[セミナーレポート] 第130回 オフィス移転セミナー

新川本社(ユビキタス協創広場CANVAS)

4月19日、弊社新川本社(ユビキタス協創広場CANVAS)において、第130回オフィス移転セミナーを開催いたしました。
今回、ご登壇いただいたのは、三鬼商事株式会社・鯉川様、働き方改革実現会議の有識者議員も務められる白河様、パワープレイス株式会社・古野様。セミナー終了後は、弊社の新川第2オフィスを見学する「働き方変革」実践体感ツアーも実施し、参加者の皆様にご好評をいただきました。

【Program1】知っておきたい賃貸オフィス市場の動向 ~ダイナミックに変化を遂げてきたオフィスの展望~

三鬼商事株式会社 常務取締役 鯉川英一 様
三鬼商事株式会社
常務取締役 鯉川英一 様

まずは、気になる賃貸オフィス市場の動向について、不動産仲介大手の三鬼商事株式会社 常務取締役の鯉川英一様よりご講演をいただきました。
現在、オフィスビル不足、それに伴う賃料の上昇が問題視されています。市場におけるベストな平均空席率は5%前後と言われていますが、今年3月時点で東京都内の平均空室率はついに3%を切りました。自社ビルの売却あるいは建て替えによってテナントに移る企業や、郊外の事業所を中心部に移転するといった動きが全国的に多いことがその誘引。主要都市を中心に、今後、さらにビル不足が深刻になってくると予測されています。
近年、オフィスビルの移転を機に働き方改革に取り組む企業が増えていますが、働く場であるオフィスビルも働き方に合わせて常に進化しています。最近では、テナントが好みの執務環境をつくって生産性を上げていけるようにアジャストする設備が設置されている、会議室や備蓄用倉庫、屋上テラスといった共有部分が充実しているなど、働き方改革を応援する施設、装置が備わったビルも出てきています。移転の際には、単に坪単価で賃料を見るのでなく、共有部分の充実にも目を向けていただきたいと思います。

【Program2】働き方改革をいかにして経営戦略とするか

白河桃子 様
少子化ジャーナリスト / 作家 / 相模女子大学 客員教授 / 昭和女子大学 総合教育センター 客員教授 白河桃子 様

今回のスペシャルイベントには、働き方改革実現会議の有識者議員も務められるなど、多方面でご活躍されている少子化ジャーナリストの白河桃子様にご登壇いただきました。昨年夏に『御社の働き方改革、ここが間違ってます!~残業削減で伸びるすごい会社~』(PHP新書)を出版された白河様。徹底した現場取材から引き出した多数の事例をベースに、長年、女性のライフデザインに関わってきた独自の切り口で、働き方改革の本質に迫る講演は大好評。参加者様からの質問も数多く寄せられました。

働き方改革は、会社の経営課題に沿った目的の設定が重要

三位一体のワークスタイル変革

法改正としての働き方改革は、図のような2階建になっています。
なぜ、このように1階と2階を一緒にやるのかというと、本来ならすでに問題解決していなければいけなかった人権問題が無視できない状況になってきていることがひとつ。また、人口減少、少子化による人手不足で多様な人材が生き生きと働ける会社にする必要にも迫られています。さらに、海外からデジタルイノベーションが入ってきて、古い日本の働き方ではもはや対応できないという問題も起きているからです。
働き方改革というと、残業削減、生産性向上、マネジメント改革、業務効率改善、IT&AI活用、休み方改革など、さまざまなキーワードが出てきます。しかし働き方改革は、このどれかをすればいいというものでは決してありません。まずは、狭義にとらわれず、会社の経営課題に沿った目的を設定することが重要です。

