分になるためのヒント~」では、株式会社圓窓 代表取締役 澤円(さわ まどか)さんと一緒に「はたらく」について考えていきます。

こんにちは、澤です。

「ワークライフバランス」って言葉、誰しも聞いたことはありますよね。
仕事とプライベートのバランスをうまくとりつつ、人生を豊かに過ごしましょう、っていうのが基本コンセプトってことになります。
日本人は長時間労働が常態化していてとにかく休むのが下手、というのが定説になってきていますよね。
「24時間戦えますか」なんていう、正気とは思えないキャッチフレーズが成立してしまうお国柄ですから、バランスが極めて悪いと感じる人も多くいることでしょう。
とはいえ、日本は祝日が世界でも割と多く、五月の大型連休やお盆休み、年末年始休暇など、一斉に仕事をしなくなる時期がそれなりに用意されている国ではあります。
また、労働基準法で有休を用意することは法律で定められており、「理論上はしっかり休暇がとれる」はずです。
でも、なぜか「ワークライフバランスが取れていない」と感じる人は多いようです。
休みが多く用意されているからと言って、ワークライフバランスが取れるものではないということが垣間見えます。
また、「幸せに働けているか」という問いについても、ポジティブな回答は必ずしも多くないようです。
出展)世界の労働者幸福度ランキング:働きがいを感じている国は?
働くことで幸せを感じることもできず、ワークとライフのバランスもとれていないとしたら、ヤバいですよね(苦笑)

なんでこうなっちゃうんでしょう?
あくまでボクの観察(=客観視を心がけても、ある程度主観的にはなる)によると、これは日本的採用システムにも原因のいったんはあるな、という印象です。
日本の就職って、入学式をもう一回やるイメージありませんか?
大企業の入社式には、みんな同じ時間に集まって同じような格好をして同じ話を聞いて・・・という王道パターンがいまだに続いていますよね。
就職活動も、入試シーズンのように「みんな一緒に」な雰囲気満載。
そんなプロセスを経て、入社をして、5~10年目までは「若手」と言われて上下関係の下の方に置かれる。
指示に従うことは絶対と教育され、「失敗を恐れずに挑戦せよ!」なんて入社式で社長が話していたにもかかわらず、日常の業務では些細なミスでもお説教を聞かされる。
「なんか違うよな~」って思っても、いつの間にやら慣れてきて、ふと気が付いたら入社して10年以上が経過・・・
こういうパターン、結構ありますよね。
厚生労働省のレポートによると、日本は大企業勤務者が30%程度。
中小企業のうち、親会社が大企業である割合が25%程度。
そうなると、過半数は何らかの形で大企業のカルチャーの影響を受けやすく、入学式スタイルの入社が恒例になっているパターンが定着していることが予想できます。
大企業が一概に全部だめ、と雑に括るつもりはないものの、どうしても「同じように行動する」というカルチャーになりやすいことは容易に想像できます。
では、中小企業なら自由が利くかと言えば、ワンマン社長の機嫌であらゆる決定がなされるパターンも少なからず存在しているようです。

さて、ここで何が言いたいかというと「自分の頭で考えるチカラ」が衰えやすい環境に身を置いている日本人の割合は結構高そうだよねってことです。
自分の頭で考えないと、脳みそはすぐに劣化します。
そうすると、与えられた環境を(文句を言いながらも)受け入れちゃうわけです。
また、マインドセットとして気を付けたいのが「許可をとる」という発想です。
なんとなく、日本は許可文化的なものがあり、休みをとるのも必ず「許しを得てから」となりがちです。
本来、有休休暇は従業員の権利として労働基準法第39条に記載されてします。
また、「理由が正当でないと与えない」などの対応は違法とされております。
なので、堂々と取ればよいのです。
でも、なんとなくこれができないと感じている人は多いですよね。
大抵の場合、人間関係に影響を与えるのがいやで・・・みたいな理由だと思います。
でも、自分の人生を犠牲にしてまでやる仕事って、そんなにないはずです。
はっきり言って、会社の人間関係は人生においてそれほど重要ではないというのがボクの考えです。
会社や組織の上下関係なんてのは、人生においては誤差です。
もちろん、どこかに属していれば、ある程度のルールに従うことは重要です。
とはいえ、法律で保障されているはずの権利まで侵害される理由にはならないのです。
(先日対談した退職代行会社「モームリ」の谷本社長と対談したとき、「うちは有給取得を認めてません」と言い切る経営者がいたとか・・・おそろしいですね)

ワークライフバランスを取るというのは「会社の都合を優先させて自分の時間を犠牲にすること」ではありません。
自分の人生を最優先事項に据えて、ワークとライフをブレンドしていく考え方です。
コロナ禍において、ワークがどんどん家に入ってきました。
ある意味、ライフを侵食したといってもいいでしょう。
でも、多くの人はそれを受け入れ、かつ慣れた方も少なくないでしょう。

ここで、一つのキーワードが浮かび上がってきます。
しっかり分けるのではなく、緩やかに混ざり合っていく「ワークライフハーモニー」という考え方です。
このキーワードは、ボクの友人である越川慎司さんもおっしゃっているし、先日対談したAmazonの社員の方もおっしゃっていました。
仕事もプライベートもふんわりと混ざり合い、相互にいい反応を起こして人生を豊かにする。
これがワークライフハーモニーのありようだと思います。
バランスを崩さないように必死になるのではなく、心地よく混ぜる。
そんな風に働きながら生きたいものですね。

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[2025.8.1公開]

澤 円(さわ まどか) 氏
著者澤 円(さわ まどか)氏
株式会社圓窓 代表取締役
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 専任教員(教授)
元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長を2020年8月まで務めた。DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやコンサルティングなどを行っている。複数の会社の顧問や大学教員、Voicyパーソナリティなどの肩書を持ち、「複業」のロールモデルとしても情報発信している。また、ファッションや美容、自動車などのインフルエンサーたちとも積極的に共創活動を行っている。

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