2011/5/17
内田洋行知的生産性研究所の平山です。いきなり「休み」の話で恐縮ですが、「休暇」と「働く場」について考えてみたいと思います。
もう20年以上昔になりますが、縁在って1年間ほどカリフォルニアの設計事務所で働く機会がありました。50人ほどの規模の小さな事務所ですが、米国籍の企業で日本人は私一人という環境でしたので、とても刺激的な経験をすることができました。
お話したいことはいろいろありますが、驚いたことのひとつがバケーションを決めるミーティングです。ちょうど働き始めてオフィスに慣れてきた頃のことです。ある日、ボスに呼ばれ「今日はとても重要な会議があるから参加するように」との指示がありました。言われてみると、気のせいか、同僚が皆浮き足立った様子。いったい何事だろうと思って会議に参加すると、これがなんと来シーズンの休暇日程を決めるミーティングだったのです。
もちろん、プロジェクトは年中無休で動いていますから、数週間にわたる長期休暇は必然的に交代制となります。誰しも遊びに行くのに良いシーズンを取りたいですから、ロジックとポリティカルパワーを駆使した戦いが繰り広げられる訳です。私は出向社員ですので残念ながらオブザーバーでしたが、どんなプロジェクト・ミーティングより真剣な会議を興味深く見ることができました。
このような「戦い」を経て、仲間たちは代わる代わる長期休暇に消えていきます。感心したのは、休暇中、担当していた仕事がきちんと他のメンバーに引き継がれていることです。属人的な仕事の仕方に染まっていた私にとっては、これには本当に驚かされました。
それが可能な理由はいくつかありますが、ひとつはプロジェクトのワークプロセスと責任区分(タスク・レスポンシビリティ)が明確に決まっていたこと。もうひとつは、図面やドキュメント、スケジュール、コスト、打合せや意思決定の記録といった様々な管理対象をマネジネントするしくみと、それを支える道具立てが揃っていたことを印象深く覚えています。
今回の震災以降BCPやBCMが話題に上ることが多いですが、長期休暇だけではなく、非常時の業務の継続性という面でも、明確なワークプロセスやタスク・レスポンシビリティ、それを支える業務環境の整備という点は重要な要素かもしれません。