経営戦略としての働き方改革でやるべきこと

企業は、中小企業からグローバルな大企業、また長時間労働のDNAを持った「昭和レガシー」企業から外資やベンチャーまで、規模も職種も体制もさまざまです。働き方改革でやるべきことは「リーダーシップ」「インフラ整備」「マインドセット」の3つ。
重要なのは、働き方改革自体は目的ではないということをしっかり念頭において、トップが本気で取り組むこと。労働力不足やイノベーション不足、生産性の向上や女性活用&ダイバーシティの実現など、課題は企業によって異なります。現状、何が問題か、それをどう変えていきたいか、何のためにやるのかを明確にすることが働き方改革のポイントです。

日本企業のマインドセットはアクションチェンジが牽引する

働き方改革は個人にとっても自分の大事な人生の時間をどう使うか、どんな働き方、生き方をするのかを考えるきっかけになります。そこでマインドセットをすることで、会社一丸となった改革になります。
よく、マインドセットとアクションチェンジはどっちが先か? と聞かれますが、日本の場合は横並び意識が強いので、例えば「何時に帰ろう」というように、ある程度の形を決めることが重要です。マインドが変わるには、45歳以上の社員が多い企業は1年半から2年ぐらい、40歳以下の社員が多いところでも1年はかかります。その間、仕組み、制度、評価などの改革で支えるとともに、進捗度の見える化、トップからの発信を怠らずに伴走することが不可欠です。
オフィスの移転やリニューアルによって、執務室のレイアウトや会議室の仕様を変えることをアクション、つまり働き方を変えるきっかけとしている企業も多くあります。

心理的な安全性が担保されている職場が高い成果を生む

会議の様子を思い浮かべてください。ずっと黙っている人はいませんか? 若手や女性の発言はありますか?
  いくら多様な人材を登用しても、その人たちが自由に発言できる風土が組織になければ、成果につなげることはできません。多様性がイノベーションの価値を高めるということは研究成果でも明らかになっていますが、そのためにはみんなが安心して発言できる心理的な安全が不可欠です。
関係性の質が高いと思考の質が上がり、行動の質が上がり、結果の質が上がるという成功の好循環が起きると言われています。対立、押し付け、命令があるギスギスした職場では心理的な安全性がないので、余計なことをしたら叱られると思考が受け身になって縮まり、自主的な行動を取ろうという人は出てきません。結果、成果が上がらず、さらにギスギスするという負のサイクルに陥ります。
そんな職場でも働き方改革の実践で、ワクワク感のある正のサイクルが回る職場に変えていくことは可能です。長時間労働是正はチームの協力が不可欠。労働時間から手をつけることでチームの関係性があがる。質のいい関係性とは、互いを尊重し合う状態。これは、昨今話題のハラスメント対策としても効果的です。

女性活躍から、男女ともの両立支援の時代へ

働き方改革の一環でダイバーシティを進めるにあたっては、これまで女性のみをターゲットに行っていた両立支援、活躍支援を男性にも広めることが大切です。出産した女性が活躍したいと思ったときに説得しないといけないのはパパである男性の上司。女性が勤める会社だけの対応ではもはや限界になってきています。
最近では、45歳以上の男性が多い企業では、育児休業を取った女性の数よりも、介護休業を取った男性の数が多くなっています。また若い世代では、社会に出てからも学びたいという意識を持った人材もいます。
男女や年齢に関わらず、ワークとライフの両方を応援すること、これから企業がアピールする指標のひとつになるでしょう。多様性と持続可能性をいかに担保するかというところから、なぜ働き方を変えるのか、何によってみんなが幸せになって企業の成長と連動するかを考えて、働き方改革に取り組んでいただきたいと思います。

【Program3】変革を促す「オフィスづくり」の進め方 ~「変革」という言葉だけが独り歩きしていませんか?~

パワープレイス株式会社 エンジニアリングセンター プロジェクトマネージャー 古野嘉一郎
パワープレイス株式会社
エンジニアリングセンター プロジェクトマネージャー 古野嘉一郎

プログラム3では、内田洋行グループでデザイン・設計を行っているパワープレイス株式会社 エンジニアリングセンターのプロジェクトマネージャー・古野嘉一郎が、変革を進める主体となる社員参加型のプロジェクト運営からさまざまなプロジェクト参画者との調整など、変革を促す「オフィスづくり」のプロセスを、実例を通じてご紹介しました。

