Change Working コラム

紅葉の季節

2015年11月04日

紅葉の季節

前回のコラムで社内運動会を過去の話として引用しましたが、先日テレビのニュースでコミュニケーションを活性化するために社内運動会を復活させたという企業が紹介されていました。過去のもの的な決めつけをしてしまった不明を恥じる次第です。その報道映像をみて感じたのは、おそらくプロフェショナルの方と思われる華やかな会場アナウンスといい、国際色豊かな参加している社員の方々といい、高度成長期の社内運動会とは一味違う「平成の社内運動会」だなあということと、一方、屈託なく笑顔で走り回る社員の表情は昭和も平成も変わらないということでした。やはり運動会侮れ無し、のようです。

さて、週末の運動会の歓声もいつの間にか聞こえなくなり、日に日に朝夕の寒さを感じる季節になりました。出張時にふと車窓を見ると山の木々が見事に色づいていて、思わず見入ってしまうこともあります。春の桜の時期同様、日本が南北に長い国土であることにあらためて気づかされる季節です。紅葉した木々を見ていつも思うのは、それまでは多少の差はあれ皆一様に緑の色に染まっていた木々が、ある瞬間一斉に様々な彩りに変わってしまうという「変わり身」の凄さです。まるで隠し持っていた本当の姿を一気に開陳したようで、自然の奥深さを感じます。

人間に当てはめると、ドラマなどで危機に陥った時に、登場人物がそれぞれ普段の顔とは全く違う能力を発揮し、得意な役割を分担しながら皆で危機を乗り越えていくシーンのようなものでしょうか。その時、観客である私は、市井の平凡な市民たちが隠し持っていた能力を露わにし、事態を解決していく姿にカタルシスを感じる訳です。

そこまでドラマチックではなくとも、会社の中でもちょっと大変な状況になった時に、それぞれが普段見せない得意分野を発揮して協力して解決に導くといったことがあると思います。コンサルタントとしていろいろな企業でお話しを伺っていると、「我が社は危機が発生した時は凄いんですよ」といった話を聞くことが結構あります。おそらく、危機というトリガーが社員を一気に「紅葉」させるのでしょう。危機はあっては困るものですが、おそらくその時は見ものだと思います。普段おとなしくて目立たない社員が「私に任せてください」といった感じでテキパキと対応を始める。普段はお調子者のチャラ男君が真剣にトラブルに取り組み、悪戦苦闘しながら解決していく。そんなドラマがあちこちで一斉に動き出す姿が想像されます。

ただ、もし危機の時にこんな凄い隠し持った力が発揮できるなら、あまり出し惜しみしないで普段の時にも披露すると良いのにな、と感じないこともありません。散る前に一斉に紅葉し、あとは潔く散っていく山の木々とは違い、日常的に色とりどりの個性を発揮している常に華やかな組織、そんな一年中紅葉しているような組織が実現できると、これはまた楽しいと思います。これこそ本当のダイバーシティかも知れないですね。


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