Change Working コラム

ポインセチア

2015年12月10日

ポインセチア

今年は季節に合わせたテーマで本エッセイを書かせていただきましたが、あっという間にポインセチアが似合う季節になってしまいました。
最近はこの時期にポインセチアが咲き乱れるオフィスも珍しくなくなってきましたが、私が北米の企業で働いた30年近く前は日本のオフィスでポインセチアを見た経験がなく、赴任先で12月になるといろんなオフィスが一斉に真っ赤に染まる光景を見て、とても感銘を受けた記憶があります。

「感銘」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、その光景は当時の私にとってはいろいろな意味で衝撃的でした。各社のオフィスがポインセチアとクリスマス・オーナメントで華やかさを競い、社員たちは皆うれしげで、そんなオフィスで働いていることをちょっと自慢するような雰囲気に溢れていました。あとで振り返ると、その背景には様々な属性のひとが集い厳しく成果を求められる環境下で、社員のモチベーションを高め社員同士の交流や職場の雰囲気を活性化するための取り組みのひとつという側面も見えてくるのですが、初めて見たときは理由を抜きにしてその光景に魅了された記憶があります。

私が知る当時の日本企業は、「真面目」「愚直」「誠実」といった言葉がそのまま当てはまる組織が多く、働き方やオフィスも基本的にはそのようなスタイルでした。もちろん、真面目であること、誠実であることは、企業や組織にとって大切な要素であり、30年経った今でもこれらは多くの日本企業の強みだと思います。しかし、「真面目」であることが「強み」であると同時に、硬直化や多様な視点の欠落といった「弱さ」につながるのではないかと漠然と考えていた当時の私は、この真っ赤にポインセチアが咲き乱れる光景に、何か過大な期待を感じてしまったのかもしれません。

30年後の現在、冒頭に書いたように日本でもポインセチアを置いて季節感を演出するオフィスは珍しくなくなってきました。もちろんポインセチアだけではなく、気分転換やリフレッシュのためのしかけや季節感を感じさせるしつらえに工夫している事例も数多く見られます。更に、現状維持型の思考に陥らないように、常に社員に刺激を与え続けるようなしかけやしくみを持つ企業も増えてきました。多くの日本企業が、「真面目」「誠実」といった従来からの強みを活かしながら、次なるステップを目指しているということなのでしょう。

恐らくその時に求められる「柔軟な発想」「多様な視点」「オープンなマインド」といった要素は、ポインセチアを置いたからと言って簡単に実現できるようなものでは無いことは、言うまでもありません。しかし、非日常の提供、感性の刺激、緩急のバランス、不要なストレッサーの排除、遊び心の付加、といった従来あまりアプローチされてこなかった視点の中に、何かヒントが潜んでいるようにも思えます。まずは、できるところからトライアルを重ねていくことが必要ではないでしょうか。

2015年のコラムは本編で終了します。来年もどうぞよろしくお願いします。
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