職場を、その日最大のパフォーマンスを出せる場に……

近年のオフィスづくりにおいては、「働き方変革」を強く意識した提案が評価されるようになってきました。
ICTツールなどをオフィスで活用することで、労働時間の短縮や効率化を行い、さらにオフィスの中でイノベーションの創出、コミュニケーションの強化ができる環境をつくることが、今のオフィスづくりの動向としてあります。
スペースを有効利用して机を並べ、組織編成があれば人が机に合わせて移動するといったオフィスはすでに過去のもの。これからは、その時々のいろいろな仕事のモードに合わせたさまざまな働き方ができる場所を用意し、社員がオフィスに来てその日最大のパフォーマンスを発揮できる、場所を選んで働くという使い方が可能なオフィスが求められています。

「変革を促すオフィスづくり」は「オフィスの改善」とは異なる

現状のオフィスの働き方について議論をしても、しょせんオフィスの改善にしか繋がりません。必要なのは、将来「ありたい姿」をきっちり議論すること。ありたい姿を考える際、そもそもの会社としての方向性、トップの考え、あるべき姿をきっちり認識した上で、その方向に向かっていくときに、どう変わりたいか、どうありたいかを議論していく作業が重要です。そして、それを支える環境が何を導き出すのかが、変革を促すオフィスづくりのポイントになります。

変革を促すオフィスづくりのポイントはプログラミング

働き方変革は、経営課題を解決する取り組みのひとつで、その実践の場となるオフィスはそれぞれの企業様に沿ったものである必要があります。
パワープレイス株式会社がオフィスプロジェクトに関わる中で、最も重要視しているのがプログラミング(調査/分析、基本計画)です。この段階で、さまざまな角度からより多くの正確な情報をインプットすることがポイントとなります。
そのために、パワープレイス株式会社では、トップインタビュー、社員の方々へのアンケート調査を実施。さらに社員参加型のワークショップを複数回行い、とことん議論する機会をつくります。より具体的な施策を導くために、ピクチャーカードを使用、またワークストーリーをつくっていただくなど発見や共感を深める取り組みも行なっています。そうして出てきたアイデアを整理して、優先順位をつけた上で、その内容を設計に落とし込むことで、変革を促すオフィスが誕生するのです。よって、計画期間を十分に確保する必要があるため、通常のオフィスづくりよりも期間が長くかかることを考慮したスケジュールが必要となります。

プロジェクトの見える化で社員に変革への期待感を浸透

ワークショップを数回行っても、すべての社員にご参加いただくことが難しい場合が多々あります。そうした場合、プロジェクトの終盤になってから、「これでは働けない」といったアンチな意見が突然湧いてしまうことも。それを避けるためにも、プロジェクト通信という形でポイントごとにオフィス構想、レイアウト、イメージなどを通知し、全社員に期待感を持っていただくことが重要です。さらに、プロジェクトの狙いを理解していただくには、新オフィスのガイドブックや運用マニュアルの作成も効果があります。 また、パワープレイス株式会社では移転後にも社員の方々に向けたアンケートを実施して、満足度や意識の変化を調査、課題があれば修正策の提案、支援も行なっています。
変革を促すオフィスづくりは移転がゴールではなく、それからがスタート。そのためランニングコストや運用のしやすさ、拡張性をも考慮した提案を行わせていただいています。

実際にオフィスづくりをサポートさせていただいたお客様のプロジェクトを事例にしての説明はリアルで、多くの参加者様の興味を引く講演となりました。

「働き方変革」実践体感ツアー

セミナー講演のあとは、内田洋行が2012年から自社実践している「CHANGE WORKING」の現場をツアー形式でご案内しました。

内田洋行は今後も「働き方変革」など経営課題の解決を伴うオフィス移転をテーマとして、皆様のお役に立つセミナーを開催いたします。ぜひご参加ください。

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