第1回目のコラムでは、「働き方」という言葉が持つ意味や解釈について考えてみました。人や状況によってその定義は様々で、とても広い概念を含む言葉であるということをお話ししたと思います。とは言え、「働き方」変革やワークスタイル変革といった取り組みを考える際には、何らかの共通の理解(フレーム)が必要ですので、私たちは3つの切り口から「働き方」を捉えるということをよく行います。
ひとつは「Knowledge」(情報や知識の扱い方)。「オフィスは情報の工場」といった比喩に表せられるように、私たちオフィスワーカーの本質的役割は、情報をうまく取り扱い、世の役に立つ製品やサービスなどの「価値」へ変換していくことだと考えられます。そのプロセスでは、収集・加工・共有・活用といった情報の取り扱い方がとても重要な意味を持ちます。また情報を再活用可能な「知識」として編集したり、その知識を組織知として磨き上げたりといった、いわゆる知識創造もますます重要な課題となっています。「働き方」変革を考える際に、情報や知識の扱い方は不可欠なテーマのひとつだと考えられます。
ふたつ目が「Organization」(組織の風土)。組織風土と「働き方」には密接な関係があります。組織風土により「働き方」が規定される側面もありますし、「働き方」を変えることより組織風土を変革するというアプローチもあります。「働き方」変革の際に、組織の壁を低くしたい、自由闊達な雰囲気にしたい、もっとチャレンジする風土を作りたい、といった組織風土の変革を目的にすることも多いでしょう。コミュニケーションのスタイルを変える、日々の行動を見直す、会議のやり方を見直す、といった「働き方」に関わる行動様式を変えていくことで、結果として組織風土が大きく変わったというケースもあると思います。組織風土変革の手段としての「働き方」という捉え方も重要な視点のひとつだと思います。
三つ目が「Process & Communication」(プロセスとコミュニケーション)。プロセスとは、不要な業務をやめる、作業の手順を単純化する、より価値を生む仕事の比率を高める、といった仕事の仕方を見直すことです。コミュニケーションとは、会議を始めとする顔を合わせた同期型のコミュニケーションからメールやSNSなどのテキストコミュニケーションまで、あらゆるコミュニケーションの在り方を考えることです。先に、オフィスワーカーの本質的役割は情報をうまく取り扱い「価値」へ変換していくことと書きましたが、そのプロセスでコミュニケーションは欠くことができない役割を担います。仕事のプロセスやコミュニケーションを最適なものにすることも「働き方」変革の重要なテーマのひとつです。
以上、私たちが良く使う3つの切り口についてご紹介しました。網羅性は無くMECE(重複なく&漏れなく)でもありませんので、この切り口で「働き方」のすべてを表すことはできません。ただ、経験的に「働き方」に関わるイシューを考えやすい視点ですので、参考にしていただければうれしいです。
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