今年もよろしくお願いします。昨年は季節ごとのテーマでエッセイを書かせていただきましたが、今年は少しおもむきを変えて、ワークスタイル変革の実務的なノウハウや留意点についてご紹介したいと思います。あくまで私たちがコンサルティングの現場で培った経験に基づくものですので、学術的な裏付けはありませんし、すべてのケースに充てはまる普遍的なものでもないと思いますが、参考にしていただけると嬉しいです。
第1回はワークショップについて考えてみたいと思います。最近、いろいろな場面で、参加者が主体的にイシューやアイデアを出し合うワークショップが活用されています。ワークスタイル変革においても、「自分たちはどんな課題を持っているのか」「どのような働き方を目指すのか」といったテーマでワークショップを行うケースは多いと思います。
私たちコンサルタントがお手伝いするプロジェクトでは、クライアントとワークショップの目的や目標を明らかにし、プログラムやファシリテーションの方法などを設計します。コンサルタントをアサインしなくても、企業の中にファシリテーションスキルを持つ人材がいる場合は、社内で行うことも可能です。その時に気を付けたほうが良いポイントをいくつかご紹介したいと思います。
最初に注意したいことは、表面的な議論に終わらないようにすることです。社員同士のワークショップの場合、お互い自社や部門の状況を良く知っているだけに、「これは言っても無駄だ」とか「我が社ではしょうがない」といった暗黙の制約が働いてしまうことがあります。特にファシリテータも社員の場合は、その制約を外すことに苦労する場合が多いようです。ワークショップで良い成果を出すためには、既成概念を捨てて考える、というモードが重要です。社員同士の場合は、ここが甘くなる傾向があるので、気を付けたほうが良いでしょう。
次に、プロセスのコーディネートです。ワークショップは4名~8名程度のグループに分かれてディスカッションすることが多いですが、どうしても積極的に意見を出す人と控え目な人が混在することになります。また、上司と部下、先輩と後輩が一緒になることもあります。そんな時に、控え目な人や部下・後輩といった立場の人が、遠慮せずにどんどん自分の意見を言えるような雰囲気を作ることもファシリテータの大切な役割です。声が大きい人に引っ張られた議論は、ワークショップの成果としてはあまり望ましいものではありません。上手く流れをコーディネートしてください。
最後に、最も重要なポイントです。ワークショップで抽出したイシューやアイデアを、その後どのように扱うかをしっかり計画したうえで、ワークショップを開催することです。ワークショップを開催して意見が沢山出たのだけど、それをどうして良いか解らず困っている、といった相談を受けることがあります。せっかく出した意見がどのように扱われるのかが曖昧な状況だと、参加者としては不満に感じるでしょう。場合によっては「ガス抜き」と勘違いされてしまうかもしれません。ワークショップは事前の設計と準備がとても重要です。
ワークショップは、アイデアの抽出や合意形成の手段として、とても有効な手法です。やるからにはしっかり成果を出したい、という場合は、ぜひ専門家に相談してください。