梅雨も終盤を迎え、そろそろ台風が気になる季節です。台風の影響で通勤ができなかったり、出張先で身動きが取れなくなったりした経験を持つ人も多いと思います。2011年3月の東日本大震災の後、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)がずいぶん話題になりました。そのなかで「働き方」に関わるものとして、災害時に出社せずにテレワークで業務を遂行するという対応策が注目されていたと思います。
実際、東日本大震災の時も、いくつかのテレワーク先進企業では、速やかに在宅勤務へシフトし業務を遂行したということです。また、BCPの観点から、在宅型テレワークを導入し普段より慣れることにより、いざという時に多くの社員が在宅でも仕事ができるようにしようという取り組みが検討されたという話もよく聞きました。では、この4年間で国内の在宅型テレワークはずいぶんと普及したのでしょうか?総務省の情報通信白書によると、雇用型在宅テレワーカーは2011年の360万人から2012年の710万人に倍増していますが、2013年には570万人と減少しています。このデータだけで推論するのは危険ですが、東日本大震災で危機意識が高まりテレワークを試行してみたがうまくいかず定着しなかった、とも想像されます。
テレワークをうまく使えば、大震災のような大規模災害でなくても、台風で交通機関が乱れているときに、大雨の中ずぶぬれになって出社するのではなく、自宅でサクサクと仕事をして台風一過の青空のもと出社する、といった働き方も可能なはずです。実際、同白書では、男女問わず半数以上の就労者が必要な時にはテレワークを利用したいと回答しています。では、なぜ大雨の中、出社せざるを得ないのでしょうか。同白書のテレワークができない理由を見てみると、圧倒的に多いのは「テレワークに適した仕事がないから」となっています。次いで「情報漏えいが心配だから」「導入するメリットがよく解らないから」と続きます。
「テレワークに適した仕事がないから」という理由は、良く聞く話ですし、「そうかもしれないな…」と感じるひとも多いと思います。しかし、仕事は別にテレワークを導入する、しないに関わらず事業の推進や組織の運営の必要性から存在するもので、「テレワーク向けに整えられた仕事」なんてものは無いのが当然と考えるべきでしょう。今の仕事をどのように整理し、どのように運用するとテレワークができるのか、という視点で業務を再設計する必要がある訳です。そのような手続きを踏んでもテレワークにメリットを感じるか、そこまでのメリットは感じられないかは、議論が別れるところかもしれません。しかし、この「業務の再設計」は、テレワーク導入の準備ということだけではなく、仕事のムリ・ムダ・ムラを見直し、属人的なプロセスを改め、生産性を高めるためのアプローチともなり得る、と考えてみるとどうでしょう。「そんなことは必要ない」と言い切れるでしょうか。
テレワークは、それ自体もうまく使えば大きな効果が期待できますが、導入のプロセスで仕事の仕方を見直す良いきっかけになるというメリットも大きいと思います。いかがでしょう、これから迎える本格的な台風シーズン、もうずぶぬれになって出社するのはやめにしませんか。